第5回 エネルギーレベルの高さ。

「はたらく」ということに関しては
大きく、みっつくらい見方があると思うんです。

ひとつは、個人の問題。
自分が食べていかなければならないということ。

「わたくしから発して
 わたくしに戻って来る話」ですね。

糸井

はい。

伊賀

若いころ吉本隆明さんが言った
「ほんとうに生きていくのに困ったら
 泥棒したっていいんだぞ」
という、
あの台詞は簡単には否定できないと思うんです。

糸井

ええ、ええ。なるほど。

伊賀

ふたつめは、関係の問題。

他の人たちとの関係のなかで
どういうふうに生きていくか。

最後は「為政者」の話す「はたらく」で
「職のことでみんな困ってるけど、
 これからの職業はどうあるべきだろう」
という、いわば制度論。

このみっつの問題が、
ごっちゃに語られているんじゃないかな。

糸井

個人の問題と、関係の問題と、制度論と。

伊賀

とくに制度論のところが難しくて、
二十歳そこそこの若い子が
「この国のはたらき方はどうあるべきか」
とか
「未来はさらに格差が広がっていくけど
 どうしたらいいのか」
みたいなことを
考え過ぎてるような気がするんですよね。

糸井

たしかに、そういう子が来たら
面接でも、突っ込んでみたくなりますね。

伊賀

あ、そうですか。

糸井

だって、
大切なのは「何がしたいの?」ですから。

でも、そこのところがないままに、
「世間のはたらきかたが
 ちょっとおかしいと思うんです!」
とか言ってるのは
ただの評論家になっちゃうというか‥‥。

伊賀

評論家でめし食ってるんだったら、
いくらでも評論して
原稿料を稼げばいいと思うんだけど、
原稿料も出ないのに
「このままでは日本はダメになる!」
って言ってるのって‥‥
「で、君は何の仕事してんの?」と聞きたくなる。

糸井

日本を憂うという‥‥趣味?

伊賀

会場:(笑)

糸井

その幻想を一回‥‥。

糸井

解きほぐして。

伊賀

では、役に立ちそうなことも
少し聞いておこうと思うんですけど、
「門の中に入れる人」には
どういう要素があると思ってますか。

糸井

非常に逆説的なんですが‥‥
面接のあと、
5分か10分くらいで記録をつけていると
言いましたけど、
記録を取らないと忘れちゃうような人って
結局、残らないんです。

私が採用を決定しているわけじゃないので
「結果論」なんですけど、
覚えられているか、覚えられていないか。

たくさんの志望者の中で
私に「覚えられている人」というのが
ごくわずか、いるんです。

そういう人が入って来るんですよね、結局。

伊賀

記録には、なんて書いてあるのかな?

糸井

うーん‥‥一概には言えないですね。

ともかく、
「もう一度、この人と会ってみたい」と
思ってもらえないと、
コンサルタントは「サービス業」なので。

コンサルタントとして
忙しい社長の記憶に残らないのでは
ダメですから。

伊賀

うーん、伊賀さんが次の人に見せる書類に
何が書いてあるかを知りたいなあ。

「リーダーシップ」
みたいなことが書いてあるはずがないんで‥‥。

糸井

そのことについて
守秘義務の部分をクリアしながらお話するのは
ものすごく大変です(笑)。

でも、まさしく「核心」の部分ですので、
お話しすると、
まず、とっても大きな項目として
「エネルギーレベルの高さ」があります。

40分間、1対1で話をしていると
わかるんですけど
熱いなっていうエネルギーを持っている人は
やっぱり、いるんです。

伊賀

そう言えば、
僕の知っているマッキンゼー出身者は‥‥。

糸井

すごいでしょ。

伊賀

うるさいくらいですよ(笑)。

糸井

あはは(笑)。

伊賀

つまり、迷惑なくらいにうるさい方が
コンサルタントにはいい、と。

糸井

そうですね。
まず「エネルギーレベルの高さ」です。

伊賀

<つづきます>
2013-09-04-WED