耳で聴くほぼ日の怪談・その1

「黒い靄」

昔から、私は死にそうな人がわかるのです。
葬式を出す家も、わかります。
その周りに、黒く靄(もや)がかかるから。

学生だったころ、
担任の先生に靄がかかってしまいました。

どうしよう! 先生は死ぬんだ!
どうしようもなく怖くなって、
先生に
「病気や事故に、気を付けてください」
と言った翌日、先生の訃報を知りました。
帰宅後、お風呂場で突然心臓が止まったそうです。

お葬式の日は、クラス全員で参列しました。
悲しい気持ちで家に帰り、
自分の部屋に入った瞬間、

「どうして俺が死ぬのを知っていたんだ!」

先生は、自分のお葬式から
ついて来られたのだと思います。

そのときの先生の恐ろしい表情が、頭から離れません。
死にそうな人がわかっても、もう二度と言うまいと、
心に誓いました。

(りん)

朗読版はこちら。
※音声の公開期間は終了しました。

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  • 黒い靄 (ほぼ日の怪談2005 より)  2012-08-01

  • 協力:アクセント(笹森亜希 小林かつのり)
    エンジニア:内田伸弥
2012-09-07-FRI