糸井 オレ、飯島さんとの出会いで、
フライ類を、さけなくなったんだよ。
飯島 ほんとですか!
ばなな さけてたのか!
糸井 揚げ物の多い時代だなって気分があるんです。
そっちいっちゃったら
全部揚げ物になっちゃうな、
おいしいに決まってるし、って思って、
揚げ物を食べるっていうのを
ちょっとさけてた。
ばなな へぇ。
糸井 ところが、もう一回出会った。
ばなな よかったです。
飯島 よかったです。
糸井 毎日食わなきゃいいんだもんね。
飯島 そうですね。
ばなな 揚げ物に関しては、わたしも、
世界一なんですよ(笑)。
飯島 そうなんですか。
揚げ物、わたしも、好きです。
ばなな うち、揚げ物がすべてっていう
家庭環境だったから。
飯島 そうなんですか。
糸井 そうだ、そうだ。
一時期毎日揚げ物でしたっていう家庭だ。
ばなな うちの父が、揚げ物が好きで。
飯島 野菜とか中心に食べてそうなのに。
ばなな 85歳になっても、
レバカツを3枚食べるんですよ。
さらさらさらっと。
飯島 へぇー、すごい。
糸井 糖尿病なのに、内緒で食べに行った
とりかつ屋の領収書があったんだって。
洋服のポケットに。
飯島 ははは。
ばなな とか、コンビニのコロッケとか。
(レシートを読み上げるふうに)
コロッケ、コロッケ、カツ、カツ、
みたいな。
飯島 すごい、じゃもう、
あらゆる揚げ物がOKなんですね。
ばなな 父は、おいしくなくても食べる。
わたしは、おいしくない揚げ物は
食べなくなりましたけど。
飯島 わかる気がします。
わたし、焼きそばが好きなんですけど、
もう、たいてい焼きそばだったら
おいしいような気がしちゃうんですよね。
餃子とかも、ほんとに最高においしい!
‥‥って思うことって少ないんですけど、
たいてい、そこそこ、おいしい。
ばなな 最高の味がちょっと入ってますよ。
最低の中に。
飯島 そうですね。
糸井 うまいこと言う。
その通りだ、その通りだ!
飯島 可能性はある、っていう。
ばなな だから許されるっていう。
糸井 その通りだ。
最高の味が最低の中に入ってますね。
飯島 はい。
ちょっとだけでも。
糸井 含む。
飯島 何パーセントか。
糸井 ラーメンという料理も、
最高を含みやすいものだから、
あんなにファンがいるんだね。
ばなな うん。
たけのことかは、
そうはいかないですもんね。
煮崩れてたりしたら全然味がちがっちゃうから。
糸井 あ、そういうのオレにとっては、コロッケだわ。
コロッケにまずいのは、
あんまりないんじゃない。
最低の中に最高が入ってるっていうのは、
すごい言葉だと思うなぁ。
あらゆる場所にあるよね。
それね。
ばなな うん、そうそう。
そうなりやすいものは、
まぁ、まずくても食べられる。
糸井 オレ一生忘れないわ、その言葉。
その通りだ。
ばなな 一生それで、食べ続けてください。
糸井 作家に会ってよかった。
食いものは、まったくそうだわ。
オレいままで
「まずいのも、うまいんだよ」って言ってた。
「まずいうまさがあるんだよ」とか。
そういう言い方してたけど、
でもね、やっぱり、ちがう。
ばなな すっごくまずくても。
「まずいおいしさ」はない。
糸井 ほら、あそこの、餃子屋。
ばなな 浅草の?
糸井 そう!
あれね、おいしいとほめちぎれないんだけど、
‥‥おいしいんだよ。
ばなな あれ、おいしいですよ、やっぱり。
肉いっこも入ってないのね。
糸井 入ってない。
飯島 ええ?
糸井 でも、うまいんだよね。
飯島 へぇー。
糸井 あれ、砂糖入れてないかな。
ばなな あと、やっぱり、
にんにくもすごいんですよ。
糸井 そうかね。
ばなな あと、刻み。
フードプロセッサーかけてないと思う。
中がどろっとなってる。
糸井 ねっとりしてる。
飯島 へぇー。
野菜餃子なんですね。
糸井 そうそう。カリーンとしててね。
このあいだ、久しぶりに食ったんだけどね、
やっぱうまかった。
ほかのものはふつうなんだけど、
餃子は「あれ思いだしちゃうね」
ってくらい、うまい。
ばなな でも、肉餃子はまずい。
解せないんですよ。
飯島 そこに肉を入れたら
おいしくなるに決まってそうな
感じですよね。
糸井 でも、コロッケも肉入れすぎて、
まずくなるのけっこうあるよ。
ばなな ああー、ありますね。
飯島 たしかに餃子は肉を入れ過ぎると、
ちょっと硬くなります。
ばなな うんうん。
糸井 あと、ハンバーグ料理になるんですよ。
肉入れると。
ばなな たしかに。
糸井 でも、餃子ってハンバーグ料理じゃないような
気がするんだよね。
皮料理なんだと思うんだよね、ほんとはね。
飯島 そうですね。
ばなな そうですね。
糸井 いま、わかったのは、やっぱりね、
何料理っていうの、
まちがってる人が多いんだよ。
餃子は肉料理だと思ってる人がいると思う。
ばなな おいしいの食べてなかったら、
わかんないかもしれない。
糸井 ラーメンもさ、ほんとは、
魚料理なのか、肉料理なのか、
っていうような分け方を
していいと思うんだ。
ほぼ日 糸井さんが好きなのは
かつお・昆布だし系の
ラーメンですもんね。
そうすると魚料理として好き、
というふうにも言えます。
糸井 ところが「ラーメン」って言っちゃうと、
もうわかんなくなっちゃう。
ばなな わかんなくなっちゃう。
糸井 そうなんだよねぇ。
ばなな 糸井さん「今日のダーリン」で
もう、あんまり食べるのはよす、
みたいなこと書いてないですか(笑)。
糸井 今週はひかえる、って、書いた(笑)!
ばなな そうそう、そうそう。
いま語ってるの聞いてたら、
絶対無理だ。
糸井 どうしよう(笑)。
飯島 いまのいままで忘れてた。
ばなな わたしも忘れてた。
糸井 オレ、ここ来る前に、
おにぎり食べてるの(笑)。
一同 (爆笑)
ばなな つらい告白を‥‥。
糸井 今日、対談だっていうから、
もしかしたら、
食わないってこともあるかもしれないじゃない。
飯島 そんなことないですよ!
糸井 ばなな先生がいらっしゃるんだから、
たぶん、食べるんだろうな、と思ったんだけど、
ばなな 食べますよ、わたしは。
誰がなんと言っても。


(揚げ物好き自慢から、
 意外と深い話に‥‥
 ところで糸井重里に
 「大食いですね」というと
 たいへん、むずかしい顔をします。
 そうは思っていないそうです。
 つづきます!)

2009-05-29-FRI


(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN