ほぼ日には、見習い乗組員として働いていた
「フェザード・シジュ」という名の
おかしな銀色の宇宙鳥がいました。
その鳥が、ある日活動を止めてしまいました。
Twitterの更新も滞り、
「体調が悪くなったのではないか」などと
心配の声もいただきました。はたして何が起こったのか。
これはそれを解明しご報告するコンテンツです。

ほぼ日の見習い勤務鳥シジュがいなくなった原因が、
物理的にも心理的にも労働条件的にも
避けられなかったことが判明しました。
みうらじゅんさんのお話、今回が最終回です。

みうら
シジュちゃんじたいは、
そんなに重いものじゃなかったでしょ?
ほぼ日
スカスカでした。
みうら
保管の際、倉庫の上に吊っておくとか、
できなかったんですか?
ほぼ日
それはやっぱり「目立つ」ということで‥‥。
みうら
目立ってはいけないんですか?
▲台湾でタクシーを拾おうとするシジュちゃん。
こんなふうに巨大でした。
ほぼ日
いまの世の中、企業にも
断捨離の流れがあるんです。
みうら
ああ、あるでしょうね。
ほぼ日
「捨てちゃいけない」と主張することだけで、
たいへんな罪なんですよ。
みうら
断捨離ってね、ぼくからすると、
やっぱり少しおごった考えなんじゃないかな、
という気がします。
「ものを捨てれば自分は気持ちいいけど、
相手はどうなの?」
ということに気づいていませんよねぇ。
ほぼ日
相手?
みうら
ものの気持ちを無視してるでしょ?
断捨離する人ってもしかしたら、
友だちづきあいもなるべく少なく、と
思っているのではないでしょうか。
ほぼ日
あ‥‥なんとなくわかる気が。
みうら
ものと人間関係は一緒なんです。
それはつまり、
「自分さえよければ」
という考えのあらわれじゃないですか。
ほぼ日
ほんとうだ!
みうら
ぼくはたいへんな数の
要らないものと暮らしています。
人が来たときに「わぁ!」と喜んでもらうために
置いているのです。
それだけのためにこうして、
家を借りてるわけですよ。
ほぼ日
(笑)
▲要らないものと一緒に暮らす。
みうら
それを断捨離をしてしまうと、人に
「こんなのあるよ!」
と、見せることはできなくなります。
断捨離は、
「つまらない家に住んでいる人」のことを
指すのです。
それじゃあ人へのサービスがないですよね。
シジュちゃんだって、
倉庫の奥に入ってたけど、
取り出してきたら、何人かの人は喜んだわけですよ。
ほぼ日
そうですね。
みうら
そこを忘れてますよ。
喜ぶ人がいるんですよ。
それがたとえ1人でもいいじゃないですか。
1人でも喜ぶ人がいる限り、
シジュちゃんは地球にいるべきですよ。
▲喜んでくれる人がいる限り。
ほぼ日
力強いお言葉をありがとうございます。
みうら
1人が根底となって何十万人になるんです。
ほぼ日の倉庫ではそんな目に遭うということなら、
これはもう過酷な使命ですけど、
魂さんが、家に持って帰るのが
いいんじゃないでしょうか。
ほぼ日
え? それはちょっと‥‥。
みうら
自宅が狭くなるけれども、
それしかないと思います。
魂にはその気持ちこそが大切だと思います。
ほぼ日
‥‥じつは、このところ自分自身も、
断捨離人生を歩みつつありました。
みうら
でも、断捨離でいくつか捨てた後だから、
スペースが空いたんじゃないですか? 
それはたぶん、シジュちゃんを置くための
断捨離であったと思うんです。
ほぼ日
家にあるなら、夏休みの間も安心だし、
なんだったら自宅から出張に行けますもんね。
みうら
そうそう、会社にも寄らなくていいんだから。
たぶん会社もそれを望んでるんじゃないですか? 
そうなったら、シジュちゃんの寸法についても
会社は何も言わないと思うんです。
それでなおかつ、倉庫のなかの平等を
訴えていけばいいでしょう。
ほぼ日
シジュのテーマはやっぱり平等主義ですね。
みうら
そうです。
「平等だな、このキャラは」
という印象を与える発言をしていきましょう。
ほぼ日
「どっちが好きですか?」などと言われたら、
「どっちにもいいところがあるだジュ」
と答える。
みうら
最初は「なんだよ意見ねぇなぁ」とか、
みんなに言われることでしょう。
でも、この先々、10年後、ほぼ日の事務所で
もめごとが発生することもあるでしょう。
そのときシジュちゃんは
「ぼくはね、ずっと黙ってたんだけど」
と、立ちあがって言う。
「ぼくのダンボールの事件を覚えているジュかな」
ほぼ日
はっ。
みうら
「悪かった!」
ということになるでしょう。
「業績が悪いから倉庫の奥にあったんだジュ。
でも、それが平等と言えるのかな?」
ほぼ日
「その結果、何が起こっただジュかな」
みうら
「すまなかった」ということになります。
シジュちゃんの平等ささえあれば、
ほぼ日は安泰だし、
みなさんも極楽に行くことができますよ。
ほぼ日
平等主義が極楽行きなんですか? 
おもしろ主義も売上主義もだめでしょうか?
みうら
極楽に行けるのは、唯一、平等主義だけなんです。
なぜなら、比較しないからです。
ほぼ日
ああ‥‥じゃあもう、安心して平等になります。
みうら
ぜんぜん安心されたらいいんじゃないでしょうか。
ほぼ日
はぁ、安心しました。
もう極楽です。
‥‥でもここで、不安なことがあります。
もういちど同じ顔つきのシジュちゃんが
作れるかどうかが不安です。
▲またシジュちゃんに会える日が来るかなぁ。
みうら
お寺の仏像は、よしんば火災に遭っても、
復活していますよね。
そのときにちょっと顔が違っていても、
みんなは決して「違う」とは言いません。
ほぼ日
ああ、そうですね。
みうら
仏像は仏像。
シジュちゃんもシジュちゃんです。
くちばしがなくても、
頭に何かがついていても、同じです。
ほぼ日
そうなんですね。
みうら
ちょっとくらい前と変わってても
いいじゃないですか。
だって、シジュちゃんは宇宙人でしょ?
ほぼ日
はい。宇宙人といえばウルトラマンですが、
ウルトラマンも、
帰ってきたらちょっとずつ変わってると、
町田康さんもおっしゃってました
みうら
そのとおりですよ。
違ってるから、みんな次々と
グッズを買うんじゃないですか。
ほぼ日
グッズもバージョン違いでどんどん
出していけばいいですね。
今日はいろんな勇気をいただきました。
再出発できるようにがんばります。
みうら
はい。
今回のことは、誰が悪いというわけではなく、
関わる全員が油断していたということです。
このニュースをほぼ日で発表するとき、
「あっ」と思う人もいると思います。
こういうことは、はじめてじゃないと思いますから。
ほぼ日
「捨てちゃった」ということ、
これまであったでしょうね。
みうら
この惨劇が、教えてくれた知恵があります。
今後のゆるキャラの全体方針、
「油断しない」
それで決まりです。
ほぼ日
自ら注意深く、おごり高ぶらず。
なぜなら平等主義だから。
みうらじゅんさん、ありがとうございました。
みうら
ありがとうございました。

「シジュちゃん宇宙に還る」
すべての顛末のお話を、これで終わります。

終わります。

終わります‥‥‥だジュ。

▲ひた、ひた‥‥。

あれ‥‥、もしかして‥‥‥?

そういえばもうすぐ4月10日です。
4月10日は「シジュの日」ですね。
TOBICHI東京のスケジュールにも、
「シジュの日」という表示が出ています。

も、もしかして‥‥。

▲ひた、ひた‥‥。

詳細は追って
フェザード・シジュのページでお知らせいたします。

ご愛読、ありがとうございました。

(「シジュちゃん、宇宙に還る。」おしまい)

2018-04-03-TUE