- 糸井
- 小説は頼まれ仕事?
- 浅生
- はい。
- 糸井
- 自分からはやらない?
- 浅生
-
やらないです。
何ですかね、この受注体質‥‥。
- 糸井
-
ご自分のところの。
あの変なホームページとかも。
<浅生鴨のホームページ>

- 浅生
-
あれも
「話題になるホームページってどうやったらいいですか」
っていう相談をされて、
「じゃあお見せしますよ」って言って、
やった感じなんですよ。

- 浅生
-
幕の内弁当や定食でも、
普通におかずとごはんとってありますよね。
ぼく、1品ずつ “全部” 食べるんです。
- 糸井
- そういう感じですよ。
- 浅生
- 1品ずつ食べるんですよ。
- 糸井
-
やめなさい、それ。
“三角食べ” とかあるじゃないですか。
- 浅生
-
三角食べができなくて。
1つずつ全部キレイになくなってから‥‥、
だからいつもごはんがすごい余るんです。
- 糸井
- ごはんは最後にするんだ。

- 糸井
- 『アグニオン』はもう、2刷?
- 浅生
- いや、2刷いってないです。
- 糸井
-
2刷いってない?
2刷まで頑張ろうか、じゃあ。
ぼくは2冊持ってます。
- 浅生
-
女川でもそういう人に会いました。
「持ってます」っていう。
何ですか、この現象。
- 糸井
-
だからそれは、
作者に対する親しみが強くて。
- 浅生
-
ほんとに普段本をぜんぜん読んだことのないようなタイプの人が「買いました!」って。
申し訳なくてなんか‥‥。
- 糸井
- 書くなよ(笑)!
- 浅生
-
でも、
発注されたからしょうがない‥‥(笑)。
- 糸井
- その発注のときは。
- 浅生
-
一番最初は2012年かな。そのころ、
@NHK_PRのツイッターが炎上して
落ち込んでたんです。
ショボンとしてたときに
“新潮の編集者” がやって来て、
「何でもいいから、ちょっと書いてもらえませんか」。
最初に新潮の『yom yom』っていう雑誌を読んで、
「何が足りないと思いますか」って言われたんで、
「若い男の子向けのSFとかは、今この中にないよね」みたいな話をして、
「じゃ、なんかそれっぽいのを‥‥」。
- 糸井
- えっ。そんなことだったの?
- 浅生
-
で、とりあえず10枚ぐらい書いてみたら
“SFの原型”みたいなのになってて。
それを編集者が読んで
「これおもしろいから、ちゃんと物語にしましょう」って言われて。
糸井さんが小説書いたときは、
自分からですか。
- 糸井
-
ぼくは嫌で嫌で嫌で嫌で嫌で、
もう本当に嫌でしょうがなかった。
- 浅生
- 頼まれて?
- 糸井
- 新潮社(笑)
- 浅生
- やっぱり。

<浅生鴨『アグニオン』新潮社>

すべてが管理された世界に抗う最後の少年の物語。人類から悪意を分離すれば、善き人(アグニオン)の世界が訪れるはず。全てを有機神経知能(サピエンティア)に管理された未来社会で、恐るべき最終計画が始動した。人々の欲望を削ぎ、嫉妬も争いも根絶せんとする監理者に、少年たちはどう立ち向かうのか?
浅生鴨による圧巻のSF冒険デビュー作「アグニオン」。
- 浅生
-
でも『アグニオン』が辛かったのは、
自分で “始末” しなきゃいけない。
- 糸井
- 当たり前じゃん(笑)。
- 浅生
-
実は1回、原稿用紙で
500枚ぐらい書いたんですよ。
書いて、最後の最後に
それまでの物語をある意味解決するための
“舞台回し” として、
1人キャラクターが出てきて、
それが最後しめていくんですけど。
それを読んだ編集者が
「このキャラがいいね。この人を主人公にもう1回書きませんか」って言われて、
その500枚はだからもう全部捨てて、
もう1回、ゼロから書き直したっていう。
- 糸井
- めんどくさがりなわりには。

- 糸井
-
でも、表現しない人生は考えられないでしょ、
やっぱり。
- 浅生
- そうですね。
- 糸井
- 受注なのに。
- 浅生
-
そうなんです。
それが困ったもんで。
- 糸井
- そこですよね、ポイントはね。
- 浅生
- そこがたぶん一番の矛盾。
- 糸井
-
「何にも書くことないんですよ」とか
「言いたいことないです」
だけど、何かを表現してないと‥‥。
- 浅生
-
生きてられないです。
でも、受注ない限りはやらないっていうね。
ひどいですね。
- 糸井
-
うん。そうねぇ。
何かを変えたい欲じゃないですよね。
- 浅生
- 変えたいわけではないです。
- 糸井
- 「じっと見たい欲」ですよね。
- 浅生
- 「じっと見たい欲」?
- 糸井
-
たぶん表現したいってことは
「よーく見たい」とか
「もっと知りたい」とか
「えっ、今の動きみたいなのいいな」とか、
そういうことでしょう?
- 浅生
- 画家の目が欲しいんですよ。
- 糸井
-
いや、すごいですよ、画家の目って。
違うものが見えてるんですからね。
- 浅生
- 見えたとおりに見てるっていうか。
- 糸井
-
そこに画家は個性によって、
実は違う目だったりする。
でもそれはぼくなんかが普段考える
「女の目が欲しい」とか、
そういうのと同じじゃないですかね。
- 糸井
-
受け取る側の話をしてるけど。
でもそれはやっぱり表現欲と表裏一体で、
受けると出す‥‥。
これはどうでしょうねぇ。
「臨終の言葉」を、
ぼく、さっき言ったんで、
浅生さんは今、
「臨終の言葉」なんかどうでしょう。
受注、今した。
自分の死ぬときの言葉。
- 浅生
-
はい。死ぬときですよね。
今もし急に死ぬとして、
‥‥「仕方ないかな」。

- 糸井
-
(笑)
これで終わりにしましょう。
いいですね。
<おしまい。>
