怪・その66

「トンネルを出てから」

地元には、いわゆる心霊スポットのような
小さなトンネルがあります。

そのトンネルは、
女性の霊が出る、歩いているなどと
言われておりました。

小学生のころ、
滅多に通る場所ではないのですが、
用があって
母とトンネルを車で通りました。

ふたりで

「ここ出るっていうよねぇ」

なんて話しをしながら
何事もなく通り抜けました。

5分ほど走ったところで、
シートベルトを締めていないことに気づきました。

締めようとしましたが、いくらやっても入らない。

毎日のように、カチンと入れているシートベルト。

壊れたのかと、母も運転しながら
片手で試してくれましたが、
何度やってもカチンと入らない。

通い慣れた田舎の一本道、
横目で見ながら母が運転しつつ
シートベルトを試していた矢先、

車は道路脇の田んぼに落ちました。

幸い雪の季節で、怪我はありませんでした。

落ちた瞬間、
シートベルトはカチンとはまりました。

「お母さん、よそ見しないでよー」と言ったら
母はなんとも言えない顔でした。

家に戻ってから、母は言いました。

ハンドルを切り損ねたのではない。

ハンドルが突然重くなって動かなかった。

田んぼに落ちた後、ミラーを見たら、
車のルームミラーに
ほっかむりをした女の横顔が写っていた。


あの、シートベルトがどうやっても入らない感覚は
今でも不思議でなりません。

(三毛丸)

こわいね!
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2018-09-01-SAT