「喋る」は、みんなの 極上のぜいたく。 「喋る」は、みんなの 極上のぜいたく。
糸井重里は気づきました。
よかったイベント、おもしろかったラジオ、
楽しかった収録、そのそれぞれに
「また石井玄(ひかる)さんがいる」と! 

石井さんは、オールナイトニッポンの
チーフディレクターを務めたのち
「株式会社玄石」で独立。
現在、約20本の人気ポッドキャストを担当しています。

そんな石井さんと糸井が、石井さんの新刊
『「自分でやらない」ほうがうまくいく』をきっかけに
お話しすることになりました。
「話すこと・聞くこと」が仕事であり、
楽しみでもあるという共通点を持つふたりです。
始まりも終わりもテーマも決めない対談でしたが、
だからこそ、おのずと
「会話」のおもしろさが浮き彫りになりました。
【第7回】人は「喋る」がなぜか好き
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糸井
いま、ポッドキャストから
出身地のラジオに戻ってフル回転したら
どうなるんだろうみたいなことは、
考えたりしますか? 
石井
ポッドキャストのほうが自由なので、
ラジオのように決まった枠があるところで、
ポッドキャストのような自由なものの
つくり方を実践したらどうなるんだろう、
ということには興味がありますね。
糸井
「こんな新しいことをしたら
ラジオの可能性が広がるんじゃないか」
といったことは
ずっと言われ続けてきました。
だけど、ラジオの
「SNSやテレビに比べて届く人が少ない」
というところがむしろ評価されてきたように、
「会って話す」だとか
「決まった時間のなかでやる」だとか、
ラジオが辛抱してた「制限」の部分で、
いま可能性がひらかれている気がします。
そこがまたちょっと
「いまっぽい」と思うんです。
いま、人々の話題の中心はAIじゃないですか。
ぼくの頭のなかも、
8割は「AIとどう付き合うか」
「AIじゃない部分はなにか?」
っていうことを考えているんですよ。
そこで思うのは「どこに足をつけて
辛抱するか」というところに、
AIにできない部分があるということなんです。
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石井
「人と直接会って喋る」というのは、
現状では、AIにはない部分ですね。
人間がこれを楽しいと感じる限り、
直接会って話すという行為は
なくならないだろうなと思います。
人って、人の話を聞きたいし、喋りたいから。
糸井
AIに相談はしても、
「お前の話を聞かせてくれ」と頼むことは
そうそうないですからね。
きょう帰ったら、AIに
「お前の自伝を語ってくれ」って
言ってみようかな。
たぶん「あなたと
こんなことを話しました」とか、
「こんなことが良かったです」とか、
それなりの思い出を語ってくれると思う。
石井
でも‥‥それは
「こっちも知ってること」ですよね。
糸井
そうだね、知ってる。ははははは。
石井
ぼくらが人から聞きたいのって、
「知らない部分」なんだと思います。
自分がいないとき、
あるいは出会う前の相手に、
人間ってもしかしたら価値を
感じているのかもしれませんね。
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糸井
そういうことって、いままでは
商品じゃなかったんですよね。
石井
ああ、たしかにそうですね。
普通にあるものでしたから。
糸井
AIがやらないことを探していくと、
商品じゃないことばっかりなんですよ。
石井
それらが、今後は
商品になってくるのかもしれないですね。
糸井
おそらく、なるんです。
商品になるものとそうでなかったものが
混ざっていくんですね。
そのときに「なにが楽しいか」って、
また問いかけられるわけで。
いま、その問いかけを受けて、
みんなが改めて
「喋るというのはおもしろいね」
と感じているんだと思います。
昔から、飲みに行くといえば
「喋りに行く」ということだったし。
となると、映画のなかにしか
出てこないかもしれないけど、
カウンターでひとりで飲んでる男って、
あれはなにしてるんですか?  
石井
マスターと喋ってるんじゃないですかね。
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糸井
美空ひばりの『悲しい酒』が
「ひとり酒場で飲む酒は 別れ涙の 味がする」
と歌っているっていうことは、
過去を思い出してるのかもね。
石井
「いろいろあったな」と
浸ってるのかもしれないです。
糸井
それは「語り」だな、思えば。
石井
たしかに。ひとりでも、喋ってるんだな。
糸井
美空ひばりの歌が正しければね。
よく、男どうしが長い時間喋ってて、
夜遅くに帰ってきたりすると、かみさんに
「よくそんなに喋ることがあるね」
と言われる、
みたいなことがあるじゃないですか。
石井
あります。
糸井
でも、よく考えたら、
かみさんのほうも同じことを
やってるんですよね。
石井
はい、はい。
糸井
「お友だちと4時間喋った、ああ楽しかった」
とか言いながら、帰ってくるわけですよ。
結局、誰にとっても、
いちばん極上のぜいたくは
「喋る」ことなんだと思います。
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石井
友人がキューバに旅行に行ったとき、
夕方になると海に面した道に
町の人々がみんなゾロゾロ出てきて
喋っていたんですって。
糸井
いいっ。
石井
その人たちも、しょっちゅう遠くに行ったり、
新しい経験をしたりするわけでは
ないだろうから、
毎日、なにをそんなに喋るんだろうと
思いますけど、きっと喋りたいことも、
聞きたいこともたくさんあるんでしょうね。
糸井
それは「俺のほうがこのことについて
いっぱい知ってるよ」と
情報をたくさん仕入れて
交換し合う会話よりも、詩に近いものだね。
情報の自慢合戦って、
言ってみればうんちくとか、考察です。
でも、それは自分の物語ではない。
石井
ああ、そうですね。
糸井
意味がちゃんと通っていて、
情報量がたくさんあれば自慢になるような
ところがあるけど、
毎日海岸に座って話している人にとっての
「楽しかった会話」は、
昨日と同じ「詩」だと思うんです。
石井
人間は、この「喋る」っていうことを
なぜか好きだから、
進化してきたのかもしれないですね。
糸井
犬どうしが遊んでるのも、
喋りと言えるかもしれない。
声帯の筋肉じゃなくて、
全身を使って絡み合って。
お猿も、とくに子猿のときには
ボキャブラリーが少ないから、
語彙が少ない遊びをしているんです。
それは人間の遊びも同じなんでしょうかね。
このことは、自分の遊びのためにも、
みんなのためにも、もうちょっと考えます。
石井
「話す」と遊びは近いと思います。
糸井さんがこれだけ長いあいだ
ほぼ日で人と会って話してこられた
ということは、
それが楽しいということですもんね。
ぼくはもう、いろんな人に
とにかくポッドキャストを勧めてるんですよ。
「やるとすごく人生が楽しくなるよ」って。
ポッドキャストはお金を稼ぐのには
向いてないかもしれないですけど、
自分のことをちょっとでも話して、
聞いてくれる人がひとりでもいたら、
すごく楽しくて満たされます。
だって、わざわざカフェに行って
ふたりで喋るぐらいなんだから、
リスナーがひとりいたらすごいことですよ。
SNSで、フォロワーが数人しかいなくても
発信するのと同じで、
全然、人数は関係ないですから、
どんどん喋っていったほうが
いいんじゃないかなと思うんです。
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(明日に続きます)
2026-10-26-MON
『「自分でやらない」ほうがうまくいく
信頼されている人だけが知っている
7つのルール』

(PHP研究所)
石井玄さんの最新刊です。
「たくさんの企画を楽しそうに進行している
石井さんに、仕事の仕方を教えてほしい」
という編集者さんの希望から生まれました。
石井さんが実践してきた働き方、考え方が
惜しみなく書かれていて、
多くの「働く人」にとって
いい意味でグサッとくるはず‥‥。

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本対談と合わせてお手に取ってみてください。