「GO!なひと」は、さまざまな地域に
通い続けている人や、
移住した先で活動している人を訪ね、
その土地とのかかわりや、日々の生活について
インタビューするシリーズです。
第1回に登場いただくのは、2024年に
東京都から長野県に移り住んだ鈴木杏さん。
近年は、俳優としての活動だけでなく、
アーティストとして表現領域を広げたり、
オンラインコミュニティを運営されたりなど、
活動の幅をどんどん広げています。
「予感だけを頼りに決めた」という
移住先での暮らしのこと、考え方の変化、
これからめざしたいことをうかがいました。
聞き手はほぼ日のやすなです。
ほぼ日GO!とは、
ほぼ日が、日本全国の地域の方々と
幅広くて自由なコンテンツを作り、
更新していく場所です。
文・藤田亜紗美
- ──
-
次から次に新しいチャレンジをされたり、
新しい出会いがまた次の活動を生んでいたり、
いいサイクルが回っていますね。
一気にいろいろと聞いてしまいましたが、
今、活動が軌道に乗っている中で、
この先にやってみたいこととか、
何か未来に向けて描いていることはありますか?
- 杏
- 今は、詩を書いてみたい。
- ──
- おお。
- 杏
-
今、アトリエをシェアしている、
メイクアップアーティストであり画家の
早坂香須子さんも、
移住してから絵を描きはじめて、
絵がお仕事になっちゃった、
という方なんですけど、
早坂さんがここの「栞日」さんで展示をしているときに
私もちょっとお手伝いをしていたんですね。
この、今私が着ているTシャツが
展示タイトルなんですけど、
これをデザインしたウチダゴウさんが、
詩人でもあり、詩の教室をやってらして。
- ──
- へえーー。いいですね。
- 杏
-
私は、もともと詩という表現には
すごく興味があるんですが、
「詩ってどういうものなんだろう?」
という気持ちでいっぱいなんですよね。
「恥ずかしくない詩はどうやったら
書けるようになるのか」って。
ちょっと自意識が入っちゃうと
一気に恥ずかしいものに
なっちゃいそうじゃないですか、詩って。
- ──
- 内面を吐露するような。
- 杏
- そうです。
自分が自意識を超えられるという
フェーズがあるから、
詩人は詩を書けるのかな?と思っていて。
- ──
- そうですね。
- 杏
- 自意識を超えるってどういうことなんだろう、
ということにすごく興味があって。
それで、いろんなことが一段落したら、
教室にちょっと通おうかなと思っているんです。
- ──
- 表現方法を模索する中で、
次に詩というテーマがあるんですね。
- 杏
- でもまあ、「またやることを増やすの?」
と思っている自分もいるんですよ。
- ──
- (笑)
- 杏
-
これまでずっと俳優でやってこれて、
そこにいろんなアート活動が加わって、
増えていったらおもしろいかなって。
たとえば画家で、文筆家で、詩人で、
でも畑もやっている人だし‥‥ってなってくると、
そのうち、「鈴木杏って俳優だよね」
という人もいれば、
「画家でしょ?」という人もいて、
「詩人じゃないの?」という人もいて、
「で、結局あの人何なの?」
という感じの老人になれたら
すごくおもしろいだろうなと思っているんですよ。
- ──
- たしかに、おもしろいです。
一つの肩書きに収まらない感じがあって。
- 杏
-
それを少しずつ増やしていきたいなと
思っているんですが、
でも増やすと忙しくなっちゃうから、
昼寝ができなくなっちゃうし。
やっぱり生活も大事で、
せっかく移住して自然の中にいるから、
ぼーっとする時間も確保していたいんですよね。
今、そこの狭間にいます。
やりたいことはいろいろあるんだけど。
- ──
- 一回住む場所を変えて、
やることを絞ったように見えて、
また別の花が開きはじめているというか。
- 杏
-
そうですね。やっぱり俳優業のほうは、
ペースがゆっくりになっているぶん、
逆にアートのほうが動き出しているような感じで、
バランスが変わってきているけど、
でも意外と、自分の中の忙しさの度合いでいうと、
稼働している量は変わってない気がします。
そこの「ついやっちゃう」みたいなことを
どれだけセーブできるかも大事なんだな、って。
- ──
- ちゃんと仕事を大事にするためにも、
暮らしのバランスも考えながら、
表現の幅を広げていきたいんですね。
- 杏
- はい。広げていきたいです。
- ──
-
いいですね。すごく楽しみです。
あの、最後に、ご覧になった方で、
ここに来てみたいと思う方が
いらっしゃるかもしれませんので、この「栞日」さんが、
杏さんにとってどういう場所か、ということを
教えていただいてもいいですか?
- 杏
-
栞日さんは、家からはすこし
離れているんですけど、
車で行ける場所にここがある、という
安心感がすごくあります。
移住するときに、自然とかローカルな暮らし
というのももちろんすごく大事だけど、
文化的なことも必要なんですよね。
私は特にそこが大事で、そう思ったときに、
もちろん街にも文化があるけど、
ちょっと足を伸ばすと、
ここには知らない世界の本がいっぱいあって。
- ──
- ああ。
- 杏
-
「栞日」さんにはZINEみたいなものも
たくさん置いてあるし、
長野のローカルで作っている雑誌もあるし、
「この本、はじめて見た」
みたいな本もいっぱいあって。
すごく手に取りやすいけど、
実はマニアックという本が多いんですよね。
気をつけないと爆買いして、
「積読」が増えていくんです。
ただでさえ山のようになっているのに。
でも、こういういろんなカルチャーに
触れられる拠点があると、
自分の脳内に新しい刺激をもらえて、
すごく楽しいですね。
- ──
-
杏さんが書評を書かれた本もありますね。
- 杏
- そうそう。書評も、近所の友達が
「この本、おもしろそうだと思った」
と言ってくれたり、
「あ、家にあるから読む?」
と言って渡せたり、
コミュニティのメンバーさんも
「書評を読んで気になったから買いました」
と言ってくれたり、
そこでまたつながりができて、うれしいです。
そうすると同じ本を読むことで
共通言語がまた増えるんですよね。
本の世界はおもしろいです。
- ──
- この場所にいる杏さんが、
すごく自然な感じです。
- 杏
- 以前、展示のお手伝いをしていたときは、
しょっちゅうここにいたんです。
気になる本ばっかりあります。
いやー、世の中にこんなに本があふれているって、
すごく幸せなことですよね。
- ──
-
杏さんがこの場所からも
何かをインプットされて、それが誰かに伝わって、
その人の次の一歩につながる、みたいなことが
起きたらすてきですよね。
今日はたくさんお話を聞かせてくださって、
ありがとうございました。
- 杏
- ありがとうございました。
(おわります)
2026-10-19-MON
(C) HOBONICHI