「喋る」は、みんなの 極上のぜいたく。 「喋る」は、みんなの 極上のぜいたく。
糸井重里は気づきました。
よかったイベント、おもしろかったラジオ、
楽しかった収録、そのそれぞれに
「また石井玄(ひかる)さんがいる」と! 

石井さんは、オールナイトニッポンの
チーフディレクターを務めたのち
「株式会社玄石」で独立。
現在、約20本の人気ポッドキャストを担当しています。

そんな石井さんと糸井が、石井さんの新刊
『「自分でやらない」ほうがうまくいく』をきっかけに
お話しすることになりました。
「話すこと・聞くこと」が仕事であり、
楽しみでもあるという共通点を持つふたりです。
始まりも終わりもテーマも決めない対談でしたが、
だからこそ、おのずと
「会話」のおもしろさが浮き彫りになりました。
【第9回】話すことでわかること、変わること
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石井
いま、糸井さんと話をしていて嬉しいのは、
糸井さんが、ぼくがなにか言ったときに
「それだ」と言ってくださることで。
ぼくが言ったことをきっかけに
なにかを思いつかれて、
「あ、これかもしれない」
というお顔をされると、
「糸井さんの役に立てたのかもしれない」
と思って、とても嬉しいです。
その瞬間が見えるから、たぶん、
いろんな人が糸井さんと話すのが嬉しくて
たくさん喋るんだと思います。
糸井
本当に、話す相手からもらうことは
いっぱいありますから。
有名な人もくれるし、普通の人もくれます。
上下がないから、
ぼくは人と話すのが楽しいんでしょうね。
たとえばの話、90歳の横尾忠則さんの話から
ポロポロこぼれてくるものって、
みんなおもしろいわけです。
でも、横尾さんだけがお話のなかから
なにかをくれるわけじゃなくて、
7歳の子どもも、くれるものがあるんです。
それらの価値は同じだと思うんです。
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石井
ぼくも、話す相手の区別はしません。
とても有名なタレントさんが相手でも、
企業の社長さんでも、社員の方でも、
同じ興味を抱いてお話を聞いていますね。
糸井
「これはウケるんだよ」という話を磨いて
ポンと置かれても、
「ああ、それですよね」となるだけで。
石井
ある方と初めてポッドキャストで喋ったとき、
その方が漫談のように、
テッパンの話をし始めたんです。
それはそれで
すごくいいお話ではあるんですが、
ぼくは止めてしまったんですよ。
糸井
なるほどね。
石井
「ごめんなさい。
あの、長いし、だいたいわかります」
と言ったら、その方は
もう本当にびっくりした顔をしてたんですよ。
初めて言われたみたいで。
糸井
それはね、箱根から向こうの
文化じゃないかと思うんです。
江戸の文化圏って、
風で飛んで忘れちゃうんですよね。
だから「いま思いついたこと」が、
やっぱり好きなんですよ。
一方で、関西の文化圏は
「ええもん出してきましたわ」っていう。
石井
ああ、それだ。
たしかに、そのパーソナリティは
関西の方でした。
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糸井
大阪出身の友達は、
話を「出してくる」んですよ。
石井
出してきますね。
糸井
で、知ってる話でも、
「ほんまや!」って言い合って。
その楽しさももちろんありますけど、
自分がやるのは得意じゃないんです。
だから、ぼくは講演の依頼は
だいたい断っています。
石井
関西のエピソードトークふうの話し方は、
講演に強いですね。
糸井
どこに行ってもウケるっていう
商品なんですよね。
石井
そうか、関東育ちだから俺は
講演がうまくないのか。
いつも、質疑応答の時間を長くしちゃいます。
そっちのほうが楽しいし、おもしろいから。
糸井
質疑応答、ずっとしててもいいと思うよ。
いい質問が来なくても、
その質問に対して
「こう質問するともっとよかったですね」
という話ができるし。
つくづく、石井さんは
キャッチャーミット型ですね。
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石井
自分で投げないんです。
糸井
でも、キャッチャーからの返球のなかには、
なにかのメッセージがありますよね。
投げられて返すことはできるけど、
「持ちネタを出す」ってことが、
ぼくたちはとにかくできないんですよ。
石井
できないですね。
糸井
長くなるのもイヤだしね。
笑ってもらえなくてもいいから
オリジナルを出したい。
きょう喋ったなかでも、
持ちネタとして何回も喋ってることって、
本当に少ないと思うんですよ。
石井
たしかに、ぼくがポッドキャストの話を
つらつら話してるとき、
糸井さんは興味を失ってました(笑)。
よく聞かれる
「ポッドキャストとは」みたいな話になった瞬間、
糸井さんは別のことを考えているなっていう
顔をされていて。
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糸井
そうでしたか。
自然にそうなってしまいました。
石井
「どこかで聞いたことあるな」って
顔だったのかもしれないです。
糸井
それに「ポッドキャストとは」を掘ってもね。
石井
「たぶん、もう石井くんのなかで
結論が出てる話だな」と
わかってしまったんですね。
糸井
ポッドキャストの話をするなら、
「林士平さんとのポッドキャストは
やりやすいですか?」みたいな話になれば、
次の話に転がっていきます。
やりやすいかどうか訊かれたら、
石井さんはどう答えるんですか。
石井
林さんは、知的でガッツもあって、
まんべんなくできる人なんですけど、
じつは根っこにあるんですよね。
鬱屈としたものが。
糸井
はい、はい。
石井
それが、長い時間話すと出てくるんですよ。
写真
糸井
なるほど。
石井
反射神経で答えられちゃう人でもありますし、
30分喋っただけではボロは出さないんです。
それが、奥まで話を持っていくと、
おもしろいんです。
意外と「好きな野菜なんですか」と聞くと、
林さん、答えられないんですよ。
糸井
そんなふうに、
あまり自己問答をしなくても
いろんなことができちゃう人が
いまの時代をつくってるので、
そこをかき混ぜるのが。
石井
おもしろいんですよね。
糸井
だから、林さんの番組に呼ばれたときのぼくは
楽しかったんです。
方法論やレイアウトがある話もできたし、
ひょいと子どもの話に片足が入ったら、
そこも考えたんだなって感じたし。
そんな林さんをゲストじゃなくて
ホストに設定するには、
普通の考え方と違うなにかが
必要だろうなと思います。
石井
そうですね。
「自己開示してください」と頼んでも
しない人なので、
対話によってこぼれ出てくる林さんの自己を
拾い集めるというか。
さっき、糸井さんが「ひとり読書会」で
本を読むことで自己開示したと
おっしゃったように、
林さんはゲストの物語を聞くことで
自己開示しているんです。
そうすると、林さんの開示された自己を知って
ファンになる人が現れてくるんですが、
その人はゲストを呼ぶ回より、
ぼくが林さんに質問して、
林さんが喋る回のほうが
好きらしいんですよ。
糸井
二重構造ですね。
だから、林さんは聞き手も話し手も
やりやすい人だとも言えるし、
「本当はやりにくい人ですよ」とも言えて、
両方あるからおもしろいんだね。
そのへんの話をしてもしょうがないから、
番組ではしないわけだけど、
ひとりで暇なときに考えるのは
そういうことなんですよね。
写真
石井
そんなふうに、ひとりで考えていることを
いろんな方法で出してもらうみたいな
コンテンツはおもしろそうですね。
それこそ、糸井さんが考えてることを
出してもらうコンテンツは聞きたいです。
糸井
ドキュメンタリーじゃなくて
フィクションのほうが、
自己開示ができるときがあるんですよね。
本当は、創作物のなかでこそ
「自分」が出ちゃう。
MOTHERっていうゲームを好きでいてくれる
人が多いのは、あのゲームは自分のことが
わかるからだと思うんです。
石井
ああ、そうか。
糸井
とくに、人と喋ることはいいことですよね。
話しながら、変わるし。
石井
喋ると変わるっていうのはあります。
喋りながら自分で
「私ってこういう人間なんだ」と
気づきますもんね。
糸井
あと「ウケてない」ということも
発見できます。
石井
はははは。「あ、これ私だけが
おもしろい話だったんだ」って。
写真
糸井
となると、やっぱり
「おもしろい話を完成された状態で出す」
関西の文化は、
価値構造がしっかり固定されている、
どちらかというと
アメリカ的な文化だと思います。
三越の包み紙と松屋の包み紙は
どっちが価値があるかとか、
東大と京大はどっちが価値があるかとか、
なにがおもしろいかそうでないかとかね。
その点が、柳に風で話しながら価値が変化していく
関東の人たちにとっては、
ちょっとした違和感になるんだろうな。
だから、令和ロマンなんて、
一見関西っぽく見せてるけど、
まったく関東圏の人ですよ。
石井
はい、東京のお笑いですよね。
わざと関西風にしつつ。
糸井
あんなふうにねじくれたものは、
いまいちばん
おもしろいじゃないですか(笑)。
石井
分析して、構造を変えてやってるもの。
糸井
「これは習ってやったんですよね」
っていうのが見えるし、
「ほんとどうでもいい」と思ってる部分も
あるかもしれないし。
10年後の令和ロマンは見てみたいですね。
石井
どうなっていくのか、楽しみです。
糸井
そこはとても興味あります。
はい、というところで終わりますか。
石井
こんな感じで大丈夫ですか? 
糸井
すごく喋りました。
本のね、PRになったんじゃないでしょうか。
なってないか(笑)。
写真
石井
ぼくがまっすぐ本のPRをしに来てたら、
糸井さんは興味を失ってたと思います(笑)。
まったく本の内容の話にはならないつもりで
来ました。
糸井
PRに寄せても、
やれないことはないんですけど。
石井
それだと、おもしろくないですからね。
(終わります。
お読みいただき、ありがとうございました)
2026-10-28-WED
『「自分でやらない」ほうがうまくいく
信頼されている人だけが知っている
7つのルール』

(PHP研究所)
石井玄さんの最新刊です。
「たくさんの企画を楽しそうに進行している
石井さんに、仕事の仕方を教えてほしい」
という編集者さんの希望から生まれました。
石井さんが実践してきた働き方、考え方が
惜しみなく書かれていて、
多くの「働く人」にとって
いい意味でグサッとくるはず‥‥。

2026年9月29日、PHP研究所から発売されました。
本対談と合わせてお手に取ってみてください。