その1 みんなにわかるおいしさ。 2009-05-20
その2 本音なんだよねぇ。 2009-05-21
その3 どうしよう、対談にならないよ。 2009-05-22
その4 飯島さんの「これでもか」。 2009-05-25
その5 料理に愛情不要のこと。 2009-05-26
その6 負けた。 2009-05-27
その7 言われたことをちゃんとやる人。 2009-05-28
その8 最低の中に最高が入ってる。 2009-05-29
その9 ヌードの撮影現場のような。 2009-06-01

ばなな ごぶさたしてます。
よろしくおねがいします。
糸井 いえいえこちらこそ、
ありがとうございます。
ばなな 糸井さんと対談したことがないので、
けっこう緊張してるんです。
ほぼ日 ええっ?
ばなな ないんですよ。
糸井 この人とは、しょうもない話以外、
したことないんだ。
ばなな いつも、半裸とか短パンとかで。
ほぼ日 ええー?
あ、吉本家の海水浴ですね。
糸井 まほちゃん(ばななさんのこと)に
食べ物を褒めさせたら
ほんとに超一流だよね。
本気だからね。
ばなな 本気ですよ。
糸井 淀川長治さんに近いね。
ばなな 食いしん坊界の(笑)?
糸井 そうそうそう。
食い物を褒めさせたら。
もうパン粉ひとつだって褒めますよ。
ばなな ええ、褒めますよ。
ほぼ日 その食いしん坊界の淀川長治さんから
飯島さんのことを
伝えていただけたらなぁと思っています。
ばなな おまかせください。
糸井 食べに来てるよね、
明らかにね。
ばなな はははは。
あ、それで、わたしたちが食べてるところ、
みんな、じーっと見てるんですか。
ほぼ日 いえ、ぼくらもご相伴にあずかります。
ばなな ですよね。よかった!
糸井 ここに飯島さんは加わるの?
ほぼ日 料理中は話に加われないんですが、
キッチンから、ときどき、
参加していただきます。
飯島 料理をすこしずつ出していくので
食べてくださいね。
まずは、こちらです。
飯島 タイで覚えたミャンマーサラダです。
ばなな あ、なんとなく、この
ピーナッツっぽいところが。
飯島 ほんとは「ペニーワート」っていう水草で
つくるサラダなんですけれど、
芹で代用できるなと思って。
ばなな 糸井さん、どうぞ、お先にどうぞ。
おとり分けしましょうか。
糸井 いやいや!
ばなな でも、おとり分けしてみたりして。
(と、やや緊張ぎみに箸をとる)
糸井 ミャンマー料理って、
ベトナム料理みたいなもの?
ほぼ日 ざっくり言うと、そうです。
ばなな (皿をじっと見てとり分けながら)
‥‥とり分けが上手な人っていますよね。
例えば、ここにこんだけ人数がいたら、
いちどに均等にとり分けちゃう人。
そのともだちにいつも
「おまえのとり分けは汚い」って怒られる。
糸井 ああそう?
そんなこと、ないよね。
それでは、いただきます。
あらためて、よろしくお願いします。
ばなな いただきます。
よろしくお願いします。
‥‥わざとらしすぎますか?
ほぼ日 大丈夫です(笑)!
ばなな はははは。
いただきまーす。
糸井 いただきまーす。
ほぼ日 楽しんで食べてください。
(と、一同、ふたりをじっと見る)
ばなな 楽しめない! この、この雰囲気(笑)!
みんながズラリ! みたいな。
糸井 オレもちょっとさぁ、うん。
なんか、壇上に乗せられた感じがしますよ。
ほぼ日 糸井さん、料理の鉄人の審査員とか
なさってたじゃないですか。
ばなな ああ、そうだ。
糸井 出てた。
あれ、いづらくてやめたんだ。
ほぼ日 人前だったり、緊張して食べると、
味、わからなくなりますか?
糸井 ううん。そんなことはないけどね。
(もぐもぐと食べながら)
あのね、道場さんがなんで、
あんなに勝ったかっていうのは、
もう、はっきりと秘密があって。
ばなな はぁ。
糸井 それは最後に庶民的な
温かい料理を配るんです。
そこで、全部の印象が
「この人の料理は、おいしかった」
で終わるんです。
ばなな へぇー!
糸井 汁物とか「とり分けます」って言って、
必ず、どんな人でもわかるおいしさのものを
とり分けるんです。
と、最後に、
「いやー、やっぱり、おいしい!」となる。
ばなな そうか。
それが作戦だとしたら、
すごいことですよね。
糸井 道場さんは、わかってると思うよ。
必ずそうだったからね。
ばなな 日本人の心をギュッとつかむ。
糸井 ぼくは田舎の子だから、よくわかるんだけど、
田舎の子でも絶対わかるおいしさ、
普遍的なおいしさって、あるじゃないですか。
ばなな うん。
糸井 それの、ほっかほかの温かいやつを、
とり分けてくるんだもの。
ばなな それがテレビに映ってるんですか。
糸井 映ってます。
ばなな じゃあやっぱり、すごい作戦ですね。
すごいなぁ。
糸井 それに、例えばフレンチの外国人が
対抗したって、無理だよね。
ばなな うん。
糸井 「レミーのおいしいレストラン」
って、映画があるでしょう。
ばなな ねずみのやつ。
糸井 うん。
あれが、やっぱり、その辺を、
わかってる人がつくったんだと思うんです。
原題もそうだけれど、
やっぱり、ラタトゥイユなんだよ。
ほぼ日 南フランスの、野菜のごった煮料理ですね。
糸井 要するにみんなにわかるおいしさがあるんです。
ばなな なるほど。


(まだ、本題に入っておりませんが、
 プロローグのように第1回をお届けしました。
 次回につづきます。どうぞお楽しみに!)

2009-05-20-WED




U.M.A. よしもとばななの新しい書きもの。
恋について、10の質問。
LIFE なんでもない日、おめでとう! のごはん。
書籍『LIFE』
かもめとめがねのおいしいごはん。

(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN