怪・その62

「父との夜食」

高校の卒業旅行で日光へ。

夜、華厳の滝の掛け軸の前で
怪談大会に‥‥。

怖がりの友人は、
「怖いはなしをすると
幽霊が来るんだからやめてよ!」
と耳をふさいでいました。

お菓子はたくさんあったけれど、私は

「あー、おなかすいた。
うどんとか、ごはんとか、
お菓子じゃないものが食べたいなー」

とつぶやいていました。

そんなものはないので、そのまま過ごし、
旅行は終わりました。

帰宅してみると、
家族が不思議なことを言っていました。

「あなた、昨日、家にいたよね?」

遅く帰宅した父と私は、
昨夜、夜食を食べていたそうです。
炊き込みご飯を。

母がその会話や音を、
寝室で聞いていたそうです。

「あれ? おかしいな。
あの子、旅行中だったのに‥‥」

と思いながら。

朝には、私が使った、茶碗や箸が残っていたそうです。


その数日後、父は急死しました。

小さい頃から、父と私は、
夜食をふたりで食べる習慣がありました。

しかし、父の仕事が忙しくなり、
私も思春期で、
話もあまりしなくなっていたので、
しばらくのあいだ、二人での夜食は、
食べていませんでした。

私が生霊となって、
父と最後の夜食を食べるために、
現れたのでしょうか?

(なつよ)

こわいね!
Fearbookのランキングを見る
2018-08-30-THU