怪・その43

「母の不思議な力」



私が小さい頃の話です。

私が中学生の頃、
一つ上の先輩にKさんがいました。

Kさんのお母さんと私の母は仲が良く、
当時、母からも
「Kさんのお母さんと〇〇行ってくるね」と
よく聞いていました。

ある日、私が学校から帰ってくるなり母が
「Kさんのお母さんが亡くなっちゃったから
お通夜にいくわよ」と言い、
急いで支度をして母の車に乗せられました。

話によると、Kさんのお母さんは昼間、
見通しの良い交差点を歩行中に
信号無視をした乗用車に轢かれて
亡くなってしまったとのこと。

当時、子供なりに、
身近な人が急になくなると
哀しさや驚きを通り越して
キョトンとするものなんだと思ったことを
覚えています。

葬儀場に着き、
並べられた椅子に母と座ると、
祭壇端にKさんのご家族らしき方々が
いるのがわかりました。
その中には、Kさんの後ろ姿もありました。

お通夜がはじまり、順々にお焼香をあげる中、

「あなた、死んじゃったのよ」。

母が泣きながらぼそりと言いました。

母曰く、Kさんのお母さんは
祭壇端の家族の上に浮かんでいて、
家族に向かって手を振っていると。

自分が見えていないことに
気付いていない様子だと言いました。

私は何言ってるんだろうと、
母の発言を無視をしました。

数日後、こんどは、
Kさんのおばあちゃんが亡くなりました。

母は、Kさんのお母さんが亡き後、
旦那さんや子供たちの
負担になってはいけないと思い、
Kさんのお母さんが
連れて行ったのではないかと言いました。

お通夜の時の手を振る光景も、
今思うと、おばあちゃんに向かって
「手招き」をしていたのでは、と。

母の不思議な力に驚きながらも、
当時反抗期真っ只中だった私は、
そのことについて
母に尋ねることが出来ませんでした。

(t)

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2021-09-03-FRI