- 古賀
- 僕はやっぱり「業界のために」と
考えてしまうんです。 -
自分が新人だった頃には
憧れの、格好いい先輩達がいた。
今の若い人にとって自分は
「それになれているだろうか」と。 -
- 糸井
- ああ、なるほど。
- 古賀
- 昔の思い出の方が格好よく見えるんです。
それに今は出版より、ネット業界の方が、
若い人にはキラキラして見えるはずで。 -
例えば、
サッカーの本田圭佑さんが
白いスーツを着たり、
ポルシェに乗る姿を見せるような、
そういう羽振りの良さとか‥‥‥。 - 糸井
- 本田さんはあれ、
あえてやっていますよね。 - 古賀
- ああいう演出も、
出版業界で僕らみたいな人間が、
やった方がいいのかな、という思いも
ちょっとあるんですけど。 -
でも、今の糸井さんの話を聞いて、
三日三晩、
「その気持ちは本当か」と自分に問いかけたら、
やっぱり「チヤホヤされたい」という気持ちは
どこかにあります(笑)。 -
- 糸井
- はい(笑)。
- 古賀
-
けれど、それを
「よくないこと」と片付けるのは、
あまりにももったいない
「原動力」だと思うんです。 - 糸井
- 人間じゃなくなってしまう、
ということですか。 -
- 古賀
- そうです。
だから「チヤホヤされたい」と、
どう向き合って、下品にならず、
人を傷つけないように、
自分を成長させていくかが、
僕が今やるべきことだと思っています。 - 糸井
- ぼくは本当のことを言うと、
「チヤホヤされたい」と、どう向き合うかを、
やるべきなのかも、わからないんです。 -
一度、変なハンドルの切り方をしてみないと、
まっすぐ進む方法はわからないと思っていて。 -
‥‥‥ぼくはよく
「以前はみんな立ちションベンしてたんだぞ」
という話を社内でするんです。 - 古賀
- ああ、はい。
-
- 糸井
- 昔は田んぼと都市の境目みたいな場所ばかりだし、
それは全然、おかしくないわけです。
今の基準で
「よい」「悪い」って言うのは簡単ですよ。 - 古賀
- そうですね。
- 糸井
- 今の時代はスタートラインをゼロにして、
すぐお互いにチェックし合うような時代ですよね。 -
でも、そうじゃなくて、
一度、変なハンドルの切り方してみると、
「健全な免疫」みたいなものを作れると思うんです。 - 古賀
- はい。わかります。
- 糸井
- 古賀さんは
「ネットの方がキラキラして見える」と
おっしゃいましたけれど、
それはピリピリするような、
けいれんするような楽しさだと思うんですね。 - 古賀
- うん。そうですね。
- 糸井
- ぼくがコピーライターやってる時にも、
そういう流れの浅いものはありました。 -
ぼくの時代が月単位で動いてたとしたら、
今はそれこそ時間単位のスピードですよね。 -
その中で「裏の裏の読み合い」を
ピリピリしながらやっていては、
何も育たない気がします。 - (つづきます)
糸井さん、「売れる」って何ですか?
