その7 小豆島の人たちは‥‥
───小豆島の平林有里子さんと対談編(4)

糸井
yuriさん、いまのお仕事はおもしろいですか。
yuriさん
わたしは‥‥
語弊があるかもしれませんが、
趣味でこの仕事をしているんだと思います。
糸井
趣味で。
yuriさん
すみません、不謹慎ですよね。
糸井
いや、そんなことはないです。
人間の在り様に、真剣に触れるお仕事ですから。
たくさんの物語を次々と読んでいくような
おもしろさがあるんだと思います。
yuriさん
なによりもその、
被害者にお金が返ってくることが‥‥
糸井
あっ、それはうれしい。
yuriさん
そう! うれしいんですよ。
うれしいからおもしろい。
糸井
なるほどねぇ、
問題がひとつ解決するっていうのは、
相談員さんにとって
大きなうれしさなんでしょうね。
yuriさん
はい。
糸井
逆にいえば、
瀬戸内の小豆島のような場所にさえ、
解決しなければならない被害がいくつもあると。
yuriさん
ええ。
最初にも申し上げましたが、
香川県は貯蓄率が高い。
小豆島もそうだと思います。
糸井
そうか、そうでした。
だから狙われる。
yuriさん
お金をしっかり貯蓄されていて、
つつましく暮らしている方が多いと感じます。
冠婚葬祭のときにばーんと派手につかうとか、
立派な家や車につかうとか、
あんまりそういう傾向もないのではないかと。
じゃあ、どこにお金をつかうんだろうと考えたら、
たぶん子どものため‥‥「教育」に、なんです。
糸井
ほぉ、教育。
yuriさん
小豆島は『二十四の瞳』の舞台なのですが、
とても教育熱心な場所のように思います。
習い事をしている子どもが多い。
たくさんの子が塾に通っていてびっくりしました。
そうやってみなさん、子どもにお金をつかう。
そして、子どもにお金を残そうとする。

ある日‥‥
相談の電話をいただいたときのことなんですが、
いろいろうかがっているうちに、
なぜそんなにお金を増やそうとなさったんですか?
ということをたずねましたら、
「子どもに残す
 お金を増やしたかった」

とおっしゃるんです。
糸井
‥‥痛々しいですね。
yuriさん
「わたしが欲ばりだから
 こんな目にあってしまった」
そうおっしゃる。
糸井
それはその人の欲じゃない。
yuriさん
でも、報じられるのは、
「お金を増やそうとした年寄りがだまされた」
というニュースです。
糸井
それはだから、
さっき話した「知らない」を「笑う」と
おんなじ構造ですよね。
yuriさん
おなじですね。
糸井
うーーーん‥‥。
yuriさん
‥‥小豆島は、
たぶんそういう方が多い場所なんだと思います。
糸井
子どものために‥‥。
もう、松本清張の小説を読んでるみたいだ。
yuriさん
ほんとうに。
糸井
‥‥切ないなぁ。
yuriさん
でも、
教育熱心だからこそのいいこともあります。
糸井
そうですか。
ぜひ聞かせてください、いい話を(笑)。
yuriさん
はい(笑)。
小豆島の人たちは、
よく文字を書かれるように思います。
糸井
そうか、教育熱心だから。
『二十四の瞳』だから。
yuriさん
ええ。
書くことが推奨されていて、
小学校では硬筆検定なども盛んです。
字がきれいな人が多くて、
とくに、ご高齢の方は達筆で。
糸井
なるほどねぇ。
yuriさん
「クーリングオフの書類の書き方がわからない」
というご高齢の方に、
「じゃあ、わたしが鉛筆でうすく書くので、
 それを上からなぞってくれれば大丈夫ですよ」
と言ってハガキ書類を渡したら、
ダーーって書き直されたことがあります(笑)。
糸井
清書されちゃった(笑)。
yuriさん
すごい達筆で(笑)。
糸井
いい話だなぁ。
yuriさん
あと、几帳面にメモをする人も多いです。
糸井
メモの習慣がある。
yuriさん
はい。
たとえば、
かかってきた電話の内容なんかも
しっかりとメモする人が多い。
糸井
‥‥つまり、そのメモは証拠になりますね。
yuriさん
そうなんです。
メモをちゃんと残してくださったことで、
それが糸口になって
トラブルが解決したこともありました。
記録があったおかげで、
だました相手との交渉が
やりやすくなったんです。

「こういうメモが残っているのですが」と。
糸井
だます側はコストをかけたくないから。
裁判とか、避けたいんですよね。
yuriさん
そうだと思います。
証拠を残している相手は面倒なんでしょうね。
糸井
さっさと返金して、
次のだれかを狙ったほうがいい。
yuriさん
そういうことかと。
糸井
すると、その返ってくるお金っていうのは、
他のだれかをだましたお金なのか‥‥。
それはそれで皮肉なものですねぇ。
yuriさん
でも、みんなが証拠を残すようになれば
相手はどんどん困っていきますから。
なにしろ、メモが残っているのは助かります。
糸井
なるほど‥‥。

あれですね、yuriさん、
きょうyuriさんとしたような話を
親子とか家族とかで
ときどきでいいから交わしていれば、
たぶん被害は減っていきますよね。
yuriさん
そうですね。
ご親戚の高齢者を気をつけて見てるとか、
声をかけてあげるとか、
そういうことは有効だと思います。
でも‥‥
むずかしくもあります。
糸井
むずかしい?
yuriさん
ええ。
糸井
それは、どういうことでしょう。
(最終回に、つづきます)
2013-12-05-THU

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