怪・その26

「泣いているから」



今から10年ほど前のことです。

当時住んでいたのは2LDKの賃貸マンションで、
キッチンのとなりに和室がありました。

その日は、私が夕食の支度をしているあいだ、
2歳の子どもが和室で絵を描いていました。

が、
いつの間にか子どもがキッチンにいて、
和室に向かって
自分の絵を見せるように立っています。

「どうしたの?」

というと

「おばあちゃんが泣いているから
絵を見せてる」

と言います。

和室をのぞいてみても、誰もいません。

「どこにいるの?」

と聞くと、
子どもは部屋の真ん中を指さして

「そこ」

といいます。

ずっと見ていてもやっぱり誰もいないし、
何も感じませんでした。
子どもはとくに怖がる様子もなく、

「知らないおばあちゃんが泣いているから」

と言って、ずっと絵を見せていました。

そのうちに
いなくなったと言って、
子どもは部屋に戻っていきました。

不思議な現象はその時一回きりです。
いまでもたまに、
あれはなんだったのかな、と思い出します。

(みんと)

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2023-08-20-SUN