怪・その19
「たくさんの人の音」
今から8年ほど前の話です。
私は中学校の教頭で、
1年生の野外学習の引率責任者として
県内の避暑地に行きました。
そこは、キャンプ場併設のホテルで、
昼間はオリエンテーリングをしたり、
カレーライスを作ったりし、
夜はキャンプファイアをしたりして楽しみました。
キャンプファイア広場の周りは森でしたが、
何となくたくさんの人が観に来ている雰囲気がありました。
子供たちも寝静まったので、教員も休むことになり、
私は一人で泊まる特別室に戻りました。
和洋室でバストイレつきの広い部屋でした。
深夜でしたので、テレビを観ることもなく、
翌日の準備をし終えて、お風呂に入ることにしました。
和洋室に後から嵌め込んだユニットバスだったので
一段上がって、戸を開けました。
その時、耳元でザワザワと
たくさんの人が雑談をしているような、
と言って言葉が聞き取れるようなものでもない音が
聞こえてきました。
もちろん部屋には私一人です。
「ちょっとイヤだな」と思いつつも、
シャワーをささっと浴び、ベッドに入りました。
音が聞こえたのは、
ユニットバスに入るときだけでした。
気のせいだと自分に言い聞かせて寝ました。
翌朝、5時くらいでしょうか、
突然、ベッドがガタガタ音を立てて揺れたので
目が覚めました。
震度2 くらいかなと思いながら、
朝食会場に行きましたが、
誰に話しても「地震なんてない」と言われたのです。
もうあの施設には泊まりたくありません。
(c)
