はじめてのJAZZ2ヒストリーもたのしみなりー!ほとんどまるごと再現ツアー

#05 ジャズ誕生以前 完全にパクリ!

糸井 そのラグタイム、聴いてみたいですね。
山下 それじゃ、国立音大のジャズコースの生徒に
来てもらっているので、ちょっと弾いてもらいましょうか。

原田実奈というピアノ科の生徒です。
ラグタイムというのは楽譜になっている音楽なんで、
その通りに弾いてもらうことができます。
糸井 じゃ、さっそくお呼びしましょう。
山下 さっきの、スコット・ジョプリンという人の
『The Entertainer』という曲を弾いてもらって、
いったい、どのへんにジャズとの親近性があるのか。
そのあたり、ちょっと聴いてみてほしいですね。
糸井 では原田さん、よろしくお願いします。
 
  「The Entertainer」
山下 ‥‥クラシックのピアノみたいでしょ?
でも、ヘンにズレてるのね、リズムの進行が。
タモリ うん、ズレてますね。
糸井 クラシックの演奏会では
聴こえてこないタイプの音楽ですよね。
山下 シンコペーションっていうんですけど、
アクセントが半拍前に来ちゃうことが多いんですね。
こういう音楽が、1800年代の終わりごろ、
世界中で大ヒットしたんです。
ちなみに、当時のヒット曲ってのは「楽譜」ですが。

で、これを聴いたドビュッシーがおもしろがって
調べたんでしょう、黒人文化のことを。
タモリ 「ゴリウォークのケークウォーク」でパクったと。
山下 『子どもの領分』という
組曲のなかに、その曲があるんですね。
ま、ヘンなタイトルですけどね。
糸井 「ゴリ」なんてついちゃって。
山下 まあ、とても高級な冗談のつもり、というか、
インスピレーションなんでしょう。

クラシックの作曲家がこんなふうに、あの‥‥。
タモリ はっきりパクったと
言ってやったらいいんですよ!
山下 いやいや、それはね‥‥。
糸井 インスピレーションを受けたんである、と。
タモリ パクってますよこれは!
山下 ああ、ああ、そうですかね、はい。
じゃあ、そういうことで(笑)。
糸井 飛ばしますねぇ、タモリさん。
タモリ 完っ全にパクリ。
他にもパクってますからねあの人は‥‥。
糸井 じゃ、どんなふうにパクったのか(笑)、
原田さんに演奏してもらいましょうか。
山下 ドビュッシー作曲、
「ゴリウォークのケークウォーク」です。どうぞ。
 
  「Golliwog's Cakewalk」
糸井 ははぁ‥‥完全なラグタイムですね。
山下 でしょ。
でも途中にちゃんと展開部を
おくところがね‥‥。
タモリ ああいうところがね、ヨーロッパの汚さだね!
糸井 今日のタモリさん、厳しいなぁ(笑)。
タモリ 展開部でもなんでもないんですよ! ダレる!
山下 ああ、なるほど

芸術って、退屈するところが
必ずあるのかって思うことがあるんですけどね。
糸井 ダレは必要である、と。
山下 そう、そう。
タモリ あの部分でね、クラシックだぞと面目を。
山下 あっはは(笑)
タモリ ラグタイムじゃないぞ、というところをね。
ドビュッシーのやつが。
糸井 あの、つまり、シンコペーションで
さっきのラグタイムと、今のドビュッシーの曲が‥‥。
山下 同じなんです。ラグタイムのシンコペーションを、
おもしろいと思ったんでしょう。
糸井 タモリさんが、パクリだって言いたくなるのも
もっともかもしれない、と。
タモリ まったくのパクリですよ、ええ。
 
<つづきます>

今日のジャズ語

ティン・パン・アレイ
ニューヨークのブロードウェイと
5番街にはさまれた地域のこと。
まだレコードのない時代、
楽譜を出版する会社が軒を連ねていた。


2008-03-07-FRI