<不定期連載>料理研究家・藤井恵さんと考えるおかあさん、ちゃんとごはん食べてる?
<不定期連載>料理研究家・藤井恵さんと考えるおかあさん、ちゃんとごはん食べてる?
いっしょに考える人 料理研究家 藤井恵さん

藤井恵(ふじい・めぐみ)

料理研究家。
女子栄養大学栄養学部卒業。
大学在学中よりテレビ番組の
料理アシスタントを務める。
大学卒業と同時に22歳で結婚、
25歳で長女、29歳で次女を出産。
5年間専業主婦、子育てに専念し、
30歳でテレビのフードコーディネーターとして復帰。
以来、雑誌や書籍、テレビなどの各種メディア、
講演会などで活躍。
現在、日本テレビの『キューピー3分クッキング』の
レギュラー講師を務める。

藤井恵さんオフィシャルブログ
藤井恵さん公式サイト

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今年83歳になった母は、入院したり、退院したり~。
術後の体調は悪くないようなのですが、
今度は、平らな道で転んで、歯を3本折り、
くちびるを縫合したと連絡がありました。
あっちゃー。
平穏な日はあまり続かないものですね。

でも、やはり家にいる方が
自分のことは自分でするようになるので
少しずつでも、
だんだん元気になっていくように感じます。
また、最近は、
あらかじめ私が行くことを伝えておくと
なんだか以前より、
部屋をきれいにして待っているようにも思ったり。
わたしにガミガミ言われるのに
いい加減、嫌気が差したのかもしれませんが、
その心意気やよし! です(笑)。

そして今回の差し入れは
ポタージュとひき肉ザーサイご飯、
豆腐入り卵焼き、グリーンアスパラ昆布漬け。

▲ 子供のように野菜嫌いな母なので
見えないようにビタミンたっぷりの野菜で作った
かぼちゃと人参のポタージュ
&カリフラワーとじゃがいものポタージュ。

▲ 小分けにしたひき肉ザーサイご飯
お口に合うかどうかは疑問ですが‥‥。

▲ 豆腐入り卵焼き&グリーンアスパラ昆布漬け。
やはり、たくさんの作り置きは
好きではないようなので、1食分くらいずつ。

その後、兄も相変わらず、
ちょくちょく足を運んでくれているようで、
思い通りにならないことがあっても、ムキにならず、
ちょっとくらいの苦笑いする程度で、さらりとかわし、
母をじょうずにのせて、
おつまみなどを、つくらせたりしているようです。
人に寛容な分、自分にも甘いところがある兄ですが(笑)、
やっぱりかなわないな~、と改めて感じ入った次第。

ところで、これは以前、知人から聴いた話ですが、
高齢のお母様と連れだって出かけたとき、
歩幅を合わせるつもりで、テンポを落として歩いていたら、
「あのね、そんなにゆっくり歩いてもらわなくても、
だいじょうぶだけど?」と言われてしまったそう。
先回りして、アレコレ手を出したり、
いらない気配りをしたりするのは、
まさに、わたしも同じなのですが、
場合によっては『大切にしすぎない』ことも、
必要なのかもしれませんね。

そして、今回は懸案の台所のカスタマイズにも、
ちょっとだけ着手。
自分の好きなものを
自分でつくるのも脳トレになるはず、
と大いに期待を込めて、
調味料を使いやすい場所に移動し、
鍋も、手元に近いところに置きっぱなしにできる、
コンパクトなものを据えてきました。

▲ 昔は鏡の様に磨かれていたキッチン。
今はよく目が見えないからでしょうか、
うっすら曇っていました。ちょっと寂しい。

▲ ついでに押し入れをのぞいてみると、
今では、もはや母のライフワークともなりつつある、
ミルキーの包み紙の束。今回も良く集めましたね~(笑)。

母に『押しつけ』と感じさせないような差し入れご飯と、
自分好みの食事をつくって、楽しむという挑戦が、
両輪となって、うまく回ってくれますように!

(次回に続きます)

●メールをご紹介します。(編集部より)

実家の母は、作れそうなものを
(塩鮭を焼くなど、簡単なこと)でも、
お願いされると嬉しそうに頑張ってくれます。
なので、「助かる~!」と言って
おみやげに頂くことにしています。
すると、いつの間にか自分で
半身分の鮭を買い物し、切り分け、
まとめて焼いてラップして
冷凍しておいてくれるようになりました。
昨年、夫を亡くした母、独り暮らしで籠りがちでした。
急な用事で子供と留守番をお願いしたところ、
スイミングスクールの送迎(タクシー)、見学、
一緒に御飯、庭の草取りと奮闘してくれました。
そして本人曰く
「動くと疲れてよく食べるし、よく眠れる」と。
夫や私が庭仕事の手際を大絶賛したら、
後日、菜園も手伝ってくれました。

「体力も手際も私より数段上だわ」と言ったら、
まんざらでもない様子。
老いて夫に先立たれ、自信を失っている親に、
『頼ったり褒めたり作戦』で、
イキイキとした1日を積み重ねていけるような気がします。
こうして『潜在的出来ること』を
掘り当てる嬉しさは格別です。
夫は、鬱々としていた母がお日さまの下、
弾ける笑顔で挨拶したことが嬉しいと言ってくれました。

例え認知症があっても、含蓄のある一言、仕草、表情など、
色んな宝物を掘り当てることが必ずできると思います。
(ひとそれぞれ)

『潜在的にできることを掘り当てる嬉しさ』。
どんなに老いてしまったとしても、
親を親としてずっと尊敬し尊重し、
頼りにすることを忘れずに、
大切にしていかなくては、と心に刻みました。
そして、そのほうがお互いひとりひとりの、
人間としての関わりの中でも、
良い環境をつくることができるのだろうとも思います。
イキイキとした笑顔で過ごすこと、
眉間にシワ寄せていたわたしが
少し忘れかけていた家族としての基本でした。

お母さまがおにいちゃんの好きなものを作ってあげたお話、
涙が出ました。
お母様にとっては
「誰かのためにおいしい料理を作ってあげられること」が
大切な栄養のように、
(藤井さんとお母様の間ぐらいの年のわたしは)思いました。

ただ、余計なことかもしれませんが、
お母様のお台所の主人公は お母様です。

それが 藤井さんから見てどんなに使いにくそうであっても。
台所を変えること、藤井さんのお気持ちはわかりますが、
その計画の主役を藤井さんが演じてしまうことは、
お母様からお台所を取り上げることであり、
それは、お母様が ご自分の人生の主役でいることを
取り上げてしまうことのような気がします。

娘として 心配なさるお気持ち、痛いほどわかります。
お年を召されたお母様の『ために』
あれもこれも、
と気がついてしまうお気持ち、わたしもかつて経験しました。
でも、どうか 藤井さんは
お母様をそっと支えてあげてください。
食べること、暮らすことに関しての主役の立場を、
お母様に委ねてあげてください。

出過ぎたことを書きました、ごめんなさい。
(かえる)

お台所のお話、響きました。
長年ずっと台所に立ち、
家族のために朝ごはん、 お弁当、 晩ごはん 、
そして父が突然連れてきた来客のために
たくさんのお料理を作って来た台所‥‥。
家族がワイワイと集って、
母にとって生活の中心であった場所。
傍からは、どんなに使いづらいように見えても
ずっと使い続けてきた、安心がある場所なんですね。
やたらに踏み込んではいけなかったかも知れません。
また良かれと思ったことが
押し付けになってしまったようです。
母の居場所を大切にしてあげること。
ホントにそうだと思います。
わたしが主役ではなく、
そこに住み暮らす人が主人公であること、
忘れてはいけないですね。
文章の中に、優しさや思いやりを感じました。



励ましや共感のメールを
たくさんいただいていますが、
その一方で、厳しいご意見も
多々いただいています。
でも、その一通一通がまた身に沁み、
ありがたく受け止めています。
(少し落ち込みはしましたが(笑))
この連載では、わたしもありのままに
何も包み隠さずに現状をお伝えすることができ、
そして、さまざまな立場からの
ご意見をいただけることに、
とても意味と価値があると思っています。
お陰様で、ダメダメ娘が少しずつ色んなことを学んでいます。

メールは引き続き募集していますので、
ぜひ、あなたの忌憚のない思いを聞かせてください。

藤井恵さんによる
「おかあさん、ちゃんとごはん食べてる?」は
今回でひとまずおしまいです。
お読みくださったみなさん、
本当にありがとうございました。
よろしければ、ぜひ感想のメールをお送りください。
藤井さんにお届けいたします)