- 糸井
- さっき古賀さんが、
まだ自分のことをしゃべる気持ちにならないと言ったの、
少しわかる気がします。
繁盛したら税制のことを語り出すラーメン屋みたいに、
名が売れたきっかけとは別のことを、
訳知り顔で大きな声で話したがる、
そういう人を見るとちょっと違和感を感じますよね。 - 古賀
- そうですね。

- 糸井
- ぼくがそういう人が気になってしまうのって、
自分もそうだったからなんですね。 - 古賀
- いつ頃ですか?
- 糸井
- 30過ぎたくらいですかね。
なってるつもりはないのに、周りにはそう見えるから、
攻撃されたり無視されたりということも出てきます。
そうすると、反発して
「自分はそんなチンケな人間じゃない」
って気持ちが出てきて、肩肘張っちゃう。

- 古賀
- わかる気がします。
- 糸井
- ただ、「話してくださいよ」って言われると、
悪い気もしないんですよね。
特に女子大とかから依頼が来るとね(笑)。
でも冷静になると、
ぼくの話を聞く気になる人がいるとは思えなくて。
やってはいけないことをやっちゃったなと。 - 古賀
- (笑)
- 糸井
- 肩書に自分が縛られるということもあって。
東北の支援をしようという時も、
この職業だからこれができますだと、
何も役に立たないってことがあるんですよ。
だから、個人として、
何ができるかを考えようと思ったんですね。
それは行列を整理するとか、
そういうことなんじゃないかなと。

- 古賀
- 慈善活動とか、世間的によいことでも、
人によって受け取り方や解釈が違うじゃないですか。
やる側にとって、特に有名な人がやるほど、
よい面も悪い面もあると思うんです。
糸井さんや『ほぼ日』の活動をみていると、
それをうまくコントロールされているなと感じます。 - 糸井
- 自分で「いいことをやっているんだ」
と思わないことですかね。
吉本隆明さんから学んだことなんですけど。
たとえば人を助けながら、
自分は悪いことをやっている、って思うとか。
真逆に考えることが、自分の行動とか態度を間違わない
コツかもしれませんね。
間違ったり、いい気になってたら言ってくださいね(笑)

- 古賀
- 『ほぼ日』の動きは、
僕がこれからやりたいことと重なる部分があるんです。
自分が前に出て、自分の顔で何かを動かす、
ということにこだわる必要はなくて。
対談とか、企画とかいろいろな表現があって。
しかもウェブだけじゃなくて、
展覧会とか、TOBICHIとかリアルな場所でも
面白い人を紹介することができているじゃないですか。 - 糸井
- そういう場所づくりをしていますね。
- 古賀
- 主語が自分でも主人公ではないとおっしゃってましたけど
まさにそんな感じですね。 - 糸井
- 目立とうとしなくても面白い世界がつくれるというのは、
実践してみたいことですよね。
自分がグイグイ前に出なくても、
面白いことはできるんだというね。
古賀さんも、これからも面白い人を発掘して、
たくさんの人に知ってもらって……。
という動きをされるんですね。 - 古賀
- これまでも、
こんなに素晴らしい人がいる、面白い人がいる、
と知って欲しいという気持ちでやってきたので。
今も、この人の声をみんなに聞いて欲しい、届けたい、
という人を探しまわっている状態ですね。

- 糸井
- 自分がこれだ、と思うことができるのは
幸せですよね。
ぼくは古賀さんのやり方よりも
自分が主役じゃないかもしれませんが、
自分が苗を植えた、みたいな仕事が増えていて。
これまでも面白いと思うことをやってきたけど、
飽きない面白さになりましたね。
苗が育って、実った果実や作物を食べる人がいるという、
循環そのものをつくるようになったので。
それで困りごとが解決して、
喜ぶ顔を見るのは嬉しいですよね。 - 古賀
- はじめから、
それを期待してやったことではないんですかね。 - 糸井
- 解決した方がいい問題があるからやる、
という形は取っていますけど、問題がなかったとしても
やっていただろうし、やりたいと思いますよね。
もちろん、自分が問題を解決して、
「どうだ」って言わせたいような気持ちもありますよ。 - 古賀
- わかります。
ライターだと編集者という存在がいて、
まずこの人をびっくりさせたいというのがあって。
期待されて無いな、ってわかっている原稿に、
120点で返した時、「どうだ」って思う、
そのときの喜びはありますね。

- 糸井
-
ぼくは、目の前の仕事の評価とか、良し悪しに限らず、
あの人の周りには面白いことがあるな、
という人でありたいですね、死ぬまで。
お葬式の時、そこにいるみんなが面白い、
楽しい人だという。
そういう未来に向かって生きていると思いますね。古賀さんもぼくの年まで、
ものすごく長い時間がありますから。
これからもたくさん楽しいことがありますよ。 - 古賀
- 楽しみですね。

- 糸井
- ぼくも若い人たちがぼくをみて、
「あれいいな」って思ってくれるような
おじさんでいたいと思ってます。
今日はありがとうございました。 - 古賀
- ありがとうございました。
(おしまい)