もくじ
第1回「業界のために」 2016-05-16-Mon
第2回「確実な今日と、三年後」 2016-05-16-Mon
第3回「自分にできることを考える」 2016-05-16-Mon
第4回「本物になるために」 2016-05-16-Mon
第5回「現実的なお金」 2016-05-16-Mon
第6回「ヒットの考え方」 2016-05-16-Mon
第7回「この先に続く人生」 2016-05-16-Mon

90年生まれ。
自由な物書きになるべく、修行中。
人間生活を大切に、がモットー。

古賀史健さんと話した、いろんなこと 

第2回 「確実な今日と、三年後」

糸井
僕はよく社内で
「昔はみんな立ちションベンしてたんだよ」
って話をします。
今のような街が作られてく過程には、
田んぼと都市の境目のような場所が
いっぱいあって、
その重なってる領域みたいな所で
みんな生活していたんです。
都市でもなく、田舎でもない、
曖昧な場所が
たくさんあったわけなんですよね。
それから、
今倫理的にものすごくあちこちで追求されるけど、
お妾さんのいる人も、いくらだっていました。

古賀
はい。
糸井
僕が思うに、
今の基準で良い、悪い、って
決めつけるのは簡単ですよ。
答えが最初からわかってるわけだから。
少し前までは、
日本も結構ハードな部分はあって。
オヤジたちが女子供のいる所で
タバコ吸いまくって、そのモクモクの中で、
なんか偉そうなことをしゃべってて、
「あ、酒こぼしちゃった」って言えば、
「あらあら」なんて拭いてもらう。
ああいう時代の尻尾が、
未だに僕の中にも残ってますからね。
でもあのままそっち行ってたら、今頃袋叩きだよね。
古賀
そうですねぇ。
古賀
今ってスタートラインからリセットして、
最初からお互い「前歯に青のりついてない?」
って確認してから始めるようなところ、
あるじゃないですか。
だから逆に前歯に青のりついてる人の方が
健全なんじゃないかって思うんですよ。
古賀
うんうん。
糸井
ネットは華やかに見えるって言うけど、
あれ、やってる当人たちは、
痙攣的に楽しいんじゃないですかね、
ピリピリするような。
相手に追い抜かれるってわかっていて
自分があえて足踏みして待ってる、
で、次は自分が追い抜いて。
その繰り返し。
僕がコピーライターやってる時にも、
浅い部分でそういうことはありましたよ。
僕の時代が月刊誌の尺度で動いてたとしたら、
今は週刊さえ超えて、
時間単位になってると思う。
そんな時間単位で、お互い腹の探り合いしながら
裏の裏まで読んでるんだぜ、っていうのを
ピリピリしながらやってるというのは
何にも育たない気がするんだよね(笑)
古賀
すごくわかります。
先日糸井さんが3年後の話、というのを
書かれてたじゃないですか。
“船に乗っているものとしては、
向こう岸の景色を見ながら進むように、
目の前の海ばかりじゃなく、
水平に見える三年先を、見ていることはできるし、
するべきだと思っている”
ってすごく共感したんです。

糸井
あれ、自分で書いて言うのもなんだけど、
すごくビリビリきた(笑)
古賀
(笑)。
でも、そこの時間軸を
どういうふうに設定できるかというのが、
すごく大事だと思って。
見えもしない10年後、20年後を語りたがる人って…
糸井
まずそれは嫌だね。
古賀
そうですよね。
でもそこで満足してる人達というのは、
若い人にも、ある程度年が言ってる人にも
意外とたくさんいて。
ぼくもどちらかというと今まで、
今日か明日しかない、
だって先のことなんてわからないじゃん、って
そういう立場だったんですよね。
でもそこで糸井さんのおっしゃるように、
きちんと考えに考えたら、
3年先にこっちに向かってるとか、
あっちに向かってるとかの
大まかなハンドルは切れるんだ、と感じたんですよね。
糸井
それを僕は今の歳でわかったわけです(笑)
古賀さんの歳でも、わかる人はいるかも知れない。
だけど、
そんなに簡単にその考えになりたくない、
もっと刹那的でいたい、
みたいな意地があって
たぶん抵抗するんですよね。
古賀
うんうん、そうですね。
糸井
だから、
大きな災害があった後とかは特に、
ああいう想定外のこともあるんだから、
今日という日を充実させていこうと思う。
それはそれで立派な考え方だと思うんですよ。
そこにしっかりと重心を置いた上で、
「3年後はわからないから今をやり残すことなく、
1日1日を精一杯ちゃんと生きようよ」
というのはとても説得力あるんです。

古賀
そうですね。
糸井
たぶん僕も、
本当にそう思えたんじゃないかな。
一旦そう考えて暮らしていました。
そしたらそのうちに、
「この先どうしましょう?」って
聞かれることが多くなってきて。
「俺もいまはわかんないけど…」
っていうのをずっと言ってきたんだけど、
でもふと気づいて。
その確実な1日を積み重ねることができるならば、
今日という日のことは
3年前からしたら実は見通せてたな、っていうことが
実感できるようになったんですよ。


✒️糸井さん、古賀さんが改めて自分の生き方について
問い直すきっかけになったこと、
それは東日本大震災でした…
第3回へ続きます。

第3回 「自分にできることを考える」