GO!なひと/vol.02 ミロコマチコさん GO!なひと/vol.02 ミロコマチコさん
「GO!なひと」は、さまざまな地域に
通い続けている人や、
移住した先で活動している人を訪ね、
その土地とのかかわりや、日々の生活について
インタビューする新シリーズです。

第2回は奄美大島で暮らす
ミロコマチコさんにお話をうかがいました。
大阪で育ち、東京生活を経て、
たどりついた奄美での暮らしは、
「島から出たくない」と思うほど
日々が充実しているのだそう。

そんなミロコさんは、ただいま開催中の
第一回 前橋国際芸術祭 2026に参加されており、
作品を展示されている白井屋ホテルさんで
お会いしました。

聞き手はほぼ日のやすなです。
ほぼ日GO!とは、
ほぼ日が、日本全国の地域の方々と
幅広くて自由なコンテンツを作り、
更新していく場所です。



文・藤田亜紗美
第2回 つながることで安心が生まれる
──
ミロコさんは大阪で育って、東京に移られて、
その後、奄美に移住されていますよね。
奄美大島に惹かれはじめたのは、
どういうタイミングだったんでしょうか?
ミロコ
東京には11年くらい住んでいたんですけど、
その間にいろいろ不安なこともありました。
東日本大震災のときに、都会の生活って
すごくもろいんだな、と思いましたね。
中学生のときには阪神大震災を
経験しましたけど、そのときは家族もいましたし、
自分が「ここだ」と思う場所にいられました。
でも、東京という場所は、友達がいても
隣に住んでるわけじゃないし、
いざというときに何を頼ればいいかわからない。
野菜も、ふだんはお金を払って手に入れているから、
「スーパーからなくなっちゃったら、
食べることもできないんだ」
と愕然としました。
写真
──
ああ。
ミロコ
でも、絵を描いているときだけは、
そういうことを忘れられました。
私の作品に動物の絵が多かったのは、
体ひとつで暮らしている生きものに
憧れていた、ということに気づきました。
──
そういうことだったんですね。
ミロコ
動物だけでなく、植物もですけど、
描いている間はその気持ちになっているんです。
狼のように力強く大地を駆けていけるぞ、
みたいな感じで。
でも、絵を描き終わると、
「もし今晩、大地震が来たらどうしよう」
というような気持ちになって
眠れないこともあって。
それで、これはもっと生きる力を
身につけなくちゃだめだと思って、
東京じゃないところに住みたくなったんです。
どこでもしっかり生きていける人は
たくさんいると思うんですけれど、
私はどうしても周りに流されちゃって、
なかなかできなかったから、
住む場所を変えるしかない、と思って。
──
住む場所を変える。
ミロコ
はい。出張に行く先々で、
住みたいかどうかという目線で見ていたんですけど、
私は大阪出身なので、
やっぱり西の方が合う。
四国とか九州もいいなと思っていたんですけど、
あるとき訪れた奄美大島に
ものすごく惹かれてしまったんです。
それで、自分でもびっくりですけど、
突然、南の方に住むことになりました。
写真
▲奄美大島の伝統行事、舟こぎ競争のようす
──
奄美大島に惹かれた理由は
どういうものだったんですか?
ミロコ
暮らしている人たちが、
なんというか、ものすごく感覚が鋭かったんですよ。
自然の力が圧倒的で、
人は自然に合わせないと
生きていけないところなので、
「自然をとらえる力」がすばらしいんです。
「私に必要なのはそれかも」と思って、
奄美で暮らしながら絵を描きたいと思いました。
写真
──
実際に住む家も、
自分たちでつくられたんですよね。
ミロコ
はい。それもまったく予想外なことだったんです。
夫が東京で工務店をやっていたので、
知識がゼロではないんですけど、
それでも、設計は友達に頼んで、
建具はここで、漆喰はあそこに頼んで‥‥というふうにいろいろ考えていました。
でも、島に行ったら、自分で
なんでもやっている人がたくさんいたんです。
──
そうなんですね。
ミロコ
「そういえば、家って人間が建てているから、
私たちもできるんじゃない?」って。
それで、「やってみよう」となったんですけど、
まあ、さすがに棟上げまでの工程は
素人じゃ危ないし、
周りの人たちにも止められて、
「じゃあ、棟上げまでは大工さんと一緒にやろう」
ということになって、お願いして。
そこから先は、うちの夫がコツコツ作って、
友人たちや私もお手伝いしながら
家を建てていきました。
──
台風など、自然の大きな力を受ける場所ですから、
ワクワクする気持ちだけじゃなくて、
緊張や不安もあったのではないでしょうか。
ミロコ
そうですね、不安はあるにはあるけど、
日本全国どこにいたって
何が起こるかわからないなと。
でも、住んで気づいたことなんですけど、
地域のコミュニティがあるということは
すごく安心感があるんですよね。
みんな自然に合わせて生きているから、
家の建て方も、
「台風に負けないように頑丈に」
という考え方じゃなくて、
「屋根は飛ぶときは飛ぶよ」みたいな感じで(笑)。
──
飛ぶときは飛ぶ(笑)。
写真
ミロコ
「飛んでも誰でも直せるように
トタンにしよう」とか、
「どこにでも売っている材料で、
誰でも直せるやり方にしておいたほうがいい」
ということも学びました。
台風のときも、もちろんみんなで助け合います。
家の前の木が倒れて道路がふさがってしまったら
集落のみんなが
チェーンソーを持って駆けつけてくれるし、
そういうネットワークがちゃんとあるから、
何かあっても大丈夫って思えます。
──
反対に、都市部に住んでいると
周りの人と無理に関わらなくてもいいという
気楽さもありますよね。
その距離感に慣れていて、
濃いネットワークにはうまく溶け込めない方も
いらっしゃいますが、
ミロコさんはいかがでしたか?
ミロコ
それは本当にびっくりで、
私も人づき合いはあまり得意じゃなかったし、
なんなら、奄美に引っ越すときは、
もう自分たちだけで生きていきたい、
くらいの気持ちで行ったんです。
でも、実は逆で、むしろ人とつながっていくことで
自分が安心するんだということに気づいたんです。
それに、はじめからグイグイと
いっぱい人が来るんですよ(笑)。
──
グイグイと(笑)。
ミロコ
当たり前に「ピンポン」って来るんです。
それが自分でも不思議と嫌じゃなくて。
しかも、田舎暮らしってみんな
「畑やらなきゃ」「海に出なきゃ」
と言う感じで忙しいから、突然やって来て、
「はい、大根」「はい、白菜」
「じゃあね!」みたいな感じで、
野菜だけ置いてすぐいなくなるんです(笑)。
一人ひとりが充実しているから、
わずらわしい付き合いじゃないというか。
写真
──
ああ、関心の向け方が、
ちょうどいい感じなんですね。
ミロコ
そうそう。だから心地よかったのかもしれない。
そして大根をもらったら、
自然と「お返ししたいな」って思うことで
またつながっていく。
私にできることは本当に少ないんですけど、
それこそ夫はちょっとした工事ならできるから、
近所の人に頼まれて家の修理をしたら、
そのお返しにまた野菜をいただいて‥‥
という具合にうまく暮らしの循環になじんでいます。
そういう得意分野を交換するコミュニケーションって、
すごく自然で、わずらわしさが全然なくて、
むしろうれしいことなんだなと気づきました。
(つづきます)
2026-11-05-THU
「第一回 前橋国際芸術祭 2026」で、
ミロコマチコさんの
アートイルミネーション・
インスタレーション作品を展示中です。
写真
「空気に根をおろす」
芸術祭のテーマである「めぶく。」に合わせ、
白井屋ホテルの「グリーンタワー」全体に
ミロコマチコさんのつくる
色とりどりの「空想の種」が根をおろしています。
<展示期間>
2026年9月19日(土)~ 2027年1月12日(火)
<展示場所>
白井屋ホテル 屋外 
グリーンタワー

(住所:群馬県前橋市本町2-2-15)
<点灯時間>
毎日 17:00 ~ 23:00
※昼夜共にお楽しみいただけます。
期間限定企画として、白井屋ホテルの客室内に
ミロコマチコさんの作品が飾られた
「ミロコマチコルーム」が登場するほか、
限定コラボクッキー缶の販売も!
くわしくは白井屋ホテルさんの
Webサイトをご確認ください。