怪・その6

「心配する社員」

今から15年ほど前、
当時派遣社員として働いていた会社での
出来事です。

職場は、だだっ広いフロアに
複数の部署が集まっていて、
多くの人が出入りしていました。

その日はちょっとしたトラブルがあり、
派遣されていた部署の社員さん達は
バタバタと対応に追われていました。

私は、出入口近くの床に段ボールを置き、
ドアに背を向けて、
しゃがみ込んで資料を探していました。

そんな時ふと、
背後に男性が立っているのに気づきました。

背は175cmくらい、
髪の毛は真っ黒で剛毛、
深いグリーンのジャケットに、
同じくグリーン系のチェックのズボンをはいて、
薄茶色の皮の紐靴をはいていました。

フロアの奥の方をうかがっているので、
誰か探しているのかな? と思い、
用を聞こうと振り返ったんですが‥‥

誰も、いません。

その瞬間、気が付きました。


「私、後ろ向いてたのに、
 何で姿が分かったの?!」

・・・冷や汗が出ました。


その後も何だか気になって、
先輩の派遣さんに
「こんな人知りませんか?」と聞いてみたんです。
すると、
「まるでTさんみたい。なんで知ってるの?」と。

先輩によると、
私がそこで働き始める少し前のこと。
Tさんという若い男性社員が
同じフロアにいました。

正月休みが明けてもTさんは現れず、
連絡もとれません。

そこで上司がアパートを訪ね、
大家さんに鍵を開けてもらったところ、
こたつに入ったまま亡くなっていたTさんを
発見したそうです。

死因ははっきりと特定できませんでした。

Tさんはおとなしく、
あまり人と積極的に交流するタイプでは
ありませんでしたが、
Sさんという女性社員とは
よく話をしていたそうです。

思い出してみると、
Tさんが様子を伺っていたのは
Sさんのデスクがある方向。
その日のSさんは、
トラブルの対応に四苦八苦していました。

心配で見に来ていたのでしょうか?

(ねー)

こわいね!
2014-08-06-WED