怪・その26

「辿り着くところは」

もうずっと前の事。
お盆に家族そろって、北陸へ向かっていました。

元々わたしは、小さい頃から霊感が強く、
お盆の季節は苦手。
見たくなくても見えてしまうから‥‥。

山奥の道でしたが、父はトラック運転手。
だいたいの抜け道は、知っていました。

しかし、その日に限って、
どの山路を走っても辿り着くところは、病院。
周りには何もない、そこに人がいるのか?
というような古い病院の前に何度も辿り着きました。

3度目、父は車を降りて、
小さい照明の下で地図を見ました。

それを車の中から見てると、
いつ現れたのか、父を、
遠くから見ている、老婆の姿がありました。

わたしは、そばにいた母に
「あそこにお婆ちゃんいるよね?」
と言いましたが、母にはまったく見えないようでした。

そして母はあわてて父を車に呼び戻しました。

‥‥その直後、わたしの言動が、突然変わりました。

「道を案内するから言うとおりに走って。

 真っ直ぐ走っていくと、車に出会うから、
 その車の後をついて行って。」

父は、霊感の強い私に何かがあったことを察し、
言うとおりに車を走らせ、
そのうち、大きな道路に出ました。

途中、ガソリンスタンドがあったので、
燃料を入れました。

ガソリンスタンドを出る時にちょうど、
うちと同じ、大阪ナンバーの車がいました。

家族4人が乗ってる車で、
父は、前の車について行けば大阪に帰れるよ、
と言いました。

しかししばらくすると、
信号の先の道が二股に分かれていました。
前の車は左へ。

父も、同じく左側へ進もうとした、瞬間‥‥、

「右」

といった私の一言に、父は右へ車を進めました。

それから数時間後に、帰宅しました。

次の朝、朝刊を読む父が
「大変なことが」と言うので
みんなで新聞に目をやると、

「一家4人、崖から転落死」。

そうです、その事故の車は、
左側の道路を走っていった、4人家族の車でした。

しかし私は、その時の会話をまったく覚えていません。

家族で、この季節になるといつも、この話題です。

(まさこ)

こわいね!
2013-08-29-THU