忘れないうちに書いておかなくっちゃ。 ほぼ日リニューアル物語

第6回 さぁ、デザインだ!
足かけ2年にわたる
リニューアルプロジェクトもいよいよ大詰め。
「人」の問題も、「裏」の問題も、
どうやら見通しが立ち、
残るはいよいよ「デザイン」です!

わたしたちが洗い直した結果、
「デザイン」によって
解決しなければならないテーマは
3つのエリアをバランスよく配置することでした。

ひとつは、「今日のダーリン」
ひとつは、「コンテンツのもくじ」
ひとつは、「ストア」

この3つを読みやすく、
かつムダを少なく、レイアウトすれば、
「長い」「わかりづらい」「読みづらい」
と言われたトップページを
リニューアルできるはず!

とりわけ、大きなスペースを占める
「今日のダーリン」と「コンテンツのもくじ」を
どういう配置にするかがカギになりそうです。

ということで、ここからは、
ぐっさんによる膨大なラフと
チームのメンバーによる意見の出し合いになります。
たとえば、こんな案ができました。



「縦にスクロールが長い」という
従来のデザインの不便さを解消するために
最初っから、上下にわけちゃえ! と。
上下のブロックはワンクリックで
ぴょんぴょん行き来できるようにしてみました。
さらに、各コンテンツは四角い窓の中に入れて
それぞれメニュー紹介を読むというより
見た目の印象で感覚的にクリックする!
という発想です。が。ですが。が。

「これ、読む人は、どっちをメインに考えるの?」
「はじめて読む人が『今日のダーリン』だけ読んで
 コンテンツの存在に気づかないんじゃない?」
「『今日のダーリン』がすごく長い日は、
 スクロールしたうえにジャンプするっていう
 わかりづらい操作になっちゃうよ」
などと異論が出て、あえなく不採用に。

それからこんな案もありました。
「コンテンツのもくじ」の部分は、
最初っから全部見えるわけじゃなくて
クリックすると現れる、というパターン。

sample1


この案は、一時期チーム内で
けっこう人気がありましてね、
「よおし! この方向で進めるぞ!」と
「今日のダーリン」のエリアと
「コンテンツのもくじ」のエリアを
どう重ねるかという動きのパターンを
いくつかつくってたんですよ。

sample2


sample3


sample4


ほーら、こんな感じに。
みんながノってる感じがわかるでしょう?
当時、メンバーは左側の四角の部分を
「筆箱」と呼んでまして、
「リニューアル記念に
 特製筆箱をプレゼントしよう!」
なんていうことも
(かなり)本気で話し合われてたんです。

そんなふうに舞い上がっていたわたしたちに
がつんと冷静なツッコミを入れてくれたのが、
当時まだまだ新人の、リンリンでした。
「できた! 筆箱システムでいこう!」と
盛り上がった会議の翌週に、
リンリンからメンバー全員に
つぎのようなメールが届いたのです。


みなさま、おつかれさまです。
今日、sample3と4を動かしたとき、
ちょっとびっくり&混乱してしまいました。
(あのときはそこまで思わなかったんですが)
2つもあたらしい枠が出てきて、これはなに??
ここ、クリック前は何があったところだっけ?
と思いました。
それぞれのページの関係性が
感覚的に理解しにくいのでは、と不安です。

た、たしかに‥‥。
いま見ると、このデザインは
「なんだこりゃ?」っていうところがありますね‥‥。

新人のリンリンをプロジェクトに入れたのは
「入社したばかりで、
 まだ抱えてる仕事が少なかった」
というのが、いちばんの理由なんですが、
その新鮮で冷静な視点が、
しばしばわたしたちを助けてくれました。

当時、どんなふうな気持ちで
プロジェクトに関わっていたのか、
ちょっと聞いてみましょうか。

入社後、はじめて参加したプロジェクトだったので
みなさんのアイディアから会議の進め方まで、
ほんとうになにもかもが新鮮!でした。

ナカバヤシさんに言われて
議事録を書くようになったのですが
次のMTGまでにだれが何をするのかってことが
わからないまま終わった回もありましたし、
最初は正直とまどうことも多くて・・・・。
でも、何回か参加するうちに
ゆるゆると決まったことでも
次の回には、ラフができてたりするってことが
わかってきて、それもすごいなと思ってました。
前の会社では、
もっとしっかり決めてからやりはじめてたんで。
(ていうか、普通の会社はそうですよね?)

で、筆箱のときも、
ラフがいっぱいできて、
一時「ワーッ!」っと盛り上がったんですけど
時間が経ってから「あれ?」と思ったのを
正直に言ってみたら、
意外と受け入れられたというか・・・・。

「うわー、いいねー!」
と、盛り上がったデザインやアイデアも、
一週間経つと
「あれ? なんかちがうかも?」
という気がする。
そんな一進一退を全員で繰り返し、
それでも、なんとか、
決裂せずに話し合いを続行します。

そして、時は過ぎ、
秋が終わり、冬が来て、春を迎えようとするころ、
チーム内で話し合ってきたページのサンプルが
ようやくひとつのかたちになりました。

「‥‥できたんじゃない?」
「‥‥いいんじゃない?」
「‥‥大丈夫?」
「‥‥大丈夫、だと思うけど」

最初の敵は、あ、いえいえ、失礼、
最初のお客様は、身内です。
読者のみなさんにお披露目するまえに、
糸井を含む、スタッフ全員に見せてみて
「いいね!」と言ってもらわなければ
「新しい『ほぼ日』」といえるわけがありません。

というわけで、スタッフ全員を集めて
ついに最初のプレゼンをする日が
やってきたのです‥‥。


(つづく)



2007-09-24-MON