怪・その9

「濡れた白い着物」

これは、私が中学生だった頃のお話です。

ふと目が覚めると、
白い明るい部屋のベッドで寝ていました。

右手の窓をふと見ると外は真っ暗で、
下の方には街の明かりが見えていました。

ああ、何故だか分からないけど
病院のベッドにいるんだ。
ずいぶん高い階の病棟だなあと思い、
そのまま窓の外をぼんやり見ていると、

下側から白い手がスッと出てきて
窓枠を外から掴んで
ガタガタと揺らし始め、

ガラッと窓が開いて
白い着物の女の人が
凄い勢いで窓から入って来ました。

黒い長い髪も着物も水でぐっしょり濡れていて、
その人が私の首を絞めようと
こちらに襲いかかってきた時、
ハッと目が覚めました。

夢を見ていたのです。

月明かりが
カーテンの隙間から入ってきていて、
ああ自分の部屋だと実感し
安心したのですが、

右の頭に冷たい何かが当たっている。

目だけをゆっくり
右に動かすと、

見えてしまった。

こめかみの辺りに、
正座した膝がぴったりついている。

それは、ぐっしょり濡れた白い着物。

左前になっている着物の重ねが見えて、
これは夢の中に出てきた女の人だと
すぐに思いました。

声も出ず、
ゆっくり布団を、
その人の間に入れて、かろうじて、
接している状態からは抜け出せましたが、
布団にくるまって震えていました。

あの人は、いつからいて、いつまでいたのでしょう。

(k)

こわいね!
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2020-08-06-THU