「東日本大震災を実感していない自分は、震災とどう向き合えばいいんだろう?」
ほぼ日でインターンをしている
大学3年生のマツザキが、
あらためて震災について考えた。
メール紹介⑥

東日本大震災以前に
大きな地震を経験した方からのメール

こんにちは、マツザキです。
引き続き、「東日本大震災を実感していない自分」
というテーマに寄せられたメールを紹介します。
紹介するメールは、平成28年熊本地震が起きる前に
お送りいただいたものです。

今回は、東日本大震災以前に
大きな地震を経験した方からの
メールを、2通紹介します。

今回メールを送ってくださったお2人は、
阪神淡路大震災や新潟県中越地震を経験し、
そのときに考えたことをもとに、
冷静に東日本大震災に向きあっていました。

それでは、メールをどうぞ。

阪神淡路大震災から学んでいたおかげで、
すぐに支援ができた。
(徹さん)

僕は神戸市で働く34歳のサラリーマンです。
1995年に起きた阪神淡路大震災を、
僕は兵庫県明石市で経験しました。
幸い、家にも親族にも大きな被害はなく、
学校が2~3日休みになっただけで
すぐにもとの生活に戻りました。
テレビに映っている神戸の被災地の様子は、
近くで起きていることのはずなのに、
当時中学1年生の僕にはどこか遠い出来事でした。
つまり、僕は、阪神淡路大震災を
あまり実感していませんでした。

それから9年後、僕は社会人になり、
今の会社に入社しました。
入社後しばらくして、7つ年上で
生まれも育ちも神戸の先輩と飲みに行きました。
そのときなんとなく、
「阪神淡路大震災のとき、大変だったんですか?」
と聞きました。すると、
「うん、大学のゼミの先生は亡くなったし、
 大学の寮に入っていた同級生は、
 冬休みで田舎に帰省していると思っていたんだけど、
 冬休み明けに解体した寮から遺体で見つかってん。」
と答えてくれました。

そのとき、身近な人の
大切な人が亡くなっている、と知り、
阪神淡路大震災が僕にとって
実感の持てるものになりました。
その日から、阪神淡路大震災とは
なんだったのかを知るために、
どれくらいの規模で
どれくらいの被害を与えたのか、などと
詳細に調べるようになりました。

だから、東日本大震災が起こったときに、
ウェブページで地震のマグニチュードを見て、
「これは大きな地震だぞ」と直感的に感じました。
そして、「なにかできることをしよう」と
すぐに頭を切り替えることができ、
速やかに支援をすることができました。

本当に望んではいないし、
起こってほしくもないけど、
それでもきっと、次の災害がいつかどこかで発生します。
そのときに他人事と思わないように、
東日本大震災のことを、
実感のない若い皆さんに学んで欲しいな、と思います。

当事者にしかわからないことがあるけれど、
できることをしたい。
(彬子さん)

私は新潟市に住んでいて、
助産師として働きながら
社会人学生として大学院に通っています。

私は長岡市で新潟県中越地震を経験しています。
数日間不自由な生活をしましたが、
実家で衣食住が与えられていた私は
生活の場を奪われるようなことはありませんでした。
ひどい被災をした方に比べると、
全然大変じゃなかったように思います。

中越地震の経験があったので、
自分が大きな被害を受けなかった災害を
自分事にも他人事にもできない気持ちが、
私にもすこしあると思います。
当事者にしかどうしても分からないことがあり、
それ以外の人が何かを言う資格はないと
思ってしまうことがあるからです。

でも同時に、頑なに当事者だけが語っていくことにも
限界があるのではないかと考えています。
たしかに、人は自分の経験からでしか
思いが及ばないことがあります。
それでも、当事者と自分の経験の間に
共通する苦しみや困難さを見出し、寄り添うことは、
自己満足かもしれないけど、
重要なことなんじゃないかと思います。

東日本大震災が起きた直後、私の働く病院では、
福島からの妊婦さんを受け入れました。
被災状況の傾聴に努めながら、
「私には何もできないのかな」と思うこともありましたが、
今振り返ると「できることをしていたんだ」と思います。

東日本大震災に関しても、
当事者にしかわからないことがきっとあります。
それでも、すこしでも「わかりたい」と思いながら、
復興に向けて自分のできることを
継続していくことが大切だと感じています。

メールを送ってくださったお2人は、
東日本大震災以前の地震での経験や考察と
東日本大震災とを照らし合わせることで、
落ち着いて東日本大震災について考えていました。
とるべき行動をすみやかにとったり、
自分なりに気持ちを整理したりしていたようです。

僕が東日本大震災について
知りたい、考えたいと思い始めたのは、
主に、震災に向き合いたいという動機からでしたが、
同時に、今後自分が遭うかもしれない大きな地震に備えて、
東日本大震災に学びたいという動機も
すこしあったからだと、メールを読んで思い出しました。

次回に、つづきます。

2016-05-17-Tue