こんどの「JAZZ」、どうする?

第8回 打楽器禁止。こわいから。

糸井

ふだんの山下さんの大学の授業では、
ジャズの歴史を
どうやって教えているんですか?

山下

最初に始めたときは「ジャズ概論」というもので、
前後期12回ずつ、1年で24回の授業ですね。

 
糸井

はぁ‥‥それはもう、大河ドラマですね。

山下

1回で1テーマずつやっても、
項目だけでも
24回くらいには分けられるんですよ。
ジャズの歴史って。

糸井

つまり、大河ドラマを
スペシャル総集編でお送りするっていうのが、
今回のイベントですよね。

タモリ

やっぱり、発生のところからでしょ?

山下

昔、ジャズ歌手の大御所である
水島早苗さんが
「ジャズの歴史」をショーにしたのを
客席から見ていたことがあるんです。
アフリカから始まるんだけど、
リズムの始まりが、
ゴリラが胸を叩くドラミングからだ、
という演出が、妙に記憶に残っています。

糸井

へぇー‥‥。

山下

今回もタモリ教授が出てきて
あの講義どおりにはじめるんだったら
やっぱり、アフリカがスタートになりますね。

タモリ

そうですね、アフリカからですね。

糸井

そこの部分というのはもう、
ジャズであろうが何であろうが、
いわゆる
「ヨーロッパのクラシックからじゃない音楽」の
原点だから、その意味では
「ロックの前半」でもあるわけですね。

山下

ああ、そうですね、そうそう。

糸井

そこ、マジメにやったほうが
おもしろいかもしれませんね。

タモリ

サンバなんかの源流でもあるわけだし。

糸井

そういうことですよね。

タモリ

タンゴなんかも、そのあたりから。

糸井

はぁー‥‥リズムのところを
ちゃんとたどっていくっていうの、
おもしろそうだなぁ。

 
タモリ

アフリカのリズムは、ほんとに高度です。
聴いてみるとわかりますけど、
われわれには
ちょっとノレないようなリズムもあるんです。

山下

タモリ教授もやってた
トーキングドラムなんてのもあるし。

糸井

ああ、トーキングドラム。

山下

今でもちゃんと、それで話が通じるらしい。

‥‥でも、アフリカ音楽が
あらためてジャズと出会うっていうのは
案外最近のことなんですよね。

タモリ

そうですね、ええ。

山下

新大陸でアフリカ音楽の記憶が
残っていたとしても、
北米では打楽器は禁止されちゃいましたからね。

糸井

えっと‥‥打楽器禁止、ですか?

山下

ええ、打楽器禁止です。
なぜかとかと言うと、「こわいから」。

< 続きます >

今日のジャズ語。

トーキングドラム

アフリカでひろく用いられている打楽器で、
まだ文字が発明されるまえに
コミュニーケションをとるための道具として
発明されたのが起源だと言われている。
遠くはなれた地点どうしの
メッセージのやりとりをはじめ、
人の誕生から死、数々の祈りや儀式、
逸話の語り、踊りの伴奏‥‥などなど、
用いられる場面は、とにかく幅ひろい。
胴をくくるひもの締め具合によって
音の高さを調節することができ、
人間の声を真似ることができるとも言われる。
また、静かなアフリカ大陸では、
かなり遠く、キロ単位で離れたところまで
細かいメッセージを伝えることができるという。
なお、これまでたびたび登場してきた
『教養講座・日本ジャズ界の変遷』の冒頭では
タモリ教授が
「ゾウがとれたぞ」というメッセージを実演する、
という場面が収録されている。


2007-10-02-TUE
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