「喋る」は、みんなの 極上のぜいたく。 「喋る」は、みんなの 極上のぜいたく。
糸井重里は気づきました。
よかったイベント、おもしろかったラジオ、
楽しかった収録、そのそれぞれに
「また石井玄(ひかる)さんがいる」と! 

石井さんは、オールナイトニッポンの
チーフディレクターを務めたのち
「株式会社玄石」で独立。
現在、約20本の人気ポッドキャストを担当しています。

そんな石井さんと糸井が、石井さんの新刊
『「自分でやらない」ほうがうまくいく』をきっかけに
お話しすることになりました。
「話すこと・聞くこと」が仕事であり、
楽しみでもあるという共通点を持つふたりです。
始まりも終わりもテーマも決めない対談でしたが、
だからこそ、おのずと
「会話」のおもしろさが浮き彫りになりました。
【第5回】聞いてもらう時間の尊さ
写真
石井
そういえば、糸井さんにも出ていただいた
林士平さんのポッドキャスト番組
「林士平のイナズマフラッシュ」は、
最初は予算がすごくあったんです。
ラジオには基本的にはお金がないから、
「お金かけたらどうなるんだろう」という
興味からスタートさせた部分があって。
音楽を牛尾憲輔さんに頼んだり、
ナレーションを津田健次郎さんに
頼んでみたり、
ものすごく立派なHPをつくったり、
アートワークはSPY×FAMILYの
遠藤達哉先生にお願いしたり‥‥
そんなぜいたくをして気づいたんですけど、
どれだけお金をかけても、
番組のおもしろさという点には
あまり関係がないんですよ(笑)。
まったくお金をかけずに、
自分たちでつくったデザインで、
音楽もフリー音源でも、
番組は話のおもしろさで決まるので。
なので、意味はないけど、
楽しくはありました。
家庭料理を上限マックスの材料でつくる
遊びに近かったです。
糸井
それは「家のなかで豚の丸焼きやったって
いいわけじゃない」ってことだね。
石井
「ここまでやる?」みたいな。
しかも、糸井さんも出てくださったので
ご存知だと思いますが、
あの番組はゲストごとに毎回
4時間喋るんですよ。
糸井
え、ほんと? 
石井
1回の収録で2時間喋って、
その後1ヶ月空いて、もう2時間喋るんです。
糸井
2度行ったね、そういえば。
おれはそんなに大変なことをしたのか。
写真
石井
そうなんです(笑)。
林さんと「普通にゲストとして
ラジオに出るときって、
だいたい尺が30分くらいで、
自己紹介して1個宣伝して終わりだけど、
もっとおもしろくしたいよね」と話していて、
「じゃあ2時間ぐらいがっつりゲストの
話を聞いてみましょう」
という案が出たんです。
そうしたら林さんが
「もう2時間聞けないですかね」
と言い出して。
糸井
すごいね。
石井
これは、ぼくのような
ラジオ屋にはない発想でした。
「そんなに話すことあるかな?」と
思ってしまって。
でも、実際にやってみてわかったのは、
期間を置いたら、林さんとゲストの方が
離れている期間でお互いのことを考える
ということでした。
2時間話したあと、日々のなかで、
「糸井さんいまなにやってるんだろう」とか、
「林さんなにやってるんだろう」って。
そして次の2時間では、
その期間に考えたことを持ち寄って話せる。
だから、表面的な「ガワ」の話があっても、
それは最初の2時間で終わって、
次はもう友達どうしのような会話が
聞けるんです。
写真
糸井
そうですね。
ぼくはやっぱり、
林さんを好きになりましたもん。
会った時間の総計はそんなにないけど、
「この人がやってることを見ていたいな」
「自分のやってることを
わかってもらいたいな」と思います。
石井さんがお相手をしてる方々は、
みんなそんな感じの方ですね。
石井
たしかに。
イヤな人がいないんですよ。
糸井
おお。
石井
だから、仕事にストレスがなくて。
それぞれの人との関係性は
微妙に違うんですけど、
毎日「きょうはこの人と会うのか。
よかったよかった」という日を
繰り返しているんです。
糸井
最高じゃないですか。
そこに美味しいコーヒーでもあったら、もう。
石井
そうなんですよ。
なにもつらいことがないです。
話し手の方も、ぼく自身も、
収録にストレスを感じないように
つくっているんです。
つまり、収録がおっくうになったら、
番組は終わるので。
糸井
時間が取れなくなったり、
「もうやめましょう」と終わったりした
番組はないんですか。
石井
いまのところはないですね。
林さんも、昨年「少し仕事をセーブして、
編集の仕事に専念したいと思います」
とおっしゃっていたんですが、
ポッドキャストは残されたんですよ。
ぼくは、ここに
ポッドキャストの良さが表れていると
思っていて。
「集まってお話をする」ということは、
人間にとってすごく
ストレス発散になるんだなと。
写真
糸井
ああ、そうか。
そういえば、ぼくは毎週水曜日に、
ほぼ日の全社員の前でひとりで喋るんです。
初期のころからずっとやっているので、
もう20年以上続いています。
ほぼ日の仕事のなかで
いちばん面倒な仕事でもあるんだけど、
「これは俺のためだな」と思うんですよ。
聞いてくれる人がいるってこと自体が、
自分の存在意義になるんです。
石井
じつは、そんなに人って、人生のなかで、
話を聞いてもらえないんですよね。
だいたい、家族が揉めるのって
「私の話を聞いてくれない」が原因ですから。
ってことは、話を聞いてもらうということは、
とても大事なことなんだと思います。
誰かが「うんうん」と目の前でうなずいて
聞いてくれることはとても尊いことだと、
ぼくはポッドキャストを通じて
気づいたんです。
話を聞いてもらってちょっと救われる、
カウンセリングというものも
あるくらいですし。
糸井
「聞いてもらうことの大事さ」は、
前々から思ってたことではあるけど、
改めてそうだね。
石井
「面倒くさいな」という気持ちはあるかも
しれないですけど、話し終わったあとは
すっきりしてるはずです。
糸井
うん、腹減ってるね(笑)。
同時に、ぼくは「人の話を聞く」っていうのも
けっこうしていて‥‥
それは、相手を助けたいんだね。
「助けたい」と言うと変だけど、
「聞くよ」って。
写真
石井
そうだと思います。
相手に話して、相手の話を聞くのは、
お互いさまです。
糸井
お金の使い合いみたいなことですね。
石井
そうなんですよ。ご飯を食べに行くにしても、
美味しいものを食べる以上に、
喋りに行ってるわけじゃないですか。
糸井
そうです、そうです。
石井
ただ、何人かで話していると、
「自分が聞いてるターン」があります。
でも、ポッドキャストはそれが
少ないんですよ。
とくにひとりで喋っている方は、
全部自分のターンです。
こんな場面って、普通、人生にないです。
しかも、必ずしも芸人さんのように
おもしろい話でなくても、ポッドキャストでは
「聞ける話」になったりします。
だから話していて楽しいと思いますし、
さらに聞き手のリアクションが大きければ、
すっごく楽しいんです。
ぼくが関わっているポッドキャストの
話し手のみなさんは
「なんで石井さん相手だと
喋りやすいんだろう」と
言ってくださるんですが、
それはぼくのリアクションが
大きいからだと思います。
岸田奈美さんとかは、
それを愛だと思うわけですよ。
「こんなにリアクションして聞いてくれる
ということは、私のこと好きなんですよね」
って(笑)。
仕事だからやっているんですけどね。
糸井
石井さんはキャッチャーですもんね。
石井
「どこに投げても取りますよ」っていう。
糸井
ワンバウンドでも取ってくれるし。
石井
もし後ろに逸れてしまっても
「ぼくの取り方が良くなかったです」と
走って戻ってくる。
なんていいキャッチャーなんだろう、
サインも出すし(笑)。
写真
糸井
それはやっぱり、愛でもあるわけですよ。
石井
まあ、愛情にもなっていきますね。
糸井
仕事だからやるのか、愛があるからなのか、
どちらかに決めなくてもいいんですよね。
(明日に続きます)
2026-10-24-SAT
『「自分でやらない」ほうがうまくいく
信頼されている人だけが知っている
7つのルール』

(PHP研究所)
石井玄さんの最新刊です。
「たくさんの企画を楽しそうに進行している
石井さんに、仕事の仕方を教えてほしい」
という編集者さんの希望から生まれました。
石井さんが実践してきた働き方、考え方が
惜しみなく書かれていて、
多くの「働く人」にとって
いい意味でグサッとくるはず‥‥。

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