糸井重里は気づきました。
よかったイベント、おもしろかったラジオ、
楽しかった収録、そのそれぞれに
「また石井玄(ひかる)さんがいる」と!
石井さんは、オールナイトニッポンの
チーフディレクターを務めたのち
「株式会社玄石」で独立。
現在、約20本の人気ポッドキャストを担当しています。
そんな石井さんと糸井が、石井さんの新刊
『「自分でやらない」ほうがうまくいく』をきっかけに
お話しすることになりました。
「話すこと・聞くこと」が仕事であり、
楽しみでもあるという共通点を持つふたりです。
始まりも終わりもテーマも決めない対談でしたが、
だからこそ、おのずと
「会話」のおもしろさが浮き彫りになりました。
石井玄さんのプロフィール
糸井
令和ロマンの公演以外にも、
石井さんがいる場所に、
ぼくはどうも何回か
行っているみたいなんです。
石井
たまたまなんですけどね。
糸井
あの、どんだけ仕事してるんですか?(笑)
石井
ちょうどきのう、人から
「石井さんはむやみに仕事を受けてますよね」
と言われて、いまポッドキャスト
何本やってるんだっけと数えてみたんです。
レギュラーで動いてる番組が18本ありました。
糸井
はははは。すごいな。
石井
もうすぐ始まるものが2本あって、
企画中で年内に始まるものが4本あるから、
それらを含めたら24本でした。
24本やってるってことは、
少なくとも24人の人と会ってるという
ことなんですよね。
その24人の人たちが、それぞれの世界で
なにかをしている人たちだから、
彼らに会うことが、
別の仕事にもつながっていくんです。
糸井
そんな多くの仕事を「なんでできるのか」が、
石井さんの今度の本のテーマですよね、
おそらくね。
答えは「自分のことじゃないから」っていう。
これ、おもしろいです。
「自分のことじゃないから」って人は、
いままで本出してくれなかったから。
石井
そうですよね。
自分のことを書くのが本ですからね。
糸井
石井さんが
「自分でやらないほうがうまくいく」
と思ったのは、
そんなに昔からではないでしょ。
石井
はい。昔は、自分でやってました。
糸井
自分でやる要素って、じつは多いんだけど、
それを「自分でやらないほうがうまくいく」
っていうのは、なんかいいですよね。
いまっぽいというか。
石井
このタイトルは、
「ほう」に意味があるなと思っているんです。
「自分でやらないとうまくいく」ではなく、
「やらないほうがうまくいく」。
別に自分でやってもいいし、
ぼくも自分でやってることは
たくさんあるんですけど、
そうじゃないほうがなんだか
うまくいってるんですよ、
ということを書きたかったんです。
全部自分でやるんじゃなくて、
いろんな人と一緒につくったほうが
おもしろくなってるし、みんな楽しそうだし、
こっちが正解なんじゃないの? という気が
してきたんですよね。
糸井
石井さんは、20人以上の人たちに、
それぞれ違う種類のアシストを
してるわけですよね。
どうしてできるんだろう。
石井
いきなりできたわけではなくて、
いろんなタイプの方と仕事をしていくと、
いろんなキャラクターに
なれるようになりました。
ある意味、自分がその人に合わせたキャラに
なっていくというか。
ちょっと年上の人が相手だったら
後輩っぽくなるし、
年下の人となると兄さんらしくなるし。
つまり「その人が喋りやすい人になろう」
と思っているんです。
糸井
ああー。
石井
というのも、ぼくは「喋ってもらう」ことが
仕事なので、相手にとっていちばん喋りやすい
キャラクターはなんだろうと考えるように
なったんです。
最初は
「なんでうまく話してもらえないんだろう、
心を開いてもらえないんだろう」と
思っていました。
ラジオやポッドキャストで大事なのは、
打ち合わせなどの時点で
心を開いてもらうことなんです。
目の前のスタッフに心を開示できない状態で、
いきなり多くの人に向けて
開示できるわけはないので。
だから、パーソナリティの気持ちを硬くせず、
柔らかくしていくために、
それぞれの相手に対して
あの手この手を試しました。
「この人とはしっかり向き合って
喋ったほうがいい」
「この人は、本番中にあまり
ぼくから話す必要はないな」とか、
そういったことをひとりひとりについて
学習していって。
糸井
それが、3人、5人じゃないですからね。
石井
20人以上になりましたね。
糸井
なかにはきっと、
話すのが難しいパーソナリティも
いますよね。
石井
ポッドキャストは、ラジオと違って
スポンサーさんがいない番組もあるので、
「このパーソナリティにやってほしい」という
人がいたり、パーソナリティ自身が
「やりたい」と思っていたりする場合は、
すごく喋りがうまくなくても
そのままやってもらっています。
「品質管理をしない」というか。
糸井
それはいいセリフだね。
最近、ジャイアンツの坂本勇人選手が、
「昔だったら結果を出したい
という気持ちがものすごくあったけど、
いまはまず前に飛ばせばいいと思ってる」と
言っていたのと同じものを感じます。
石井
まずはマイクの前で30分喋ってみましょう、
ということですね。
結局、ぼくらが
「こうやって喋ったほうがいい、
ああやって喋ったほうがいい」と指示しても、
実際に喋らないと、本人の喋る筋肉は
つかないと思っていて。
なので、まずは30分話してもらって、
慣れていない人の場合はかなりぼくが喋り、
もう少し慣れている人にはアシストのように
合いの手を打ちます。
こうやって段階をつけて、
徐々にぼくが喋る量を減らしていくという
作業をしています。
ラジオは基本的に
「すごく喋れる人」がやるものなので、
ポッドキャストを始めて、
「喋るのが得意なわけではない人」が喋る
番組をするのは
ラジオとは全然違うんだと発見がありました。
なので、パーソナリティに
どう喋ってもらうかは、
ぼくにとっても修行でした。
糸井
「喋れない人」より、
「ちゃんとしてるんだけど、
用意したことを言っているだけの人」と
喋るのは難しいですよね。
「あんた、つまらない人だったのか?!」
と思っちゃう(笑)。
対談をするにしても、
一緒に見たことのないものを探しに行く
遊びをしたいわけです。
「一緒に探しましょうよ」っていうのが
会話じゃないですか。
石井
ですね。用意した台本だけでは、
ポッドキャストをやる意味がないです。
自分の言葉を伝えるためにやるものなので。
台本をしっかりつくって読む
ポッドキャストをやられている
パーソナリティの方もいますが、
その場合「ぼく」、
石井玄は必要ないんですよね。
糸井
あ、そうだね。
石井
そうじゃなくて「自分の力で喋りたいけど、
どうやっていいかわからない」という人が
ぼくのところに来るんです。
糸井
必ずそのこんがらがった糸はほぐれて、
喋れるようになるもんだよ、という自信が
石井さんにはありますよね。きっと。
石井
そうですね。
けっこう難易度の高い人もいますけど、
でも「喋る」って行為自体は、
普段からみんなやってるじゃないですか。
「走る」という行為も、
日常のなかで少しくらいは走ってるけど、
長く速く走れるようになるには
トレーニングが必要なのと同じように、
喋りの質を高めて、喋れる時間を長くするには
続けてトレーニングをすればいいんです。
(明日に続きます)
2026-10-22-THU
『「自分でやらない」ほうがうまくいく
信頼されている人だけが知っている
7つのルール』
(PHP研究所)
石井玄さんの最新刊です。
「たくさんの企画を楽しそうに進行している
石井さんに、仕事の仕方を教えてほしい」
という編集者さんの希望から生まれました。
石井さんが実践してきた働き方、考え方が
惜しみなく書かれていて、
多くの「働く人」にとって
いい意味でグサッとくるはず‥‥。
2026年9月29日、PHP研究所から発売されました。
本対談と合わせてお手に取ってみてください。
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