耳で聴くほぼ日の怪談・その10
「車にぶら下げて」
小さい頃から、人に見えない人を、よく見ました。
でも、「怖い」と思うことはあまりなかったのです。
しかし5年ほど前の夏、
ほんとうの「恐怖」に出会いました。
今の夫である彼氏と、夜のドライブに出かけ
高速道路を走っていると、
なんだか急に涼しく感じました。
エアコンを強くしたのかな? と思いながら
なにげなく隣の車線を見ると、
ものすごいスピードで白い乗用車がやってきました。
あぶないなぁ。
と思いよく見ると、
窓という窓が真っ黒で、中はまったく見えません。
でも不思議と、乗っているのは
「若い男性が二人」とわかるのです。
そして白い乗用車は、後ろのドアに、
「何か」をぶら下げていました。
「何だろう?」と思ったとき、
「何か」がこちらを向き、ニタァと笑いました。
「何か」はセミロングの黒髪の、
女性の頭部だったのです。
彼女の首には
ベージュっぽい1cmほどの太さのロープが
からまっていました。
そして、アザもハッキリと見えたのです。
私は視力が悪く、
メガネをかけても、「0.6」程度なのです。
本来なら、ロープの色やアザなんて
見えるはずがないのです。
あとで彼氏に話すと、
「車しか見えなかった」と言っていました。
(N)









