怪・その3

「後ろにいた少女」



小学一年生の頃です。

入学したばかりでまだ給食は始まっておらず、
午前中で授業は終わり
集団下校をしていました。

隣の区へ越境していた私は、
集団下校の際、
一度母の実家へ寄らねばなりませんでした。

母の実家は都心の環状線添いにあります。
そのため途中で集団から離れ、
いつも一人で歩いていました。

その日も一人で集団から離れ、
友達が見えなくなるまで
後ろ向きで歩きながら手を振っていました。

互いの姿も見えなくなったところで
私は前に向き直り、
一人で家を目指して歩き出すと

真後ろから「ねぇ」と声をかけられました。

直前まで後ろ向きで歩いていましたので、
てっきり自分一人だとばかり思っていた私は
とても驚き、
勢いよく振り向くと
自分と同じ黄色い帽子を被った女の子がいました。

いつの間に後ろにいたんだろうと
不思議で仕方なかったのですが、
その子は
「今日遊ぼう」
と言ってきました。

黄色い帽子だから同い年なんだろうけど
知らない子、クラスも違う‥‥、
いろいろと考えましたが、まあいいかと
「うん、いいよ」と返事をし、
前に向き直り2~3歩進みました。

そこで再度振り向き、
「じゃ‥‥どこで遊ぶ?」

と聞いた時には、
もうどこにもいませんでした。

会話はこれだけですが、
どういうわけか私の真後ろにぴったり付き、
横へ並ぼうとしませんでした。

私に声を掛けておいて家に帰ったのかと、
少し腹が立ちましたが
近くに同世代の子供が住んでいる家はありません。

大きな道路添いですが、
曲がり角は
集団から離れる時に曲がった道だけです。
 
もう40年近く経ちますが、
これだけ鮮明に
この出来事を記憶しているにも関わらず、

その女の子の顔だけは一切思い出せません。
(K)

こわいね!
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2022-08-01-MON