- 古賀
- 糸井さんが震災や、
気仙沼に関わるようになったことは
そういった考え方の変化に影響していますか? - 糸井
- はい。
震災はでかいです。 -
ぼくは震災時に被災された人と
「友達になりたい」と、
早いうちに言っていたんです。 -
なぜなら、友達の言うことなら、
みんな素直に聞けるから。 -
- 古賀
- なるほど。震災の時に、
特に福島との付き合いや距離感の問題について
「当事者じゃなさすぎる」
とおっしゃってましたよね。 -
当事者になることは僕らにはできない。
そのきっかけが「友達になる」
ということになるのでしょうか? - 糸井
- そうですね。
友達じゃない人から、何かを言われても、
「うん、ありがとうございます」って、
「ございます」が付くんだよね。 -
「してあげるほどいい」、
そう思ってる人もいると思うんです。
でも違いますよね。 - 古賀
- はい。わかります。
-
-
僕はちょうど震災の時、
ちょうど『cakes』の加藤さんと一緒に
本を作っていたんです。 -
「震災に触れず、何もなかったように、
その本を出すのは、おかしいよね」という話をして、
本のテーマとは関係なかったんですが、
現地に行って、著者の方と3人で取材をしました。
その時はまだ瓦礫がバーッと、
広がっている状態で。 - 糸井
- 5月だと行くだけでも大変な時期ですよね。
- 古賀
- そうですね。
交通手段も限られてるような状態でした。
その時に思ったのは、
「今は自衛隊やプロの人に任せるしかない」と。 -
東京にいる僕らにできるのは、
自分たちが元気になることだと思ったんです。
下を向いて、つまんない本を作ったり、
自粛したりとか、
そういうようなことじゃなくて。 - あの、瓦礫を見た時の迫力‥‥‥。
-
- 糸井
- ただただ、無量感ですよね。
- 古賀
- ええ。何もできないな、と思いました。
- 糸井
- あの何もできない、という思いは、
ずっと形を変えて、ぼくの中にも残ってます。 -
同じような話があって、
映画監督の大根さんが当時、
『モテキ』という映画を撮っていたのですが、
あの大変な状況の中で、
撮影を止めない決断をしたという話があったんです。 -
ぼくは以前
「本気で決断したことは全部正しいと思う」と
書いたことがあったのですが、
その『モテキ』の話は、後で聞いて、
やっぱりそうだったな、と思うんですよ。 -
- 古賀
- うん。うん。
- 糸井
- みんながことさら何か言ったり、
生ぬるい被災地の物語を作っても意味はない。 -
その時に、自分の肩書きは邪魔で、
ライターだとか、編集者だからとか、
そこを起点に考えるという発想を、
ぼくはなるべくやめようと思ったんです。 -
そのあたりが、
古賀さんの「ライターとして考える」とは、
違ったところなんですよね。 - 古賀
- そうですね、うん。
- 糸井
- 「間違わないようにしよう」と思ったんです。
当時「僕は歌い手だから」と、
ギターを持った人が
当時、被災地にたくさん向かったけれど、 -
「君は来て欲しいけど、君は来て欲しくない」
ってこと、絶対あったはずなんです。 -
- 古賀
- そうですね、はい。
- 糸井
- それはたぶん違うんだろう。
ぼくは豚汁を配る場所でで、
列を整列させるお手伝いの延長線上で、
できることを考えたかったんです。 - でも、ずっと悩んでました。
- 古賀
- そうですよね。
- 糸井
- もし震災がなければ、
もっとつまらない小競り合いをしたり、
あるいはちっちゃな贅沢、
カラスがガラス玉を
集めるようなことをしていたと思います。 - 古賀
- 糸井さんや『ほぼ日』の活動を見てると、
しっかりと正しい道を選んでいる感じがするんです。
それは「友達」っていう
最初の起点があるからなんでしょうね。 -
「俺たちはいいことをやってるんだ」と、
自分を規定するときって、
結構、間違ったことをしてしまう気がするんです。 -
- 糸井
- それは吉本隆明さんの考え方でもあるんです。
-
「いいことをやってる時は悪いことやってると思え。
悪いことをやってる時はいいことやってると思え」
まったく逆に考える。 -
吉本さん自身が、
そうしよう、と思って生きてたんですね。 -
吉本さんの奥さんはね、
「うちのお父ちゃんはニセモノだ」って言うんです。
「吉本さんのお父さんが本物だった」って。 -
「うちのお父ちゃんはいい人だけど、
そうなろうとしてなったから、本物じゃない」って。 - 古賀
- はい(笑)。
- 糸井
- ぼくも今さら本物にはなれないので(笑)。
ほんとうのこと言うニセモノになろうと。 - 古賀
- うん、そうですね。
- 糸井
- もし間違ったら言ってくださいねっていう。
ちょっといい気になってたら(笑)。 - (つづきます)
糸井さん、「売れる」って何ですか?
