浅生鴨×糸井重里 「隠れること」と「表すこと」

第4回 表現しないと生きてられない。
- 糸井
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浅生さんの最新小説、『アグニオン』を持ってきちゃいましょう。

- 糸井
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番組を作ったり、「中の人」をやったり、いろいろされてきましたけど。”『アグニオン』の作家”って、今までで一番表面に立ってるような気がします。
- 浅生
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そうですね。
- 糸井
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これは、どういうふうに始まったの?
- 浅生
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ちょっと仕事で落ち込んでショボンとしてたときに、某出版社の編集者がやってきて、「何でもいいから書いてもらえませんか」って言われたのがそもそもの始まりです。
- 糸井
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えっ。
- 浅生
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「うちの雑誌に、何が足りないと思いますか」って言われたので、「若い男の子むけのSFとかは、今この中にないよね」みたいな話をしたんです。「じゃ、なんかそれっぽいものを」って。
- 糸井
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そんなことだったの。
- 浅生
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はい。とりあえず10枚ぐらい描いてみたら、SFの原型みたいなのになって。「これおもしろいから、ちゃんと物語にしましょう」って編集者に言われて、そこから。
- 糸井
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これって、頼まれ仕事ですよね。頼まれなかったらやってなかった?

- 浅生
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やってないです。
- 糸井
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頼まれずにやったことってあります? 仕事じゃなくても。
- 浅生
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……ないかもしれない(笑)。なんですかね、受注体質で。やりたいことがあんまりないんです。
- 糸井
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うーん、じゃあ、表現せずに一生を送ることだってできたじゃないですか。
- 浅生
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そうなんです。「何にも言いたいことない」「仕事もしたくない」「発注がない限りはやらない」。でも、表現したい。
- 糸井
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そこが一番の矛盾ですね。発注されない限りはやらないけど、表現はしたいっていう。
- 浅生
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はい。
- 糸井
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「発注があったら、ぼくは表現する欲が満たされるから、やりますよ。めんどくさいけど」。
- 浅生
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かこつけてるんですよね。何かに。

- 糸井
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でも、表現しない人生なんて、考えられないでしょ。
- 浅生
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ええ、何かを表現してないと、生きてられないです。
- 糸井
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生きてられない。
- 浅生
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はい。
- 糸井
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浅生さんって、臨終のときなんて言って死ぬんでしょうね。

- 浅生
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うーん、今、もし急に死ぬとしたら……「仕方ないかな」。
- 一同
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(笑)
- 糸井
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これで終わりにしましょう(笑)。ありがとうございました。
- 浅生
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ありがとうございました。