怪・その5

「人の形で光る」



私が10歳の頃の話です。

2階の祖父母の部屋に仏壇があり、
私は毎晩、その日一日の感謝を
仏様に祈ってから寝る習慣がありました。

その日は祖父母が不在で、
母も一階で家事をしていたため、
私ひとりで仏間に入りました。

いつもは灯りをつけるのですが、
面倒だったので部屋が暗いまま手を合わせ、
部屋を出ようとしました。

仏壇の横に腰高窓があるのですが、
その窓の外に、
人の上半身の形で、
光るなにかがいることに気づきました。

最初自分の影かと思いましたが、
発光していて顔はなく、
ひとつも動きませんでした。

自動車のライトや懐中電灯で
光を当てたような感じではなく、
はっきり、人の形で発光しているのです。

窓の外は、向こう100メートルは
田んぼと畑しかありません。
しかもそこは足場もない二階です。
人がしがみついていたら動くはずだし、
光るって、どういうこと‥‥?

私は急に怖くなって廊下に出て母を呼びました。

「お母さん早く来て! あれは何?」

振り返ってみると、
その光は
肩の下から斜めに消えていくところで、
母が来たときには完全に消えていました。

人の形をした光る正体不明のなにかは、
その後は一度も見ていません。

(こざるまま)

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2023-08-04-FRI