もくじ
第1回あの人の声を届けたい 2016-05-16-Mon
第2回お金とのつきあい方 2016-05-16-Mon
第3回どんな時間軸で生きていくか 2016-05-16-Mon
第4回面白い世界をつくり続けるために 2016-05-16-Mon

熊本県出身。
市場調査会社でリサーチャーや営業を経験したあと、広告代理店でマーケティング、プロモーションをおこなう。その後スタートアップインキュベーターにてアクセラレーターをつとめ、現在はロボットベンチャーでPRやマーケティングなどを担当。

第2回 お金とのつきあい方

古賀
糸井さんのなかで、「ヒット」についての定義というか
こういうものだ、というものはありますか。

糸井
『ほぼ日』をはじめてからは、ヒットは多様だな、
と思うようになりましたね。
生物多様性みたいに。ヒット多様性。
古賀
ヒット多様性。
糸井
何万PVあるとか、いくら利益が出たとか、
そういうわかりやすい基準ではなくて。
売れたけど、ヒットだとは言いにくいものとか、
金銭的にはマイナスだけど、ヒットだなとか。
たとえば事務所を引っ越したことも、
お金がかかったし、引っ越し自体は売上を
産むものではないけどヒットなんですよね。
古賀
数字とかではない基準があるわけですね。
糸井
そう。社会にすでにある価値観ではない、
自分たちの価値観ですね。
しかも、漠然とした感覚ではなくて、
何がヒットなのかも説明できるんです。
ぼくは、すべてがコンテンツですと言っていますけど、
『ほぼ日』以降、
世間的には評価の対象にならないようなものも
数に入れることで、自分の価値観を増やすというか。
そういうことをするようになりましたね。

古賀
ミリオンセラーはまさにですけど、
ヒットは売上に繋がることが多いと思うんですが。
糸井
直接的にも、間接的にも売上に繋がることは事実ですね。
だけどミリオンセラーとか、売れた、という実績を出すと
同時にお金についても注目が集まってしまいますよね。
ぼくにとってそれは少し面倒なことで。
古賀
はい。
糸井
やりたいことをやって、結果としてお金がついてくる。
当然会社は利益を出さなくてはいけないので、
お金を稼ぐことは悪いことではないはずなんですが、
その金額が大きいと、何をやったかとか、
なんでそれをやるのかという視点が薄まって、
「お金のためにやっている」
と言われかねない。
そうすると、とても動きにくくなってしまうんです。

古賀
確かにそうですね。
糸井
たとえば古賀さんが面白いことを考えついたとして。
それを見た誰かが、
「やればやるほど古賀さんが儲かるんだよ」
って言い出したら、動きにくいじゃないですか。
古賀
とてもやりにくいですね。
糸井
一緒にやりたいって仲間ができにくくなっちゃうし、
離れてしまうかもしれない。
だからぼくは、お金についてこういう風に思ってます、
と表に出すようにしていますね。
古賀
それでも、たとえば100万部売って1億、嬉しい、
という気持ちはあるのでしょうか?
糸井
それも、ないですねえ。
ぼくが稼げるお金って、そんな大きくないんですよ。
確かに「一億」という額は大きいけれど、
それは小さなビルも建てられないくらいのお金なんです。
半分税金で取られるし(笑)。
古賀
(笑)
自分の稼ぐお金では事業の元手にしかならないって、
いつぐらいに気づかれたんですか?

糸井
30代になってからですね。30代のはじめぐらい。
20代の頃は儲かったな、とか思ってたんですが、
やりたいことを考えると小さなもんだなって。
古賀
その感覚は会社員とか、
そういう立場では気づきにくいことですよね。
糸井
会社員的な発想では難しいんじゃないですかね。
事業をはじめようとしたとき、
だいたいこのぐらいの資金がいるな、
と想像するじゃないですか。
その規模が、サラリーマンと経営者では違いますよね。
お給料を貰う立場からすると、とても大きな額だけど、
実際はすぐに無くなるぐらいの小さなお金なんです。
古賀
お金なしでやればいい、ということとも違いますよね。

糸井
違いますね。
お金は事業にとってエンジンみたいなものなので。
ないと動くことさえできない。
古賀
おっしゃったように、それなりの事業をするなら、
そこそこ大きな額のお金が必要になりますしね。
糸井
そうですね。
だから、ミリオンセラーを出して稼ぐぞ、
という気持ちはもうないんだけど。
そもそも、もう100万部なんて出ないなあ、
とは思うんですけど、
ヴィジョンとして示すにはいい数字ですよね。
これだけの人に届いたっていう嬉しさというか。
がんばってよかったな、って思えるんじゃないかと。
さらにそれを仲間が同じように感じて、
喜んでくれると嬉しいですよね。
古賀
そうですよね。
他者の存在は大きいという話をしましたけど、
会社をつくって、小さいですけど組織ができると、
嬉しいことも増えますよね。

糸井
会社の子がヒットを出したんですよね。
古賀
そうです、はい。うちの子が。
10万部いって、自分のこと以上に嬉しかったですね。
気持ちいいなあと思いました。
糸井
そういう感覚、大事ですよね。
人が喜んでくれることが嬉しいって。
経験すればするほど人の喜ぶことが考えつきやすく
なるんですよね。
そうすると打率もあがりますよね。

(つづきます)

第3回 どんな時間軸で生きていくか