怪・その3

「ベランダのTシャツ」



これは職場の先輩の体験談です。

先輩は今の職場に入社をして、
関東の支社に配属されました。

会社の独身寮に入居をしましたが、
幽霊や超常現象の類を
全く信じていなかった先輩は、
当時、幽霊が出ると噂があったために
長年空き部屋となっていた部屋に
自ら希望して入居したそうです。

その部屋は長年使われていなかったため、
カビ臭く、埃もたまっていましたが、
日当たりも良く明るい部屋で、
幽霊とは全く無縁な感じでした。

しばらく生活をしてみましたが、
噂の幽霊が出ることもなく、
快適に過ごしていたそうです。

それからしばらく経ったある夏の暑い夜、
当時は部屋にエアコンなども
付いていなかったため、
ベランダ側の窓を開けたままで寝ていると、
夜中の2時くらいに、何かの気配を感じ、
ふと目が覚めたそうです。

何気なく窓を開けているベランダに
視線を向けた時、
物干し竿に掛けっぱなしにしていたTシャツが
視界に入ってきました。

ぼーっとそのTシャツを見ていると、
突然、「にゅう」っという感じで
両袖から腕が出てきたそうです。

あまりに突然のことで
固まってしまった先輩は
目を逸らすこともできず、
じっと見ていると、
歩いているかのようにぶらぶらと
左右の腕が前後にゆっくりと動き始めました。

次第に

「ぶらぶらぶらぶらぶらぶらぶらぶらぶらぶら」

激しく動き、

「カタカタカタカタカタカタ」

とハンガーごと先輩を目掛けて迫ってきました。

ハッと我に帰った先輩は部屋を飛び出し、
助けを求めて同僚の部屋へ転がり込み、
朝まで一睡もできずに過ごしたそうです。

(犬又)

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2021-08-01-SUN