ほぼ日刊イトイ新聞　-　わたしのデパート！


──	なんと３フロアにわたる婦人服です。いろんなブランドがいっぱいです。世界中のデザイナーズブランドも‥‥。
ジョージ	プラダ（PRADA）もミュウミュウ（Miu Miu）も、コムデギャルソン（COMME des GARCONS）もジュンヤワタナベ（JUNYA WATANABE）も。伊勢丹さんて、あたらしいブランドを、さっと思い切って取り入れるでしょう？
伊勢丹の人	「毎日が、あたらしい。ファッションの伊勢丹」が伊勢丹のブランドイメージなんです。変化に対応しながら常に半歩先を読み、お客様にご満足いただける店でありたいと。まだ他所ではここまで大きく展開していない。という新しいブランドを、いちはやくご紹介することも多いですね。

ジョージ	素敵ー。と思うと、定番的な人気のメーカーもちゃんとあるし、かと思えば機能重視のものがたくさん並んでいたりするのね。ほら、このあたりは、山ガールの伊勢丹的解釈！
伊勢丹の人	スポーツウェアを揃えたコーナーですね。こういった機能性があるものは、タウンユースで使われる方も多いんですよ。
──	これからの季節は野外の音楽フェスに行くときとか便利そうですよねー。

ジョージ	こういう機能のあるものはまだ選びやすいけど、そもそも女の人が服を選ぶって大変なんだろうね。こんなにいろんな形と色があって。まず、ワンピースにしようかスーツにしようかみたいなところからはじまるんでしょ。男、基本的に上と下だもん。ラクよねー。
──	きっとその迷うことじたいが楽しいんでしょうね。
ジョージ	‥‥あら、シャネル（CHANEL）！うわわわわっ。シャネルって、すごいわよねえ。メゾンの中でもシャネルは別格かもしれない。こんなに存在があるのに派手でもなく自己主張をしてるわけでもなく、普通なのに、ちゃんとシャネルで、しかもシャネルの値段がするの！コサージュひとつが、ほかでハンドバックをひとつ、買えるくらいのお値段なの！
──	あっ、こちらのお店は外国人男性が婦人服の接客していますよ。
ジョージ	ジョルジオ・アルマーニ（GEORGIO ARMANI）！ステキっ！日本女性の頭の中にある見目麗しいヨーロッパ人っていうのをそのままかたちにしたらこうなるだろう、っていう感じの人ねぇ‥‥。くやしいわ。あのふわっふわの髪の毛！どんなに伸ばしても重苦しくならないの。痩せてるんだけど骨格がしっかりしていて。
──	しかも店員さんなので華美な服装はしていないんですね。黒いジャケットに白いシャツ。もちろんアルマーニを着ているわけですね。
ジョージ	そう！　あんな子に接客されたらクラクラよ。にっこり笑って「ブォンジョールノ、シニョーラ」なんて巻き舌でささやかれてごらんなさい。巻き髪に巻き舌よ！試着するより先にクレジットカード出すわ。
──	アルマーニって、ああいう人が着るんですねえ。
ジョージ	そうよ！　ああー！袖も裾も詰めなくていい人生ってどんななんだろう！いいなあぁぁぁぁ。これからの日本の若い子たちはみんなそうなるのかしらね。
──	どうなんでしょう？あの、今回、伊勢丹さんを歩いていると、中国のお客さまが多いじゃないですか。彼ら、かっこうよくないですか？男性も女性もですけど、骨格もしっかりしていて顔がちっちゃくて、筋肉もほどよく鍛えていて、姿勢もよくて。ああなれば世界的に見てかっこいいっていうふうに思われると思うんですが、日本の若い子たちは、そういうふうには、なってないですよね。ヒョロヒョロはしてるけど。
ジョージ	わかった。日本の男の美意識で平安時代に向かい始めてるのよ。ヒョロヒョロ～っとして。そしたらボクらは平安時代の貴族のようにでーっぷり太ればいいんだわ！やってやる！　‥‥今さら（笑）。
──	からだこわしますよ。

ジョージ	やけになったらいけないわね。それにしても、デパートってテナントミックスやってると面白いでしょうね。街を作り替えることができるんですものね。このフロアを作り替えていくってシムシティですもの。
──	ホントそうですね。
ジョージ	男の人たちも、こういうフロアを敬遠しないで、歩きながら、ここは街ならどこだろう？って思うのも楽しいかもしれない！あら、小さいサイズのコーナーもあるのね。ここはすっごく百貨店らしい！
──	そうですね。ここがいわゆる百貨店の婦人服売り場ですよね。ちょっとほっとする感じがします。

ジョージ	こういう売り場は、売り子さんに会いにくるお客さまも多いんでしょうね。
伊勢丹の人	そうなんです！お客さまも「○○さんいらっしゃる？」っておっしゃいますし。
ジョージ	通ううちに、名前で呼んでくれるのよね。「この間はありがとうございました」から始まって。
伊勢丹の人	はい。もっと仲良くさせていただくようになると、こちらからお電話で「○○さんにぴったりのお洋服がはいりました！」というようなおしらせも、いたします。
ジョージ	それよ！「次の季節はこういうのが入りそうなんですけど　おとり置きしておきましょうか」とか言われるともうね、「それにあわせて、いくつか、　とっておいてくださーい」って言いたくなるもの。
伊勢丹の人	そんなふうにデパートを使っていただけると、私たちとしても、とても嬉しいです。
ジョージ	そして、買ったものを着てお出かけするの。「どう？」「お客さまステキですー！」って。ほんとうに幸せなことだわ！

ジョージ	こうして歩いていると、いつのまにか、大きいサイズのところに来るのね。わざわざ大きいサイズを買いにきました、ってならないようになっている。でも、マネキンの姿かたちでちゃんとわかる。こういうところも上手よねえ。
──	ほんとですね。
ジョージ	こうして歩くといろいろ発見もあるしね。 ‥‥あら、これなんかかわいくてよくない？バッグ。
──	でも、これ、犬用ですよ。
ジョージ	ああ、もうさ、世の中、かわいいものは、子ども用かワンコちゃん用なのね！なんてことなんでしょう！おいくら？　ワンコちゃん用に１８万！泡ふきそう‥‥。ここはデニムのコーナーよ！こんなにたくさん。すごいな、こんだけデニムが集まっているって。男でこんなのがあったらすごくうれしいのに！また最近はデニムが来てるのよね。ドレスダウン系ではなくて、ぴっちりとしたデニムが。 ‥‥いいなあ。これ。マーク・ジェイコブス（MARC JACOBS）ってレディースラインてこんなにカラフルなのに、メンズって‥‥。

■ プラダとミュウミュウ
「なんで黒いビニール袋に、こんなに高いお金を払ってありがたがるの？」プラダのバッグが流行り始めた頃、そう言い放ったボクの母。その１年後には、プラダのバッグの
コレクターになっていました。ファッションとは、そういうモノだと、いろんなコトを教えてくれた、それがプラダというブランドでした。ちなみにプラダの妹ブランド、ミュウミュウ。プラダに比べてガーリーで、夢見る感じがする上に、レディースラインしか展開しない。メンズミュウミュウがあったら絶対、買ってやるのに‥‥、すごく残念。

■ コムデギャルソンと
　ジュンヤワタナベ
着ることができる「桂離宮」‥‥、それがコムデギャルソンだって思ったりする。日本人にしか作ることができない、グローバルな西洋服がコムデギャルソン。日本人にしか作ることができず、しかも日本人に最も似合う西洋服がジュンヤワタナベ。どちらにしても、お気に入り。

■ 機能性ウエア
機能に満ち溢れたモノの、その機能を敢えて使わぬことがエレガンス。写真マニアのおじさんが好んで着ているポケットだらけのカメラベストと、小さなポケットが沢山ついてるアレクサンダー・マックイーンのジャケットと。その両方の違いはどこにあるかというと、そのポケットにモノをいれるかどうかという、そのただ一点だといっても過言じゃないと思うの。山歩きに適した靴を、敢えて街で履く贅沢。ダウングレードをたのしむことが、粋なモードのはじまりなのね。

■ シャネル
シャネルはシャネル。デザイナーが変わろうが、メンズであろうが、香水だろうが、シャネルが作ればすべてシャネルの風格がある。ひと目でシャネルとわかるのね。だってモードのほとんどすべては、シャネルが考え、シャネルが作った。唯一無二の存在で、ボクらはシャネルを買うときに「著作権込みのコスト」を負担することになる。だから決して高いなんて思わないのね。高いなんて、思いたくないし、思わなくてすむようになりたいの！

■ ジョルジオ・アルマーニ
ハンガーにぶら下がっているときには、なんてみすぼらしい服かしら‥‥、ってがっかりするの。でも羽織ると一転、体をやさしく包み込み、服がそれ本来のあるべき姿を思い出す。そういう意味では和服に近い服かもしれない。イタリア人の体にあわせてイタリア人が作った和服。あぁ、イタリア人に生まれたかったってしんみり思う‥‥、でも着たい。

■ シムシティ
一世を風靡した街つくりゲームでござる。遊ぶ人の価値観と、計画性がわかるゲームで、ボクが作る街ってどれもモノが足りなくなっちゃうの（笑）。ちなみに、田舎からでてきたお芋さんみたいな男の子を、伊勢丹のメンズ館に連れて行って都会的なオトコに仕立て上げて二丁目にデビューさせる。リアル「シムボーイ」ってゲームを昔、たのしんだコトがございます。
この、バチあたりメ！

■ 売り子さんと仲良くなる
「買ってあげるとか、売ってもらう」とかって関係じゃない。「譲ってもらうとか、薦めてもらえる」とかって関係になるのが、売り子さんと仲良くなるってコトなのネ。お客様として自分の気持を正しく伝える。売り子さんの情報やアドバイスを謙虚に聞いて、ときに都合をわかってあげる。それが仲良くなる秘訣。これって、ありとあらゆる人間関係の基本と言えば基本よね！

■ 愛犬グッズ
東京という街の、しかも新宿のど真ん中という場所にある百貨店で、愛犬のために何かを買う。これほどスペシャルで、これほど贅沢な「シルシ」を持った消費活動って他にあるのかしら。だって「犬が飼えるお部屋、あるいはお家」に住んでる。あぁ、それだけでステキなコト。いいなぁ‥‥、なんだか引っ越したくなっちゃった。

■ デニム
真ん中にピッチリ、アイロンの折り目がついたお父さんが履いてるパンツがデニム。‥‥、じゃないはずよね。絶対、そうじゃないはずだわ！カトリーヌ・ドヌーブ嬢がお穿き召されるのがデニム。キャメロン・ディアスが履いているのがジーンズ。そんな感じ？　‥‥、なのかしら。シャネルのジャケットとあわせてシャネルが恥じらうほどの、デニムの着こなしができる大人の女性になりたいなぁ‥‥、って売り場の前でツメを噛む。

■ マーク・ジェイコブス
マーク・ジェイコブスをはじめて知ったのはニューヨークのバーニーズで。カジュアルなんだけど、どことなくエレガント。メンズラインのはずなのに、やわらかいシルエットで色っぽくってしかも大きなサイズがたくさん揃ってた。だから一時期、ニューヨークにいくたびダーリンに買って帰ったおみやげはマーク・ジェイコブスのカットソーやジャケットだったの‥‥。のろけちゃったわ、ごめんあそばせ（笑）。