もくじ
第1回自分たちの手で建物を。 2016-06-28-Tue
第2回モザイクタイルをどう見せる? 2016-06-28-Tue
第3回町のこれからのために。 2016-06-28-Tue
第4回はじまりのお話 2016-06-28-Tue
第5回素敵な夜の会 2016-06-28-Tue
第6回アイデンティティを持つ 2016-06-28-Tue

岐阜県生まれ。建築、料理と気ままな旅が好きです。暮らしを考え、提案する仕事をしてきました。今は、次どこへ行こうか模索中です。

ミュージアムができるまで。

担当・ecoromo

岐阜県多治見市に、
それはもうオモシロイ建築ができたと聞き、
オープンして間もなく見に行きました。
建物の名前は、
「多治見市モザイクタイルミュージアム」
岐阜県多治見市は、
全国でも有数の窯業の街として知られていますが、
このミュージアムがある笠原町は
日本一のモザイクタイルの生産地です。
構想から10年以上を経て、
建てられましたが、
業界の有志のグループは
20年以上も前から活動を続け、
満を持して、出来上がったミュージアム。
そんなミュージアム開館までの
思いがたくさん詰まった
公・民奮闘記です。
それぞれのお立場からお話を
お聞きしました。
お話を聞き、何かが始まるような、
ワクワクする気持ちになりました。
ぜひ、合わせてお読みいただきたいです。

プロフィール
村山閑さんのプロフィール
各務寛治さんのプロフィール

第1回 自分たちの手で建物を。

――
今日は、どうぞよろしくお願いいたします。
村山
はい、お願いいたします。
――
まだオープンして間もないですが、とてもお忙しそうで・・・
村山
そうですね、全く人手が足りてなくて。
こういうこと言うと怒られちゃいますけど(笑)
――
(笑)嬉しい悲鳴ですね。
今日も平日なのに、お客さんがたくさん来てました。
村山
はい、お陰さまで。
この建物を設計されたのが、
藤森照信先生ということもあって。
――
実はわたしも建築が好きで、
藤森先生の新しい建築が気になって来てたんです。
もう見た目から興奮してしまいました。
中に入って、いろいろと展示を見せていただき、
展示と建物の調和が合っていて、
終始とても楽しませていただきました。
村山
ありがとうございます。
――
そこで一番気になったのは、
スタッフの方がすごく親身にタイルについて、
いろいろ教えてくださったことでした。
皆さんのタイル愛?が、スゴイというか・・・
村山
はい(笑)
――
4階の展示室で、ボランティアで来ていらっしゃる
安藤さんという方に、
このミュージアムの前身のような施設のお話や、
20年以上も前から活動していた
全国のモザイクタイル収集のお話などたくさん
お聞きしました。
村山
はい、はい。
――
他にも、事務局長の堀江さんや、館長の各務さん、
ショップや受付のスタッフの方もお話してくれました。
皆さん、ただのスタッフじゃないなって思って聞いてみたら、
モザイクタイルが縁で集まった団体だったんですね。

で、皆さんのことやミュージアムの生い立ちが
すごく気になって調べてみたら、
設計者の藤森先生がある建築雑誌の中で、
皆さんと計画を進めていくことが面白かったと言っていて。
形や素材なんかも、みんな面白がって、
一生懸命やってくれるので上手くいったし、
違和感なくしっくりきたことで、
この建物の形が、ほほえましく思えると。

村山
藤森先生は、建物の中にこの地域の特徴を
入れていきたいっていう思いがすごくありました。
例えばこの山の形にしても、
採土場というタイルの原料の山がモチーフで。
正面の土壁風になっているところには、
地元の産業で作られている茶碗とかが埋め込まれています。
――
確かにそうでしたね。
村山
実はここは、タイルの町になる前は茶碗の町だったので、
先生が今でも茶碗を作っている町の業者さんのところに
直接行って、茶碗をもらってきたりとかして(笑)
――
あー、そうだったんですね(笑)
村山
はい、地元の人たちにも関わらせるというか。
タイルにしてもそうで、4階にあるタイルのカーテンと
呼んでいる展示があるんですが、あれも町の人たちと一緒に
接着剤でタイルをつける作業をしました。
外にある公衆トイレも、元々あった建物ですが、
藤森先生がみんなで白いタイル貼りたいって言って(笑)
――
それで、人を集めて貼ったんですね(笑)
村山
藤森先生が楽しんでらっしゃるのが
すごく伝わってきましたね。
建物って、愛されるためには、
周りの人が関わるのがいいんだって、
先生がどこかの本に書いてたと思うんですけど・・・
使う人自身が関わるのがいいんだって。
実際に自分の住宅を建てる時にも、
ちょっと関われるとより大事にするとか、
そういうことなのかなと思いました(笑)
その辺は、私たちもすごく面白かったです。
――
村山さんをはじめ、皆さんが在籍している
「一般財団法人たじみ・笠原タイル館」は、
その時には既にあったんですか?
村山
はい。わたし自身は、この事業にちゃんと参加したのは、
2年半くらい前ですね。元々は、別の美術館の学芸員でした。
――
そうなんですね。
どういう経緯で一緒にやることになったんですか?
村山
わたしが2009年に元いた美術館で、
笠原町の地元の有志たちが長年収集してきた
タイル資料を紹介するという、
タイルの展覧会をやらせてもらったんですね。
その時に今の館長たちにお世話になりまして。
――
その時から?
村山
いえ、そこからしばらくして、
いよいよミュージアムを建てるというのが決まった時に、
声をかけていただきました。
でも、当初は財団法人の運営も大変だったので、
まずは多治見市の臨時職員として、
オープンまでの2年間準備作業として、プレイベントや
事前の展示準備をしてきたという流れですね。
――
そうなんですね。
プレイベントでは、これからできる建物や
モザイクタイルのことを展示したんですか?
村山
ええっとですね、プレイベントの展示は大きく分けて
3回やったんです。
一つは、藤森先生が赤瀬川原平さんや、
南伸坊さんたちとともに路上観察会という活動をされていて、昔、多治見市でも行われていたので、
その痕跡をアーティストの方とたどって、
町中のタイルを探すという企画をしたんです。
――
それはとっても面白そうな企画ですね!
村山
はい。
そのアーティストの方も、
タイルの研究をされていて論文も出されつつ、
創作活動の中でもタイルを作っているような方で、
路上のタイルにもとても詳しかったので、
その企画の展示は、非常に大きな成果のあるものになったと
思います。
――
その展示には、タイルが好きで来られた方と、
藤森先生の企画だってことで来られた方と
いろいろいらっしゃったんですか?
村山
そうですね。
藤森先生ってことで来られた方もたくさんいました。

このプレイベントは、ミュージアムの今後の活動の
道筋というか、方向性を作るためのイベントでもありました。
一つ目の展示は、藤森先生とタイルのこと。
次の展示では、モザイクタイルを美濃焼ミュージアムという
美術館施設の中の一室を借りてきちんと紹介しました。
3つ目は、東京の方を拠点にしているアーティストの方々と、
地元のタイルメーカーさんが一緒にものを作るという
企画をしました。
そのアーティストの方たちは、
たまに河原とか海とかに陶磁器のかけらが落ちてる事が
あるんですけど、それを拾って、
そこから模様を構成しなおして新たなパターンを作る
っていう活動をしていて、普段は布とか紙とかに印刷して、展示しています。
今回は、そのかけらのパターンをタイルに印刷して焼成し、
それを割るとまたかけらになって・・・
ということが永遠に続くみたいな、
そんな展示をやりたいということだったので、ぜひと。

――
万華鏡のような。走馬灯のような(笑)
村山
そうですね(笑)
今、そのタイルが製品化されて、ショップにあります。
さっき言ったように、このミュージアムの方向性として、
藤森先生が作った建物があって、モザイクタイルがあって、
そしてこの地域のタイル業界がある。
学芸員として考えていた内容の、
この3つそれぞれにコミットするような展示を
順番にプレイベントでやりました。
――
すごくいい流れで行われたのですね。
ちなみに、展示はどちらでされたんですか?
村山
当時は、まだ箱がないというか、
ミュージアムとしての場がないので、
まなびパークたじみのオープンギャラリーや
多治見市美濃焼ミュージアムの小さい部屋を
使わせてもらいました。
市としてのPRも兼ねてってことで、
融通して貸してもらえたので。
――
なるほど。地元周辺のPRも大切ですよね。
村山
はい。まぁ、本音言うと、
いろんなところでPRをする必要もあるんですけど、
財源も限られていたので、他に街に出ていくまでの費用は
あまりなくて。
ちょうどその頃、ありがたいことに
モザイクタイルミュージアムができるというのを聞いて
ぜひ関わりたいという方が財団の事業として
各地でPRをされることになって。
――
それでできたのが、この資料ですね。
村山
はい。おかげで、わたしはまずは地元の方が
新しいミュージアムを愛してくださることが
一番大事だろうと思っていたので、
地元に向けてのPRをメインにさせていただきました。
市民に向けて、ミュージアムができるのを楽しみに
してもらえるような企画をやってきたいと。
その中で、インターネットで応援サイトというのを
作って、FBも開設したのですが、
比較的そういうのを見られて、県外から来られる方が
いらっしゃるっていうことがわかりまして。
最初に行った藤森先生とタイルの企画は、
アンケートを取った結果、
県外の方が半分以上を占めていたので。
――
それは予想外だったんですね。
村山
はい。
県外から相当数の方が来られてたのは、
まなびパークたじみの人も今までにないことだとおっしゃっていて。
――
思った以上の反響があったと。
それは何かが起こりそうな予感がしますね。

(つづきます)

第2回 モザイクタイルをどう見せる?