糸井重里は気づきました。
よかったイベント、おもしろかったラジオ、
楽しかった収録、そのそれぞれに
「また石井玄(ひかる)さんがいる」と!
石井さんは、オールナイトニッポンの
チーフディレクターを務めたのち
「株式会社玄石」で独立。
現在、約20本の人気ポッドキャストを担当しています。
そんな石井さんと糸井が、石井さんの新刊
『「自分でやらない」ほうがうまくいく』をきっかけに
お話しすることになりました。
「話すこと・聞くこと」が仕事であり、
楽しみでもあるという共通点を持つふたりです。
始まりも終わりもテーマも決めない対談でしたが、
だからこそ、おのずと
「会話」のおもしろさが浮き彫りになりました。
石井玄さんのプロフィール
糸井
「自分でやらない」と
近いようで違う言葉として、
「裏方に徹する」ということが、
美意識として語られるじゃないですか。
それについてはどう思います?
石井
ぼくは「裏方に徹する人は
責任を取らないようにしてる」
と思ってる節があります。
糸井
言いますねえ(笑)。
石井
裏方に徹する部分はあっていいと
思うんですけど、なにかあったときに、
「いや、裏方なんで」と
言えちゃうじゃないですか。
ぼくも、ちょっと
表に出たりするようになってから、
演者は、スタッフが責任の一部を
担ってくれるだけで、
すごく楽になるんだなとわかったんです。
失敗しようが成功しようが、
結局はコンテンツって「出てる人の責任」に
なってしまうから、
「その半分はスタッフが持つので
安心してください」と伝えることで、
演者の精神を安定させることが
必要になってきたと思います。
とくに、このSNS時代には、
コンテンツへの批判は演者に
一気に向かいますから。
糸井
ああ、そうか。
みんな、演者と裏方を分けて
考えすぎてたのかもしれないですね。
思えば、ぼくもずっと裏方なんですよ。
石井
そういえばそうですね。
糸井
キャストとスタッフで分けると
スタッフなんです。
それがいつの間にか、
出役になることも増えて、
いまの自分になっちゃったんだけど。
「本当は裏方なんだよね」という意識は
取れてないですね。
演者にはなれないんです。
石井
ぼくも、なれないです。
糸井
「演者になれない」ということについては、
「ちゃんとなれたほうがいいんだろうな」と
何度も思ったんですよ。
でも、いままでなれなかったっていうことは、
やっぱり向いてないんだと思います。
石井
やっぱり、演者やキャスト側にいる方は、
なにかを持ってますよね。
糸井
持ってる。
俳優と監督を両方できる人とかね。
高田文夫さんや景山民夫さん、
永六輔さんのような、
放送作家という肩書のまま
表にも出ていた方々は、
みんな「スタッフ」の顔で出てましたよね。
石井
いまだと、佐久間(宣行)さんがそうですね。
糸井
佐久間さんね。佐久間さんとの接点は
けっこうあるんですか?
石井
佐久間さんが
オールナイトニッポンを始めたときの
立ち上げのディレクターを
担当させてもらったので、
佐久間さんが有名になっていくところを
一緒に見ていました。
糸井
そうなんですね。
佐久間さんも、スタッフだけど、
スタッフなりのキャストじゃないですか。
石井
佐久間さんは、明らかに才能がありますよね。
糸井
ぼくもそう思う。
石井
どのあたりが才能なのかは
分析しきれてないですけど、
「佐久間さんが喋るとみんなが笑う」
というふうになっています。
糸井
出演されているテレビ番組を見ていると、
そんなに言葉数が多いわけではないのに、
すーっと佐久間さんの話に
気持ちを持っていかれるんです。
石井
ご本人に聞いたところによると、
長年テレビの編集をされているから、
「編集いらずの話ができる」んだそうです。
「テレビで使える部分」を言っているから、
聞いている側にもスパンと話が入ってくる。
糸井
言われてみれば、本当だ。
石井
もとから編集されてるんです、
佐久間さんって。
いろんな番組に出ても、
「編集済みのものを納品してる」
という感覚らしくて。
ほかの人にはできない技術だなと思います。
糸井
やっぱり、稀有な人ですね。
石井さんが佐久間さんから学んだことは、
たとえばなんですか?
石井
佐久間さんから‥‥
「好奇心に逆らわないな、この人は」
と思いましたね。
まず、オールナイトニッポンからのオファーを
断らないし、一万人規模の横浜アリーナで
イベントをやりましょうと言われても
断らない。
そのイベントで「サンボマスターと一緒に
歌ってください」と頼んでみたら、
それにも「やりたい」と言ってくれて。
これは大事だなと思いました。
演者になるときは、基本的に
スタッフの言うことは絶対聞くという
ルールにしているらしいんです。
なにを言われてもやると。
だから、ぼくも演者として出るときは
そうしようと思って、
極力スタッフの希望を聞くようにしています。
照れてやらないより、自分から
おもしろいかもと思って出ていくほうが
楽しそうにも見えたので。
佐久間さんは裏方が外に出ることの
パイオニアなので、そのあたりのことは
とても勉強になります。
糸井
テレビが育てたテレビの人ですよね。
昔だと、まず雑誌や脚本を経験して
テレビ業界に入る人が多かったですが、
佐久間さんは最初からテレビですから。
石井
まさにテレビ時代の人です。
いまは、ネット出身の人たちもいっぱい
世に出てきています。
糸井
「なにの出身か」は、人に強く影響しますね。
そこから出てきた人は
そこのなにかを持っている。
たとえばビートたけしさんは、
フランス座という劇場にいたことが、
彼の「喜劇とはこういうものだ」という考えを
形づくっている気がします。
石井
それで言うと、
ぼくはラジオ出身なんでしょうね。
糸井
本当にそうでしょうね。
ラジオが、ほかの業界の人が自慢するような
大きい数とは関係ないってことも
わかってるし、
同時に楽しいのもわかってるから、
「ラジオのやりようはまだある」って
いつも思ってる。
それはぼくも、まったく同じなんです。
石井
そうなんですか。
ぼく、糸井さんと同じだったんですか。
糸井
同じじゃないかなぁ。
ぼくはきっと、広告で同じことを
思ってたんです。
石井さんとぼくは、イシイとイトイで、
真ん中の「シ」と「ト」が違うけど(笑)、
あとはなにが似ててなにが違うんだろうって
考えていたんです。
ぼくも「会話は『家庭料理』だから
商品にならなくていいし、
焦げててもいい」と言いつつ、
やっぱりおもしろい時間にしたいし、
聞いている人が嫌な気持ちにならないか
考えるし、「あそこがおもしろかった」
と言われたら「だろ?!」って
言いたくなるんですよ。
商品化するしないじゃなくて、
満足するかどうかの問題だよね。
石井
そうですね。だからぼくは割と、
どんな人が来ても、
それなりに楽しい気持ちになって
帰ってもらうための動きをします。
糸井
ある種、客商売というか。
ラジオブースで話し手の話を聞く人は、
みんなそれですよね。
石井
そうです、そうです。
糸井
でも、ラジオをたくさんやっても、
石井さんみたいに「聞き手のプロ」に
ならない人もいるじゃないですか。
その人たちはどこに行くんだろう。
石井
ぼくがちょっと
ほかの人と違うところがあるとしたら、
さっき「客商売」とは言いましたけど、
本心で笑ってるし、
本心で楽しいと思ってるんですよ。
話を楽しめる幅が、
もしかしたら人より広いのかもしれないです。
でも、つまらないときは本当に
つまらないって顔をします。
糸井
そこはけっこう重要ですよね。
「100万円あげるから、
つまらなくてもおもしろがってるふりして」
と言われて、そのとおりにしたら、
100万円以上の大損害があるわけです。
「本当はおもしろがってない」っていうのは
バレちゃうから、正直にやったほうが
いいんじゃないかな。
とはいえ、本当に怖い顔した人が
正直にやりすぎると怖いけどね。
石井
はははは。
(明日に続きます)
2026-10-25-SUN
『「自分でやらない」ほうがうまくいく
信頼されている人だけが知っている
7つのルール』
(PHP研究所)
石井玄さんの最新刊です。
「たくさんの企画を楽しそうに進行している
石井さんに、仕事の仕方を教えてほしい」
という編集者さんの希望から生まれました。
石井さんが実践してきた働き方、考え方が
惜しみなく書かれていて、
多くの「働く人」にとって
いい意味でグサッとくるはず‥‥。
2026年9月29日、PHP研究所から発売されました。
本対談と合わせてお手に取ってみてください。
くわしくはこちら
(C) HOBONICHI