怪・その28

「気になるカウンター」

約15年前。
上司の行きつけのスナックでの出来事です。

ボックス席で飲んでいましたが、
左目の端に映るカウンターが
気になって仕方がなく、
時々目を向けていました。

誰もいないカウンター席。

L字形の、
取り立てて珍しくもないカウンター席。

しかし、視線を外すと感じるのです。
人の気配を。

私の様子に気づいた先輩に、

「カウンターが気になるんやろ」

と言われました。

頷くと、

先輩「どこが気になる?」

私「L字の短い方」

先輩「何か見える?」

私「見えない。
でも、視線を外すと気配を感じる」

先輩「どんな感じ?」

私・先輩「50代くらいの男が飲んでる」

・・・そう、先輩も感じていたのです、
同じ気配を。

1人静かにロックグラスを傾ける、
少し寂しげな50代男性。

そのスナックに行ったのは
その1度だけでしたが、
今も彼は、そこで1人静かに
ロックグラスを傾けているのかもしれません。

(なおじろう)

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2018-08-10-FRI