怪・その13

「あれ以来怖くない」

私が23才の時。
再就職した会社は
和気あいあいとした雰囲気で、
連休になると海へ山へと遊びに行くのが
当たり前でした。

奈良県吉野の山奥へ車4台連ねて、
一泊二日のバーベキューに
行ったときのことです。

宿泊する宿が見えてきた所に池があり、
その回り公園のように整備されていました。

ふと見ると、若いカップルが
ブランコで遊んでいます。
男性がブランコに乗る女性を押してあげてます。
こんな山奥で‥‥とも思いましたが
あぁ、きっと同じ宿に泊まる人たちなんだ。

ところが、その光景を
同行の十数人の誰一人として見ていないと言うのです。
もちろん、宿には宿泊していません。

皆に目の錯覚だとか、気のせいだとか、
寝ぼけてたんだとか言われながら、
休みが終わり、仕事に。

ところが、それからしばらくの間、
頭が重く気分がすぐれません。

それから数日たった時です。
事務所の入っているビルの階段を私が降りているとき、
今まで見たこともない茶髪の女性とすれ違う瞬間
「ゾーっ」としました。

その人の顔が、とても恐ろしい形相だったのです。
でも、その瞬間に「すこーん」と頭の重さ、
悩まされていた不快感がなくなりました。

あれは、なんだったのでしょうか。
あれ以来、時々‥‥見ます。
そこにいない人を。
でも不思議と怖くないんです。

(k)

こわいね!
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2018-08-05-SUN