「喋る」は、みんなの 極上のぜいたく。 「喋る」は、みんなの 極上のぜいたく。
糸井重里は気づきました。
よかったイベント、おもしろかったラジオ、
楽しかった収録、そのそれぞれに
「また石井玄(ひかる)さんがいる」と! 

石井さんは、オールナイトニッポンの
チーフディレクターを務めたのち
「株式会社玄石」で独立。
現在、約20本の人気ポッドキャストを担当しています。

そんな石井さんと糸井が、石井さんの新刊
『「自分でやらない」ほうがうまくいく』をきっかけに
お話しすることになりました。
「話すこと・聞くこと」が仕事であり、
楽しみでもあるという共通点を持つふたりです。
始まりも終わりもテーマも決めない対談でしたが、
だからこそ、おのずと
「会話」のおもしろさが浮き彫りになりました。
【第2回】4、5万人いたらなんでもできる
糸井
「ラジオはいいよ」という言葉が
指していた、ラジオの良さって
なんだったんですかね。
ぼくがひとつ思うのは、
「必ずしも超巨大なマスに届かない」
ということは、ラジオにとって
なんの不利でもないということで。
そこはずっと変わらない気がするんですよね。
写真
石井
ずっと「ラジオなんて誰も聞いてない」と
言われてきたし、ラジオ業界のなかの
自分たちも言いますもんね。
糸井さんのおっしゃる通り、ここ数年、その
「誰にも聞かれてない」ことが、
じつはいいことなんじゃないかと
思われ始めていて。
つまり、SNSと違って
少ない人数に対して深い話を
届けられるとか、たくさんの人に
触れないところのほうが
おもしろい話ができるんじゃないか
みたいなことが。
SNSが発展したことによって、
対極にあるラジオの評価が上がってくる、
不思議なことが起きているんです。



他方で「流行らせたいって言うけど、
少数の人に届けることが魅力なら、
流行りすぎたらラジオの魅力が
なくなるんじゃないの?」というジレンマは
あるんですけど。
糸井
「流行る」にしても、
300万だ500万だっていう
数字じゃなくて「10万いったよ」
というときの愉快さがあるじゃないですか。
その愉快さは、ラジオ業界の人、
みんな感じ始めているんじゃないですかね。
石井
そうですね。
ぼくのラジオ人生は、
それをラジオ業界の内外の人に
実感してもらう活動だった気がします。
『オールナイトニッポン』のリスナー数が
増えてきて、最後は東京ドームで
『オードリーのオールナイトニッポン』の
ライブをするところまで行ったのも、
「番組としてやったほうがいいから」
だけでなく、ぼくの影の目標として
「ラジオで、東京ドームのライブができるんだ」
ということをみんなに知らせたかったんです。
写真
糸井
東京ドームっていうのは、
4、5万人が入るんですよね。
ぼくも、じつはいつも
「4、5万」の数字が頭にあるんですよ。
それは、野球場の人数なんです。
石井
あ、そうですね。
糸井
野球場で野球を見ていたときに、
「誰も野球見てないじゃないか」
と思ったんですよ。
見てはいるんですけどね、
アナウンサーが実況しているように
興奮した人は、何人もいないんですよね。
石井
ぼくも、ドームで野球を見たとき、
意外とみんな野球そっちのけで
別な話をしたり、ビール飲んだりしてるな、
と思いました。
糸井
そうなんですよ。
つまり、じっとゲームを観ていなくても、
野球場って、いるだけで楽しいんです。
4、5万人という人数がいると、
こうなるんです。
小さい都市の人口も
これくらいじゃないですか。
だいたいこれくらいの人を集めたら、
なんでも仕事になるんです。
4万人のお客さんが入ってたら、
あんなにビールが売れるんですよ。
コーヒーもポテチも売れるし、
チケットをもぎるのだって仕事になってる。
だから「4、5万人いたらなんでもできるんだ」
ってイメージが、
ずっとぼくのなかにはあります。
写真
石井
なにかをつくるとき、4、5万人がつけば、
続いていくってことですよね。
糸井
つけばどころじゃなくて、
つかなくてもいいぐらいなんだ。
最近では、令和ロマンのKアリーナ横浜での
公演、感動しました。
あれは2万人だけど、
「ここで漫才ができるんだよ」と
証明することをやってみたかったんだ
という気持ちが本当によく伝わってきました。
あのイベントも、石井さんが演出担当ですよね。
石井
はい、ぼくも関わりました。
糸井
「あ、また石井さんがいる」と
気づきました(笑)。
「あの大きい会場で、漫才の掛け合いを、
どの位置にいる人も聞けるようにしたい」
っていうコンセプトが
みんなに伝わっているのを見て、
「ああ、これラジオじゃん」と思って。
石井
そうなんです。
Kアリーナの準備をしていたとき、
くるまくんが「令和ロマンって、
ラジオしかできないんですよ」と
言っていたんですよ。
「テレビで、大人数でいろんなことをするのは
向いていない。
YouTubeにしろ、ポッドキャストにしろ、
漫才にしろ、ふたりで会話している延長で
やっている」と。
だから、アリーナでのイベントも、
ラジオになりそうだねと話していたんです。
じゃあ、ぼくがいる意味あるなと思って、
漫才なんだけど、ラジオっぽいイベントに
なっていきました。



お笑い芸人の方は、大きい会場だと、
声が届かなくて、お客さんの反応も
いまいちわからないのではと心配されることが
多いんです。
でも、ぼくは武道館や東京ドームでの
お笑いライブの経験から
「大きい会場でもできる」と知っていたので、
自信を持って準備を進めました。
ましてや、Kアリーナはおもに
ミュージシャンのライブ用に
つくられた会場なので、
いろんなところにスピーカーがあって、
もとから音響がいいんです。
東京ドームは野球場なので、
音響をよくするために
いろんな工夫をしたんですが、
Kアリーナでは
「普通に音を出せば全部聞こえます」と
言われて。
「なにも考えなくていいんですか?!」って
感動しました。
令和ロマンのふたりも
「この音響なら、安心して漫才ができる」と
確認していました。
くるまくんは「芸人も、2万人規模で
漫才のライブができるんだ」と
言っていましたね。
写真
糸井
気持ちよかったでしょうね。
石井
めちゃくちゃウケてましたからね。
糸井
感動しましたよ。
ぼくはそんなに前のほうの
席じゃなかったのに、
まったく問題なく声が聞こえた。
石井
大きなビジョンも用意して、
舞台上の演者の表情も見える状態にしました。
あの人数で一緒に笑う体験は、
珍しいというか、なかなかできないですよね。
そこが、令和ロマンというコンビの、
新しいことをやりたいという意思の
あらわれだったと思います。
多少、どうなるかわからない部分もありつつ、
始まってすぐ「大丈夫だ」と確信して、
とくに中盤から鬼のようにウケだして。
糸井
ある意味、暴れまくってましたよね。
石井
ぼくは時間をコントロールする
立場だったんですが、
全然終わらなくて、漫才が。
序盤のネタで予定時間の倍ぐらいやって。
糸井
楽しかったんだね。
石井
そうだと思います。
令和ロマンはネタのつくり方が独特で、
台本を書かず、つくり込まずにやるので、
やってみないとわからない部分は
あるんですけど、
それにしても予定より長かったです(笑)。
糸井
ケムリさんの実力もよく出ていましたよね。
あのコンビはあのふたりじゃなきゃダメ
ということもちゃんと伝わったから、
大成功だったと思います。
石井
大成功でした。
写真
(明日に続きます)
2026-10-21-WED
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信頼されている人だけが知っている
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