「喋る」は、みんなの 極上のぜいたく。 「喋る」は、みんなの 極上のぜいたく。
糸井重里は気づきました。
よかったイベント、おもしろかったラジオ、
楽しかった収録、そのそれぞれに
「また石井玄(ひかる)さんがいる」と! 

石井さんは、オールナイトニッポンの
チーフディレクターを務めたのち
「株式会社玄石」で独立。
現在、約20本の人気ポッドキャストを担当しています。

そんな石井さんと糸井が、石井さんの新刊
『「自分でやらない」ほうがうまくいく』をきっかけに
お話しすることになりました。
「話すこと・聞くこと」が仕事であり、
楽しみでもあるという共通点を持つふたりです。
始まりも終わりもテーマも決めない対談でしたが、
だからこそ、おのずと
「会話」のおもしろさが浮き彫りになりました。
【第8回】こぼれる「自分」を拾ってみる
糸井
ぼくが石井さんに
「ポッドキャストやりたいんです」って
相談したら、なんて答えてくれますか? 
石井
糸井さんですか。糸井さんがいろんな人の話を
聞いたコンテンツはたくさんあるから、
糸井さんに話を聞きたい人が集まって、
糸井さんが答える側になるのが
おもしろそうですね。
写真
糸井
なるほどなぁ。
でも、俺はまだ、俺が知りたいことのほうに
興味があるかもしれないな。
自分が知りたいことを知って、
自分のことを知りたい。
「期せずしてこぼれる自分」っていうのを、
いま、狙ってるんですよね。
石井
期せずして。
糸井
このあいだ、試しに一回
「ひとり読書会」をやってみたんです。
有名だけど読んだことがなかった本を
ひとりで読みながら感想を言うという。
読むのは志賀直哉の
『小僧の神様』にしました。
えらい疲れたし、読むのは下手だし、
感想を言っていくと自分の教養のなさも
あらわになるし、恐ろしかったですよ。
考察なんてする時間はありませんから、
あとから「ここにもうすでに伏線が
書いてあったんだね」とびっくりしたり。
つまり自分の脳内を出すんです。
するといい意味で、バカがバレるわけですよ。
写真
石井
おもしろいなぁ。
たしかに、本を読んでるあいだは
いろんなことを考えるけど、
口に出さないし、忘れていきますね。
糸井
こんなふうに、
直接的に自分のことを語るんじゃないのに
自分が出ちゃうっていうことが、
いまはやってみたいです。
だからぼくは、ポッドキャストがいいなと
思ってるときは、
ポッドキャストじゃないことを考えます。
石井
ポッドキャストにも流行り廃りがあって、
知識を出していく番組が流行っていると、
「じゃあなんの意味もないものつくりたいな」
と思うんです。
勉強をするために
みんながポッドキャストを聞くなら、
勉強にならないものをつくりたいと。
糸井
それはわかるよ、とても。
企画や話の種は本屋さんに全部あって、
どれを取ってきたってネタにはなります。
だから、どんな「方法」で
おしゃべりをするかが、
いちばんおもしろいんでしょうね。
きょうも、いまはこうして向かい合って
ラジオブースにいるけど、
どこかのベンチで喋ったら
話の内容は絶対に変わるじゃないですか。
石井
変わりますね。
糸井
これから、そういうことが
おもしろくなるんじゃないかな。
石井
歩きながら録ってみるとか。
糸井
それもありますね。
ぼく、若いころの橋本治と、
小田急のロマンスカーに隣合わせに座って
対談をするっていう実験を
したことがあるんです。
そしたら、おもしろかったし、
話す内容もいつもと違ったんですけど、
黙ってる時間がいくらあっても
気にしなくなっちゃったんですよ。
石井
ははははは。
景色を見ていたら、
間が持っちゃいますもんね。
写真
糸井
そう。仕事としてはダメだったね。
でも、横並びの対談はやっぱりいいです。
石井
「録り方を変える」というのは、
まさにいまの考え方だと思います。
いま、ポッドキャストに限らず、コンテンツは
いろんなところにあふれてるので、
みんな結果を考えてからつくるのは
もうやめて、
つくり方を考えるほうに向かっていて。
「この人と別のジャンルでやってみよう」
あるいは「漫画のつくり方を
映画でやってみよう」とか。
「なにをつくるか」より「どうつくるか」を
発明していかないといけないんですよね。
糸井
シチュエーションをどうつくるかという
ことですね。
本当は、とっくにその時代に
なってたんでしょうね。
写真
石井
自己開示をするコンテンツをつくると
なったときに「本を読んでみる」という、
一見遠いところから始めるつくり方を
発明されたのが糸井さんらしいです。
頑張ってこの発想をしていかないといけない
ところまで、普通のつくり方は
みんなやり尽くしちゃってる感じは
ありますね。
糸井
「不意を突かれたときにどんな人であるか」
っていうのが、
その人の本質だと思うんですよね。
考え抜いた答えを出しても、
それは嘘かもしれないわけで。
彫刻をこねるにしても削るにしても、
結果は見えてないけど、
プロセスがおもしろいじゃないですか。
石井
そうですね。
ぼくも最近は、聞き手として番組に出て
ゲストとお話しするとき、
事前にゲストの情報を調べなくなってきて。
始まる5分前ぐらいに台本や資料を見て、
あとはもう、始まってから本人に聞きます。
準備して「これ聞こう」と思っても、
つまんないってことはもちろんあるし、
相手も質問用に
用意していた答え方をするので、
本音が出てきにくいと気づいたんです。
写真
糸井
とっさに出るものって、
やっぱり「前々から、本心で思ってたこと」
だよね。
ただ、なんだろう、近しい人どうしで
「とっさの答え」ばっかり言ってると、
飽きるかもな。
石井
ははははは。たしかに。
何度も話す人どうしだと、
連作にしていったほうがいい気もしますね。
糸井
ちょっと設計図がいるのかもしれないね。
ジャズを演奏する人たちだって、
「このアドリブはいつもウケるんだよ」
っていうアドリブが、きっとあるでしょう。
石井
「それはアドリブなのか」という(笑)。
ネタですからね、お笑いで言うと。
糸井
うん。いや、だいぶ喋ってしまいましたが。
きょう話してみて、
石井さんからなにか、ありますか。
石井
ぼくは「喋りやすい」と
よく言われるんですけど、
自分では、なぜそう思ってもらえるのか
わからなかったんです。
「喋りやすい人」の特徴って
どこにあるんだろうと。
でも、なんだか上から言うようで恐縮ですが、
糸井さんは喋りやすかったんです。
糸井
ありがとうございます(笑)。
「キャッチャーミットの音がする」
というのは、喋りやすい人の特徴として
ありますよね。
きちんと反応が返ってくる。
それは、球を投げた人に対する敬意です。
なにかもらうにしても、
「ありがとうございます」って言うのが、
もらう秘訣じゃないですか。
その「ありがとうございます」が、
石井さんは‥‥
石井
たぶん、やれてるんでしょうね。
糸井
石井さんのその姿勢が、
「自分でやらない」「人を頼る」
というところに表れていると思うんです。
写真
石井
そうか、言われてみれば。
糸井
あとは、石井さんって、
つまんないことを望んでなさそうなんですよ。
欲しいものがあまり見えないんです。
石井
ないかもしれないです。
強いて言えば、
「なかったものが見たい」
という気持ちはあります。
糸井
それは、ぼくもです。
こんなぼくらでも、
疑われることはあると思うんですよ。
「石井はなに考えてるかわからないぞ」
って(笑)。
石井
ああ、それは言われたことあります。
糸井
あるでしょう、きっと。
ぼくもあるわけです。
ぼくらって、裸商売やってるじゃないですか。
石井
そうですね。腹を見せて。
糸井
でもパンツは履いてる、
みたいなところがあって。
石井
ははは、わかります。
糸井
擦り傷は多いけど、
パンツ履いてればだいたいなんとかなるからね。
石井
擦り傷は治るから、あまり気にしないですよ。
(明日に続きます)
2026-10-27-TUE
『「自分でやらない」ほうがうまくいく
信頼されている人だけが知っている
7つのルール』

(PHP研究所)
石井玄さんの最新刊です。
「たくさんの企画を楽しそうに進行している
石井さんに、仕事の仕方を教えてほしい」
という編集者さんの希望から生まれました。
石井さんが実践してきた働き方、考え方が
惜しみなく書かれていて、
多くの「働く人」にとって
いい意味でグサッとくるはず‥‥。

2026年9月29日、PHP研究所から発売されました。
本対談と合わせてお手に取ってみてください。