クウェートと日本の時差6時間。
Skypeで宮崎さんにお話をお聞きしました。

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まず、一番初めにお聞きしたいのですが、
クウェートって危なくないのですか?
- 宮崎
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家から車で80キロ行くとイラクとの国境ですから、
危ないと思われても仕方ないと思います。
でも、住んでいる間は何も危ない目に遭ってないんです。
戦争の時はイラクで後ろから撃たれたり、
危険な目にも遭いましたが、
それ以外では本当に危ないときは一度もありません。
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- サラッと言いましたが、撃たれたんですか?!
- 宮崎
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もう戦争は終わってたけどね。
あの頃は若者に仕事がなく、
私たちが乗っていた車を奪おうと襲われました。
パジェロだったかな。
私は運転してたので座席に弾がめり込んでましたから
あと1センチというところですよね。
危機一髪ですよ。
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不思議なんですけど、なんで、
そんな怖い思いをした「場所」に住み続けているんですか?
- 宮崎
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現地の方にもよく聞かれるのですが、
正直言うとわからないんです(笑)
変な言い方だけど、流されてきた、という感じ。
会社に出向を命じられて、
クウェートに初めて来て「なんか面白いな」と感じて、
会社を辞めて、自分で起業し、今に至るわけですから。
もう41年も住んでいると日本よりもクウェートの方が
長くなってきましたから、こっちの方が落ち着きます。
近隣国の戦争や国内の政治が不安定だと思われがちですが、
今は近代的なショッピングセンターや高層ビルが建ち、
レストランやブランドショップなどの娯楽も充実してます。


住む分には何の問題もありませんし、
仕事もたくさんありますしね。
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- どのようなお仕事をされているのですか?
- 宮崎
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The Kuwait Nippon Associates Ltd.という会社を作って(https://kunaljp.sharepoint.com/Pages/default.aspx)
国のインフラに関わる仕事をしています。
一般人には馴染みがないかもしれませんが、
上下水道や発電所用の大型ポンプやパイプ、
建設用機械や特殊装置を取り扱ってます。
政府の案件が多く、何百億という案件もありますよ。
海外企業のクウェート進出の際の
ビジネス支援なんかもやっています。
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- クウェートでは仕事がたくさんあるんですか?
- 宮崎
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2015年4月にインフラ案件(14兆円規模)を含む
第二次国家開発計画が開始しました。
人口も増えますから、発電・造水施設の建設、
都市内鉄道網・国内鉄道網の新設、道路網の整備、
住宅・都市開発、空港・港湾の整備、
医療施設・教育施設の新設などなど。
インフラに関わる仕事をやっている私には
面白いことがいっぱいあります。
本当にもう面白いことばっかり。
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- 想像できないくらいすごい規模ですね。
- 宮崎
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フセインの脅威があったときは
大きなお金をかけてインフラを整備しても壊されるので、
やっていなかったのですが、
今こんなにもインフラ整備に力を入れていることからも、
クウェートはどこの国からも
脅威にさらされていないことがわかりますよね。
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たしかに。
クウェートでのお仕事のどんな点が面白いんですか?
- 宮崎
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新しいものは面白いですよね。
例えば、新しく100万人の都市を作る計画があります。
今までは首都のクウェート市と湾岸エリアの
いくつかの街が中心でしたが、
イラクとの国境の近くなどに新しい街をつくるんです。
きちんとした街を作って攻めてこれないように。
これを「面白い」と思うか「危ない」と思うか。
私は「面白い」と思いました。
街をつくって人を住まわせるということは住居を作り、
電話線、下水、電線、雨水の排出、発電所、
下水処理場、道路、交通機関、病院など
新しいインフラを整える必要があります。
そのプロジェクトを中国の会社が受注したのですが、
その中国の会社が街をつくるために
6000人くらいのスタッフのキャンプを作らなきといけない。
6000人というともう小さな街をつくるのと同じですよね。
水やら下水の処理やら。食料も必要。
すると近くの農場で中国野菜を作って、
そこにサプライする話が出てくる。
ビジネスがドンドンつながっていく感覚。
考え始めると、もう面白いことしかないですよ。
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- クウェートの面白さは行けばわかるものですか?
- 宮崎
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観光などではなく、
日本人の若い人にはビジネスで来てほしいですね。
ビジネスで来ると腰の据わり方が違ってきます。
腰が据わると同じ場所でも違う景色が見えてきますよ。
最終的に東京に戻って働くという視点ではなく、
この国の10年後20年後を作るという覚悟を持つと、
さらに面白くなってきます。
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この場所に腰を据えていることが、
政府の案件を任される理由にもなりますよね?
- 宮崎
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私は湾岸戦争勃発時はちょうど日本に出張していたので、
それまで一緒に住んでいた家族はそのまま日本に残し、
私だけクウェートに戻りました。
2003年のイラク戦争時にはクウェートに残り、
空襲警報を聞きながら、
ミサイルが事務所の近くに着弾する中、
現地スタッフとともに業務を続けてましたから。
逃げるつもりもなかったし、
本当に腰を据えていたからこそ
「長期で任せられる信頼」を得られたのだと思います。
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新しい場所で信頼を得るために
工夫したことや努力したことってありますか?
- 宮崎
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特に工夫や努力はありません。
クウェートでは人を信用しないのがベーシック。
私も相手をわかって、相手も私をわかってくれて
自然に仲良くなるしかありません。
そのためには喧嘩するのも大事。
クウェートでは二つの感情を持っていません。
日本人のような「本音と建て前」がないんです。
もし、日本だったら小さな会社が
大きな会社の担当者と喧嘩してしまったら、
取引停止になる可能性もあるかもしれません。
でも、こっちはどんなに喧嘩しても、
次の日になって必要だったら電話がかかってくる。
二重性がない。一面だけみていたら良いんです。
そのためには自分も同じように
オープンでいなければいけません。
それが苦痛だったらクウェートで住むのは
厳しいかもしれませんね。
また、「クウェート人は働かないでしょ」
という人もいますが、
だからこそ、私たち日本人が必要とされ、
仕事をするができるのだと思ってます。
- ーー
- 面白いですね。オープンでフラットな場所なんですね。
- 宮崎
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クウェートは元々外国人の方が多い国ですから、
外国人とか日本人とか区別されないんですよね。
政府の病院も無料ですし。
国籍や仕事で区別されません。
病院は無料ですが、質はとても良いですよ。
丁寧ですし、最高です。私はすごく信頼しています。
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- これからも働き続けるのですか?
- 宮崎
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体力以上に気力、やる気がなくなると終わり。
とにかくクウェートは面白いので
歳をとる暇がありません。
100歳でもまだ現役でやりたい。
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- もちろん、場所はクウェートですか?
- 宮崎
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はい。一度、自分で本を書きたいな、と思った時、
題名を考えたのですが、
「クウェートありがとう」しか出てこなかったんです。
ここに40年、生かせてもらって、
仕事やらせてもらって。
「ありがとう」以上の言葉はない。
ビジネスなのでもちろん、
いろんな駆け引きなどもありますが、
働いて、クウェートのためになればいいと思ってます。
少しでもね。