怪・その１

「夜中のランニング」

10年以上前に、私の兄が体験した話です。

兄はダイエットのために
ランニングをしていましたが、
誰にも会いたくないので夜中に走っていました。

ある日の夜中、
近所のお寺の前を走っていたら、
電柱の影から目の前に
突然、おばあさんが飛び出てきて、

すごい形相で何やら意味のわからない、
叫び声のような罵声を浴びせられたそうです。

びっくりしてムッときた兄は
｢何言ってんだ！　あんた！！｣
と言い返して、
そのまま走って帰ったそうです。

次の日の朝、
お寺の近くに変なおばあさんが住んでいないか？
と私と母は兄から尋ねられました。

思い当たる人もおらず、
私がどんな服装だったか聞いたところ、
もんぺをはいた、昔ながらの、
農作業をするような格好だったということでした。

なんか気味悪いね〜なんていいながら
その話はそこで終わりました。

しかし、2日程たって兄がぽつりと

｢この前のおばあさん、人間じゃなかった。｣

と言ってきたのです。

兄が仕事帰りに、
車でお寺の前を通った時に、

あのおばあさんが
うつむいて立ったままの姿勢で
お墓の上の方に浮いているのを見たそうです。

兄はそれ以来その道を通らず、
遠回りして帰って来るようになりました。
（みかん）