その6 消費生活センターとタッグを組む
───小豆島の平林有里子さんと対談編(3)

糸井
「知らない」を「笑う」ことが
だまされる人を増やすという図式。
これひとつ、忘れずにいたいですね。
yuriさん
はい。
糸井
一方で‥‥高齢者の話に戻りますけれど、
お年寄りの場合はだまされても
笑われないかもしれませんよね。
「かわいそうに」と思われるから。

でも、この、「かわいそうに」っていうのも、
なんていうんだろうな‥‥
へんな選民意識から出てくる感情に思えるんです。
yuriさん
ああ‥‥
選ばれた自分から見ると、「かわいそう」という。
糸井
そう。
もっと、こう、「同じだよ!」って言いたい。

それでぼくは、
ちょっと最近1個、
キーになるかもしれない考え方を見つけたんです。
yuriさん
どういう‥‥?
糸井
「ばかだなぁ」とか
「かわいそうに」とか、
そういうのを乗り越える方法は、
「チーム」なんじゃないかと。
yuriさん
チーム。
糸井
だまされた人を笑うほかにも、
いろいろな言い方があるじゃないですか。
「欲が深くてだまされた」とか。
「見栄を張ってだまされた」とか。
yuriさん
「知らないからだまされるんだ」とか。
糸井
そう。
「チーム」だったら、仲間に対して
そういうことはあんまり思わないでしょう。
だから、
「ばかだ」「気の毒だ」じゃなくて、
だまされた人が
自分と同じ「チーム」にいると思うことなんですよ。
そう思えたら、
「お前と俺とで、どうやって、何しようか」って、
自然に考えて行動できるんです。
yuriさん
なるほど‥‥。
「チーム」という考え方をうかがって、
いまひとつ思い出した事例があります。
糸井
なんでしょう。
yuriさん
すこし前に小豆島で、
いわゆるマルチ商法が流行りまして。
ご相談をたくさん受けた時期があったんですね。
糸井
人口3万のその島でも、
そんなふうに流行っちゃうんですか。
yuriさん
もちろん、流行ります。
その人口だからあっという間に。
糸井
そうか。
yuriさん
マルチ商法が
なぜ非常に厳しく規制されているかというと、
人間関係を利用するなどして組織を拡大し
被害を拡大させたりする、
非常に問題が起こりやすい取引だからなんですね。
友だちや親戚からすすめられたら、
消費生活センターにも、言えない。
勧誘してくる友だちや親戚が、
違法行為をしているかもしれないわけですから。
糸井
言えないでしょうね。
yuriさん
言えない。
仕方ないから「買います」となって、
黙っている人がたくさんいます。
糸井
うーーん‥‥。
yuriさん
で、思い出した事例というのは、
ここが大きくちがったんです。

知り合いの中にマルチ商法が入ってきたとき、
「友人がこんなことをしているのは
 大変なことになる」
そう思った人が、動いてくれました。
糸井
黙ってないで相談してくれた。
yuriさん
そうです。
何人かのお友だちが声を上げて、
センターに相談してくれたんです。
話をうかがったら、
やはり問題のある勧誘方法でした。
周囲のみなさんは、
「マルチ商法を信じ込んでいるこの友だちを、
 どうしたら助けられるだろう」
と思いながら勧誘を受けていたのだそうです。
糸井
‥‥すばらしいですね。
yuriさん
そうなんです。
「あ、この子のやってるのはマルチだ」
と気がついてから、
「もうこの子と関わるのをやめよう」ではなく、
「助けなきゃ」と思ってくれた。
それによって、おおきく状況が変わりました。
糸井
ぼくはむかし、
マルチ商法に誘ってきた人と絶縁しました。
yuriさん
そうなりますよね。
糸井
‥‥その、
絶縁してしまうことと、
助けてあげようと思う、境い目ってなんでしょう?
yuriさん
それはやっぱり‥‥
すごく友だちだったから?
糸井
そうか、そうですよね。
当然そうだ。
ものすごく助けたかったんでしょうね。
ほんとうに友だちだったんだろうなぁ。
あぁ、そうか‥‥。
yuriさん
はい。
糸井
そのお話は、すごくいい「モデル」ですね。
いい「モデル」を出すと、
その実例に準じる人たちが増えるんです。
「問題あるマルチ商法から
 友だちを助けられたのは、
 友だちや消費生活センターと
 タッグを組んだからです」

これを「ほぼ日」に載せられるのは、
とてもいいことですね。
yuriさん
そうですね、うれしいです(笑)。
糸井
やっぱり、
「一緒に戦う」なんだよなぁ‥‥。
yuriさん
結局、私たちは、
相談の声が上がらないと動けないんです。
糸井
「ヘルプ」が出ないと動けない。
yuriさん
はい。
ですから老人会さんとか、
10人くらい集まる場所には
積極的にお話をしに行ってるんですが、
そこで何度も申し上げているのは‥‥
糸井
相談してください。
yuriさん
そうです。
「なにかあったら、とにかく来てくださいね。
 気軽に電話してくださいね。
 みなさんが相談してくださることで、
 わたしたちは情報を得ることができるんです。
 自分のことじゃなくても相談してくださいね。
 周りの人を助けたいときも、
 どうか情報を教えてください」
糸井
なるほど。
ということは、
yuriさんがいちばんやっていることは、
「知識を増やしましょう」
という活動ではないですね。
yuriさん
そうですね。
「こういう手口が流行ってますよ」
という情報ももちろんお話しますが、
それよりなにより、
「なにかあったら
 相談してください」

これを、いつも何度も言っています。
糸井
それはつまり、さっきの、
「タッグを組みましょう」ですね。
yuriさん
ええ、そういうことになります。
「チーム」で動きましょう。
私たちができることは、
みんなで動くことなんだと思います。
糸井
「わたしたちの役割は、みんなで動くことです」
なるほど。
消費生活センターは、そういう機関。
それはわかりやすいですね。
(つづきます)
2013-12-04-WED

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ひとりで悩まず、相談しましょう。
相談は基本的に「電話」で行います。

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消費者保護を目的とした都道府県・市町村の行政機関で、
日本全国にたくさん設けられています。
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互いに協力し合い、消費者対応を行っています。
相談をしたい場合はどちらでも大丈夫。
お住まいに近い機関へ連絡をしてみましょう。

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