もくじ
第1回ペンギン会議ってナンだ? 2017-05-16-Tue
第2回中々ペンギンが出てこない、上田さんのお話  2017-05-16-Tue
第3回全部がペンギンにつながった 2017-05-16-Tue

場所を介して、何かを伝えることを、
生業にしたいと思っています。
30歳になる今年、仕事と暮す街を変えました。
ホットドックが大好きな社会人5年目です。
よろしくお願いします。

「ペンギン会議」</br>ができるまで。

「ペンギン会議」
ができるまで。

担当・かとう

皆さんは「ペンギン会議」ってご存知ですか?
年に一度開かれるその会議には、
全国から300人を超えるペンギンのスペシャリストが集まります。
研究者に写真家、コレクター、水族館の飼育員、果ては小学生までー。
2日に渡る会議では、多様な参加者たちが、
ペンギンに関連する様々な議題について発表し、語り合います。

出来てから30年近く経つというこの不思議な集まり。
そんな「ペンギン会議」の魅力や生い立ちを、
会議の創設メンバーである上田一生さんに伺いました。

聞き手の「わたし」は、かつて水族館で仕事をする中で、
上田さんと出会い、一緒に仕事をさせて頂いた間柄。
でも、インタビューの直前に水族館を辞めることになり・・。
「ペンギンの世界から離れることも伝える」決意を胸に、
後ろめたさを抱えながら、上田さんのもとを訪ねます。

そんな「わたし」に上田さんが教えてくれたのは、
会議の根底に流れているという『ペンギンの力』。

ペンギン好きも、ペンギン好きじゃない人にも読んでほしい。
熱くて、不思議な「ペンギン会議」読本。
3回に分けてお届けします。

プロフィール
上田一生さんのプロフィール

第1回 ペンギン会議ってナンだ?

上田先生、こんにちは。
今日はお忙しい中ありがとうございます。
上田
こちらこそ。わざわざお越し下さりありがとうございます。
そう、どうしちゃったんですか?
はい。電話でもお伝えさせて頂いたのですが、4月末で水族館を離れることに致しまして。ちょうど5年間働いたのですが、一度ペンギンとも関係のない世界に身を置こうと思っています。
上田
それは残念だなぁ(笑)。
ごめんなさい。先生とお話ししていた、いろいろな計画もまだ実現出来ていない中・・。
なので、今日はもちろんインタビューもお願いしたいのですが、
それ以上に、最後に少しゆっくりとお話させて頂きたくて・・。
上田先生と一緒にお仕事をさせて頂くようになって2年ほど経つのですが、二人で腰を据えてお話できるのは、実は初めてなんですよ。
上田
2年だけでしたっけ?会うたびに濃かったので・・。
もっと長い付き合いだと思い込んでいました(笑)。
たしかに毎回、真剣勝負のようなミーティングをしていたので、
あまり仕事以外のことを話す機会はなかったですね。
そうなんです。
本当は先生に聞きたいことがいろいろあったのですが、
なかなか仕事の場ではチャンスがなくて(笑)。
今日は、これまで気になっていたことを
いろいろ伺わせて頂きたいなと思っています。
上田
気になっていたこと・・一体、なんでしょうか?(笑)
まずは、先生が立ち上げられた「ペンギン会議」について、
改めて教えて欲しいんです。
私は仕事の一環で、去年はじめて出席させて頂いたのですが、会場全体の「ペンギンの飼育技術をあげていくんだっ!」という熱気にとにかく圧倒されたんですね(笑)。
どうやったら、こんなエネルギーに満ちた集まりが生まれるんだろう?と、不思議に思ったんです。普通の学会はもっと静かじゃないですか。
上田
ありがとうございます(笑)。そう言ってもらえると光栄です。
何から話しましょうか・・。
ペンギン会議は、最初に立ち上げた時はに80人くらいの小さな組織だったんです。それから30年ほどかけて、だんだんメンバーが増えていって。今では全国各地に820人を超える会員が存在しています。
最近では、この会員に動物園・水族館関係者を加えた1000通超の案内を毎回だしていて、実際の会議にも300人を超えるメンバーが集まるようになっています。
1000人を超えるペンギンネットワークが広がっているわけですね。
上田
はい。海外の同様の集まりだと、参加者のほとんどが研究家や保全活動家になるのですが、日本のペンギン会議では一般の人も多く参加しているのが特徴です。小学生や大学生、写真家からコレクターまで。幅広いペンギンのスペシャリストが一堂に会するんです。
私が参加したのは、動物園・水族館の飼育員が集まる「ペンギン飼育技術研究会」というセッションでした。
上田
全国大会は毎年二日に分けて開催しています。初日は、一般の人が集まる部で、二日目は動物園・水族館の人だけが集まるもの・・参加して頂いたセッションはこれですね。
二日目は名前の通りペンギンの飼育技術向上に向けた情報共有を主とする場で、ある程度のまとまりがあるのですが、初日の「一般の部」は・・本当に何でもありの「ごった煮」のような世界です(笑)
ごった煮(笑)。一体どんな発表が繰り広げられているのでしょうか。
上田
もちろん毎年異なりますが・・お約束のコーナーとしては、研究者による基調講演。これはペンギン研究の最新情報をお伝え出来るように、毎年異なる話し手に依頼しています。ちなみに来年のメインスピーカーは、第五十七次南極越冬隊に選抜された北大の女子大学院生。極地のペンギン研究について、最前線の話をしてもらいたいなと企んでいるんです!
極地のペンギン研究!とっても、気になります!
上田
他には、全世界に散らばる野生生息地、あるいは保全施設や動物園等の訪問報告や、国内に出来た新しいペンギン関連施設の報告なども毎年恒例です。
同じような感じで、ペンギンに関連するイベントや保全活動へのボランティア参加報告なんかも多いですねぇ。後は、小学生・中学生による自由研究の発表なんかも増えてきました(笑)。
小中学生まで!?本当に多様ですね。
上田
もちろん、誰でもいいわけではないですよ(笑)。
発表内容を精査した上で、発表者にはご両親含めて事前にお会いした上で選んでいます。他にはグッズ紹介などもよくありますね。とにかくサブカルのようなことまで振り幅をもちつつ、様々な発表が行われます。ペンギングッズのチャリティーオークションが行われる夜の懇親会も人気ですよ。
ディープですね・・。
上田
まだまだ発展途上です。「ペンギン会議」という名前で面白がってもらえたりすることはあるのですが、単なるマニア集団と思われてしまいがちで(笑)。
しっかりとペンギンの飼育技術の向上や科学的な話にも繋げたいんです。
科学的な話・・興味があります!
最近はどんなトレンドがあるのですか?
上田
バイオロギング(超小型のデジタル記録計を動物の体に取り付けて、その動物の行動を計測する手法)は面白い研究が多いですね。次回の会議でも最前線で活躍されている研究者を、スピーカーとして招きたいと思っています。
後は保全ですね。最近、800〜900のエンペラーペンギンが南極から忽然と姿を消したらしい・・ということが起きていて。もしかすると、その個体がアジアの施設に流れているかもしれないのです。そういうことも明らかにしていきたいのですが・・それは、ペンギン会議とは別途で会議体を開こうかなと思っています。
何やらぶっそうな話も飛び出しましたが、ペンギンの世界も日進月歩なんですね。
上田
ぜひまた参加して下さい。登録費は無料で、年会費もありませんし。全国大会も運営費として2000円〜3000円を頂くのみです。
あ、もちろん懇親会は別料金ですよ(笑)
映画1本分のお値段でペンギン漬けの時間を満喫出来る(笑)
上田
はい(笑)。今年度も12月か1月におそらく都内で開催する予定です。案内お送りしますね。

ーーー
つづきます。
(次は、上田さんが「ペンギンに辿り着くまでの半生」について語ります)

第2回 中々ペンギンが出てこない、上田さんのお話