もくじ
第1回知ってほしい人たちがいる。 2016-05-16-Mon
第2回自分のため、誰かのため。 2016-05-16-Mon
第3回稼いだお金とチンケなビル。 2016-05-16-Mon
第4回多様なヒットを打つために。 2016-05-16-Mon
第5回「どうだ!」の苗を植え続ける。 2016-05-16-Mon

写真雑誌「PHaT PHOTO」、フリーマガジン「Have a nice PHOTO!」編集部。日本最大級の参加型写真展「御苗場」や、2015年からはじまった「東京国際写真祭」など、写真のイベントにも関わっています。

プロライター古賀史健さんが、糸井さんに聞きたかった仕事論。

今年の2月に累計発行部数100万部を超えた、
『嫌われる勇気』の著者、古賀史健さん。
糸井重里から「質問を受ける」はずだった古賀さん、
ふだんから聞き書きを生業とするライターという職業柄もあり、
いつの間にか、糸井を質問攻めにしていました。
業界のこと、企画のこと、お金のこと。
古賀さんだからこそ引き出すことができた、
糸井重里との全5回の仕事論、スタートです。

プロフィール
古賀史健さんのプロフィール

第1回 知ってほしい人たちがいる。

糸井
今回の入り口は、たぶん、
「お天気がいいですね」
じゃなくて
「売れてますね」
ですね(笑)
古賀
ありがとうございます(笑)
糸井
ライターという裏方商売で生きてる人にとって、
おそらく不思議な実感ですよね。
“ミリオンセラー”というものを
経験できる人は少ないと思うんですよね。
古賀
はい。
おっしゃる通り、ずっと「裏方の仕事」
という意識でやってきました。
ふつうの作家さんとか著者さんだと、
「これだけ売れたんだぞ」っていうふうに、
ちょっと天狗になるような瞬間ってあると思うんです。
でも、なかなか天狗になりようがない立場で。
糸井
ええ。
古賀
ただ、昔から
「100万部いけば、さすがに自分も天狗になるだろう」
と思ってたんですよ。
糸井
その数字ですね。
古賀
そうですね(笑)
もうちょっと偉そうに、世の中にいろいろ発信したり、
ものを申すみたいな活動を
躊躇なくできるようになるのかなと思っていましたが、
全くないですね。
糸井
躊躇していたんですか?
古賀
言いたくなるんだろうなと思ってたんです。
でも「俺の話を聞け」っていう欲求がほんとになくて。
「この人の話を聞いてください」なんですよ。
未だに、「その話、もっと大きな声で言ってください」
とマイクを渡したい人を捜し回ってる状態ですね。
糸井
「その人が考えてることを、僕はとても好きなんです」
というのは、自分のメッセージが入り込みますもんね。
古賀
糸井さんも、吉本隆明さんや矢沢永吉さんのような
糸井さんの中のヒーローたちがいて、
その出版のお手伝いとかをされてきましたよね。
糸井
そうですね。
古賀
その時の糸井さんの気持ちっていうのは、
「この人の言葉を聞いてくれ」みたいな感じなんですか?
糸井
僕の場合は、「とっても驚いたよ」とか、
「僕はとってもいいなと思ったよ」とか、
間接話法で僕の本になるんですよね。
だから自分を前に出す必要は全くなくて。
古賀
はい、はい。
糸井
美味しいリンゴを売ってる八百屋で
「いいリンゴでも売れないから作るのやめよう」
っていう人に、
「俺が売るから、もうちょっと作ってよ」
っていう役ですかね。
古賀
うんうん。
糸井
うちで売ってる海苔とかも、そうだからね。
「もうそろそろめんどくさいことはやめて、
漁協にふつうに出そうと思うんだよ」
っておじいさんが言うから、
僕らは「まあまあ、ちょっと待ってよ」って。
古賀
僕も、糸井さんのようにやりたいと言って
やりたい企画ができるような状態に
やっとなってきたんですけど、
向こうから「やって」というお仕事だけしか
できない時期というのは結構長くて。
糸井
はい。
古賀
『ほぼ日』では、毎日のようにそれが
できてるんじゃないのかなと思うんですよね。
面白い人がいるから対談で紹介しよう、とか。
糸井
TOBICHIで展覧会を開いて、とか。
古賀
はい、そういう場所を作って、人を紹介していく。
『ほぼ日』は、僕が今やりたいことと、
重なる部分があると思ってるんです。
第2回 自分のため、誰かのため。