はげはげ日記の  正造さん(94)。  57年つづく、まんが絵日記の物語 なんともステキな本に出合いました。
『はげまして はげまされて』。
90歳を越えるおじいさんが50年以上にわたって
描きつづけてきた絵日記を紹介する一冊です。
ページを開いてみたら‥‥。
日々のエピソードが、ていねいに、あたたかく、
ユーモアといっしょに積み重ねられていました。

わたしたち「ほぼ日」は、
1日1ページの手帳をつくっています。
それは絵日記と同じ、毎日を重ねていくもの。
たのしくつづけるコツがあれば知りたくて‥‥
著者の竹浪正造さん(94)に、お会いしてきました!

それは今年、2月のこと。
われわれは、東北新幹線で青森へ向かいました。


▲そとは豪雪。見渡す大地に根ざす樹木たちは林檎です。

目的は、そう、
「はげはげ日記」の著者、
竹浪正造さんにお会いするために!


▲新青森から奥羽本線、五能線へと乗り継ぎます。

‥‥と、さりげなく言ったり、
コンテンツのタイトルにしていたりしますが、
失礼なことだと思います。
「はげはげ日記」って‥‥そんな名前の本はありません。

そもそもは糸井重里が
「この本はぜったいにおもしろいぞ!」
と教えてくれた一冊、
それが『はげまして はげまされて』でした。

著者のことを調べてみましたら、竹浪正造さんはなんと、
「ツル多はげます会」の創設者であることも知りました。
「ツル多はげます会」、
そのキャッチフレーズは、こうです!

━━禿の光は 平和の光
  暗い世の中 明るく照らす

なんてユーモアあふれる方だろう!
いつしかわれわれはこの本のことを、
敬意と親愛を込めて、
「はげはげ日記」と呼ぶようになっていたのでした。

電車は北へと向かいます。


▲「はげはげ日記」の話をしつつ外を見れば、雪また雪‥‥。

「ついに正造さんに会えるね!」
「どんな人だろう?」
道中、そんな話を繰り返しながら、
われわれは「陸奥鶴田駅」へ到着。


▲正造さんのおうちは、この駅が最寄り駅です。

駅舎を出れば、
赤い車で出迎えてくださったのは、
竹浪正顕(たけなみ まさあき)さん。
正造さんの、お兄さんの、息子さん‥‥
つまり甥っ子にあたる男性です。
この方が正造さんのお宅まで案内してくださいました。

これから訪ねる竹浪正造さん(このとき93歳)は、
現在ひとり暮らしでいらっしゃいます。
甥っ子の正顕さんは、そんな正造さんの普段のお世話や、
今回のような取材のときに、
われわれのようなスタッフを出迎えては
ご案内をされているのだそうです。
TV出演と本の出版で、
取材の数は、もうかなりになると思われます。
この日も正顕さんは終始にこやかに、
われわれの取材にお付き合いくださいました。

さて、そんな甥っ子・正顕さんの運転で、
われわれはついに、
竹浪正造さん(94)のお宅に到着しました。


▲本の舞台にもなっている、まさしくそのお宅がこちら。

車を降りて、玄関をくぐり‥‥
さあ、正造さんにお話をうかがいましょう!

ほぼ日 こんにちはー。
おじゃましますー。
正造さん ああー、これはこれはぁ‥‥。

ほぼ日 いやー、お会いできて光栄です!
はじめまして。
正造さん どうぞどうぞ、あがってください。
ほぼ日 お邪魔しますー。
正造さん 寒かったでしょう。
さあ、そこさ、腰かけてください。

ほぼ日 ありがとうございます。
どうかお気遣いなく。
正造さん こういう狭いところなもんだから。
申し訳ねぇんで。
ほぼ日 とんでもないです、ありがとうございます。
今日は、よろしくお願いします。
正造さん ねえ。
こういうよちよち歩きのおじいちゃんですよ(笑)。

ほぼ日 とんでもない、お元気でびっくりしました。
正造さん こういう場所でね、
ひとりで暮らしておりますよ。

ほぼ日 いやぁ、すてきな飾り付けがたくさんあって、
とてもきれいに整とんされていて‥‥
あ、あれは‥‥?

正造さん ああ、それは、
「禿げの会」でもらった賞状です。
ほぼ日 (読む)あなたは「禿げの会」をつくり
そのユニークな活動は多くの県民に
笑いと元気を与えてくれました‥‥。
正造さん ここがね、わたしは光ってるから(笑)、
まあ、そういう会をつくったりもしています。

ほぼ日 その会の噂も、うかがっていました。
すばらしいです。
ほんとうに‥‥明るいです(笑)。
正造さん ははははは。
ほぼ日 それで(カバンから出す)、この本なのですが。

正造さん ああ、それ。
ほぼ日 『はげましてはげまされて』。
ぼくらはこの本のことを勝手に‥‥
すみません、「はげはげ日記」と
呼ばせてもらっているんです。
正造さん ああー(笑)、いいんじゃないですか、
はげはげですから。
ほぼ日 ぼくらはこれを読んで、
正造さんに会いたくて、やってきました。
正造さん それはそれは、わざわざ東京から。

この本はもう、わたしの日記を
そのまま載せてもらったもので。

ほぼ日 はい。
ご家族のだんらんや‥‥

ほぼ日 誕生、旅立ち、そしてお別れ‥‥。
いろいろな出来事が
ユーモアといっしょにたっぷりと。

正造さん ほんとにたくさんの人に読んでもらって、
ありがたいことです。
ほぼ日 56年間、描きつづけた絵日記。
正造さん もう、57年になります。
ずっとノートに描いてまして、
そのノートも2300冊を越えました。

ほぼ日 2300冊‥‥すごいことですよねぇ‥‥。
正造さん まあ、はい、つづけています。
ほぼ日 あの、この質問は、
もう何度も訊かれてると思うんですけど、
どうして、絵日記をはじめたんでしょうか?
正造さん それは、
昭和27年に、長男の正浩が生まれて、
それが暴れん坊なもんだから、
日記のネタになった。

ほぼ日 ああー。
正造さん ワンパクでなく、素直なおとなしい子であれば、
あんまりネタがないから、
日記は書けません。

ほぼ日 そうでしょうねぇ。
正造さん 正浩はワンパクだったから、
そりゃあ、いくらでもネタがあったんです。
ほぼ日 はい。
正造さん あとは、正浩が大きくなったとき、
「お前はこういうような暴れん坊だった」
っていうことを見せれば、
反省するんでねぇかと思ったの。

ほぼ日 なるほど(笑)。
正造さん 親にこういうイタズラしたとか、
こんなに苦労もかけたということを、
日記で読めば
反省するんじゃないかと思って、
描き始めたのが、日記の第一号です。
ほぼ日 で、反省されましたか、正浩さんは。
正造さん ああー、
ぜーんぜん! ちーっとも(笑)。

(つづきます!)
2012-09-26-WED
    次へ
 
その1 正造さん、はじめまして! 2012-09-26-WED
その2 なんでもないから、描ける。 2012-09-27-THU
その3 人に見せるもんではねぇんですよ。 2012-09-28-FRI
その4 つづけるコツは‥‥。 2012-10-01-MON
その5 はげの会のこと。 2012-10-02-TUE
その6 これからも「はげまして」いただきたい。 2012-10-03-WED
 
正造さんの本は、この2冊です。
『一生一途に』  〜94歳正造じいちゃんの戦争体験記と   57年間のまんが絵日記〜  廣済堂出版/1,365円(税込)   『はげまして はげまされて』  〜93歳正造じいちゃん   56年間のまんが絵日記〜  廣済堂出版/1,365円(税込)
正造さんのまんが絵本、待望の第2弾!
絵ハガキ付きで、この夏に出版されました。
  テレビ朝日の『ナニコレ珍百景』で紹介され、
それがきっかけで出版された一冊です。
26万部の大ヒット!
     
 
感想を送る ツイートする ほぼ日ホームへ
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN