「ほぼ日」中年陸上部 マイナスからのランニング。
17 ベイちゃんが新宿シティハーフマラソンに出走したぞ。
〜前回のあらすじ〜

東京マラソンまであと1ヶ月。
初めてのフルマラソンにのぞむ、
宇宙部ベイちゃんのために西本が組んだメニューは
1月に30kmとハーフマラソンの
2本に出走するというもの!
「レースを練習として利用する」
ということであるらしい。
30kmを2時間56分で完走したベイちゃんは
果たしてハーフマラソンをどれくらいで走れたのか?
西本 さて、新宿シティハーフマラソン。
走ってきましたよ。
ふたり わー、パチパチパチ。
シェフ 新宿シティマラソン‥‥。
国立競技場をスタートして
イチョウ並木を往復してから
外苑東通りに出て、
新宿区内のやたらとアップダウンが続く
あの、おそろしいコース‥‥。
ベイ、おそろしい子‥‥。
西本 月影先生ですか。
シェフ よくわかるね。
西本 『ガラスの仮面』は読んでます。
べっかむ3 ふだんは歩くことのできない
御苑トンネルが走れるからと思って
喜んで参加したけど、
二度と走りたくないくらいの
タフなコースだったよね。
シェフ 楽しみにしていた御苑トンネルだけど、
ぼくらは足切りにあって、
走れなかった!
西本 あのコースはホントきついですよね。
去年も最初のアップダウンで
心が折れそうになりましたもん。
シェフ にしもっちゃんでも、やっぱりきついの?
西本 そりゃ、きついですよ。
ハーフはフルマラソンとは
全く別物で走り方も全然違うんです。
フルマラソンは30km過ぎまでとにかく
楽に走ることに徹して
最後の5〜8kmを頑張ればいいんですが、
ハーフマラソンは2〜3kmで身体が温まったら
あとはゼーゼーハーハーいいながら、
全力で走り抜けるという感じなんですよ。
とはいえ、今回はベイちゃんの手前、
しっかり頑張って走ってきましたよ。
べっかむ3 1時間29分13秒?!
シェフ こりゃ、にしもっちゃんにとっても
良いタイムなんじゃないの?
西本 去年は同じコースで
1時間31分かかってましたからねー。
2分短縮です。
ハーフマラソンの自己ベストです。
そしてベイちゃんがこちら!
ふたり 1時間46分52秒! ひえーっ!
シェフ ベイちゃん、走り始めて3ヶ月で
ここまで走れるとは‥‥。
西本 練習だと、なかなかここまで追い込めないけど
レースだとこれくらい走れるものなんです。
シェフ でもなんかベイちゃんって根性が違うよね。
おれは、むりだー。
西本 継続的に練習ができているので
体重も落ちてきていたことも
関係していると思いますけれど。
シェフ ぎくっ(腹をさする)。
べっかむ3 30kmのレースの後、
ハーフマラソンまで
どれくらいだっけ?
西本 2週間でした。
その間のベイちゃんの練習とケアメニューは
こんな感じです。
  ●少なくとも週5日は走ろう。

●疲れをとるために平日はゆっくり40〜60分。

●週末の土日は90〜2時間くらい、
 これもゆっくり走ってみる。

●ジョギングの最後には8割くらいの力で
 100mほどのダッシュを
 3〜4本入れて終わること。

●30km走ったことで、
 足裏の土踏まずが落ちてきたり、
 ふくらはぎが固くなっているはずなので
 風呂あがりには土踏まずやふくらはぎをもんで
 常に柔らかくしておくこと。
西本 けれども実際は、
30キロ走ったあとの火曜日から
ベイちゃん、風邪を引いちゃって、
風邪を直すのに精一杯だったりもしたんです。
ちょうど1週間後の日曜日に10キロ、
直前の木・金に5キロずつしか走っていないんですね。
あとの日は意識的にストレッチを毎日続けてました。
日、木はキロ6分15秒ペースくらいでゆっくり走って、
金曜日の5キロだけは刺激をいれようと
キロ5分ペースで走ったそうです。
シェフ 西本メソッド通りには練習ができず、
しっかり休養をとったという感じだね。
それでもこれだけ成果が出ているってすごいよ!
西本

それから、そうそう、
シューズを軽いものに変えたんですよ。
30kmのレースの後に。


勝負シューズのニューバランスのM1090
シェフ これは、前のが合わなかったとか
そういうこと?
西本 いえ、そうではなくて、
軽いシューズにすることで
タイムを縮めたいんです。
けれどもこれって両刃の剣で、
シューズを変えてしまったために
それまで使っていなかった筋肉を
使う可能性もあるんです。
べっかむ3 練習してない部分を使うってことかなあ。
西本 軽いとペースも上がるんですが、
シューズに慣れずにいきなりペースをあげて走ると
間違いなく故障しちゃいます。
だから、この2週間も新しいシューズに脚を慣らすために
この2週間もLSDだけでトレーニングを組んでます。
ちょっとだけ違うのは、最後にダッシュを入れたこと。
べっかむ3 最後にダッシュ‥‥つらい‥‥。
西本 いわゆる「流し」と呼ばれるものです。
シェフ 流しって、そうめんとか、ギター弾きしか浮かびません!
あと精霊流し。さだまさし。
西本 (クールに)ちがいます。
最後にピリッと速い動きを取り入れておくことで
体や心肺に軽く刺激が入るんです。
つまり、これまでスタミナ重視で
じっくり走り込みを続けてきましたが、
最後にダッシュを入れることで
スピードの感覚を身体にいれておくのが狙いです。
べっかむ3 100mダッシュくらいで
スピードがつくのなら、
ぼくでもできそうだな。
シェフ だからー、ジョギングの最後にダッシュはつらいって。
西本 毎日走っていると、どうしても
「身体が重い」とか、
「今日は気分が乗らないな」という日がでてきます。
そんな日はゆっくり長く走るのをきりあげてもいいです。
ただし最後にダッシュを数本いれておくと、
次の日はスッキリ走れたりしますよ。
シェフ なるほどね‥‥。
ダッシュだけならやってもいいんだけどな。
西本 そのメンタリティが不思議なんですけどね。
じっさい武井さん、ジムで坂道ダッシュとか
やってますよね。
シェフ そうそう、10秒坂道全力疾走みたいなやつ、
トレーナーがやれっていうからやってる。
けっこう楽しいよ?
西本 それができるのに
ジョギングが続かないんですよね‥‥。
シェフ こらえ性がなくてね‥‥。
西本 それはともかく、
ベイちゃんは、あとは脚のメンテナンスです。
30kmを走っても筋肉痛にはならない身体はできたけど、
やっぱり、疲労がたまっているんです。
べっかむ3 そりゃそうだ。
ひと月に2本レースに出たら!
西本 盲点なのは、足裏とふくらはぎです。
土踏まずが落ちて偏平足みたいになっていたり、
ふくらはぎをさわってみると
ちょっと固くなっていたりします。
いくらゆっくり走っていても
最初に衝撃を吸収する足裏やふくらはぎが
疲れたままだったら、
着地の衝撃が吸収できずに
膝や足底をいためてしまうんですよ。
シェフ ぼくが去年、湘南を走るときになった
「足底筋膜炎」もそうだった。
あれ、痛いよー。
西本 まさにそれですね。
足底筋膜炎は厄介な怪我でなかなか治らないんです。
最低でも3週間は走れない。
3週間走らなかったら
また、ゼロから身体を作り直す必要がありますからねー。
シェフ はい、それがいまのわたくしです!
   
ハーフマラソンの走り方
西本 さて、今回、
スタート前にベイちゃんに伝えたのは
以下のようなことです。
  ●気温があがりそうだから、
 朝、起きたときから、
 水分をしっかりとるようにすること。

●自宅から最寄りの駅でトイレ。
 最寄りの駅から国立競技場近くの駅でもトイレ。
 トイレが空いているうちに
 何度でもトイレに行っておくこと。

●最初の5kmまではアップダウンが厳しいから
 アップをしてるくらいのつもりで自重。

●5km以降は、ちょっとペースが速いかな?
 という人を見つけて、
 その人にひっぱってもらうつもりでついていく。

●10km〜15kmくらいできつくなったときは
 ペースを落としてもピッチ(脚の回転)だけは
 落とさないこと。

●歩道側だけを走らない。
 道幅をいっぱいに使って最短距離だけを走ること。

●残り5kmになったら全力で。
 できれば110分をきれるようにゴール。
べっかむ3 ぼくらがハーフマラソンを走ったときと違って
かなり細かいね。
シェフ ぼくらのときは「たのしんでくださいッス」
みたいな感じだったよね!
西本 ちなみに水分やトイレについては、
ちょっと細かすぎる指示ですが、
これも東京マラソンのリハーサルを兼ねてのことです。
スタート直前に水を飲んでも、
それは身体に吸収されなくて
全部、汗になって流れていってしまう。
なので、朝起きたときから、
時間をかけてちびちび水を飲んでおくことで
身体に水分をためておく必要があるんです。
前回の30kmのレースでベイちゃんは
軽い脱水症状になって脚をつっていましたから
その対策をしっかりリハーサルしておこうと。
シェフ ふむふむ。
西本 そして、東京マラソンの本番当日、
スタート地点付近のトイレは激混みです。
列に並んでいるうちにスタート時間を迎えちゃった、
なんてことを防ぐためにも、
会場に着く前にトイレに行く。
「トイレマネジメント」という習慣を覚えておくんです。
シェフ トイレマネジメント!
ビジネス書みたい!
『もし宇宙部のベイちゃんが
 トイレマネジメントを学んだら』
ってタイトルでアマゾンにありそう!
べっかむ3 ないけどね。
それにしてもここまでの指示は
どんなマラソン教則本にも書いてないかもね。
シェフ 最初の5kmは自重、っていうのは?
西本 去年、ぼくはこのコース。
前半の坂をなめてて、
後半撃沈気味だったんですね。
5km地点まで自重して我慢できれば、
もっといいタイムで走れたのになあ、
という去年の反省を含めて
「5kmの四谷での給水までは自重。
 そこからはペースアップ!」
という指示を出したんです。
ぼくもそのとおりに走って自己ベストです。
べっかむ3 なるほどなー。
歩道側だけを走らない、っていうのは‥‥。
西本 周回コースですし、
アップダウンだけでなく、
何箇所もカーブのあるタフなコースですから、
コース図も読み込んで攻略することが必要なんですよ。
たいていみんな、歩道の左側を走っているでしょう。
でも、それが最短とは限りません。
そういうときはちょっと遠くを見て、
道路の道幅をいっぱいに使って
最短距離を探すんです。
シェフ たしかに、
きついとどんどん歩道側に寄ってしまうよね。
歩道側は道が傾いているから
本当は走りづらいはずなのに、
なんでだろう?
西本 そうなんですよ。
きつくなってくるとどんどん思考が停止するから
前のランナーの流れについていこうとしがちなんです。
だからなんとなくみんなが左側に寄ってたりする。
けれど遠くを見て、
「つねに最短コースを走るんだ」
「ピッチだけは落とさないぞ」
ということを考えていれば、
冷静さを保ったまま、
走り続けることができるんです。
そうすると、身体がきつくなっても
リカバリーが可能なんですよ。
シェフ なるほどね。
今回、ベイちゃんはハーフマラソンを
1時間46分52秒で走れたわけでしょう。
これって、1kmあたり、
5分〜5分5秒くらいのペースじゃない?
1km5分40ペースがフルマラソンのサブ4だから
ベイちゃんは余裕でクリアできるんじゃない??
すごーい。
西本 これが、そうはうまくいかないのがフルマラソンなんです。
ただ、30kmとハーフを走ってみて、
残り3週間のベイちゃんの
仕上げ方の方針がわかりましたよ。
べっかむ3 というところで、また次回!
シェフ ベイちゃんの直前3週間の仕上げとは何か?
おたのしみにー!

(つづきます!)
2014-02-04-TUE
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